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【本物って誰のこと?】その18
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「ああ~、ネレ坊にも試作品のトリュフチョコレート・・・あげたな?」
熱々のベーコンエッグを、私はトーストと一緒に頬張り始めた。
「ヒロコ様・・・やっちまいましたね・・・」
クレーが青ざめてながらそう言った。
「ナッツチョコの方はどうでした?」
シャキシャキのサラダが、体に染み渡るようだった。
「とりあえず、厨房の調理師達はすごく元気でした」
「じゃあ大した効果は・・・」
「ええ、二夜連続で夜会のピンチヒッターを務めて、朝食係も兼ねてボロボロだった調理師達が、とても爽やかに仕事をこなしていました」
「あったね・・・効果・・・」
とりあえず、チョコレート効果にいち早く気が付いたギヨムが、秘密を守ってくれると約束してくれた。
その辺はクレーが色々と根回しをしてくれていたらしい。
(さすがはクレー先輩! 頭が下がる・・・)
私は、ギヨムに節約して陛下にご挨拶するドレスを購入したい旨を、素直に告げた。
彼はネレと協力して、自分の目の届く範囲でなら「聖女の予算を無駄遣いしそうな輩は締め上げておく」と、快く約束してくれた。
(締め上げておくってなんだい?)
事の顛末は、出勤したイスマエルにクレーより報告された。
本日の午前はこの国の経済状況についての勉強をさせて貰う約束だったので、昨日の事件と関連して、教材はたくさん準備されていたのだ。
さすがは、真面目眼鏡のイスマエル先生・・・仕事が早い。
「ところで・・・ヒロコ、ノエミ様とのお茶会についてなのだが」
「うんうん、トリュフチョコレートをご挨拶に持って行こうと思って!」
「延期になった」
「ええ! なんで? どーして? だってマテオ様が・・・」
「大騒ぎになってる」
「何が?」
「他国の諜報部員に、内密で既に二人の聖女が会合した事が広まってしまっている」
「え? こないだは、そりゃ、ノエミちゃんは庭から突撃してきたけどさ、そんなマズい事しちゃったっけ?」
「マズかった、かなり・・・特にマクシムが扉を開けていた瞬間を切り取られて大騒ぎだ」
「・・・え? あれ? なんで?」
「それがな、他国では二人の聖女の対立が噂されていてな」
「対立なんて、してないし!」
「まあ、噂好きの貴族共の事だ、面白おかしくどちらが本物の聖女か? などと賭け事まがいの事をしていたらしい」
「本物? って、両方本物でしょう!」
「・・・どちらが勝者か揉めているそうだ」
「どうしてそうなった!」
「あの時、ノエミ様は何と言った?」
「神・・・とか?」
「聖女ノエミが、聖女ヒロコを、自分より高位の者だと大声で宣言してしまったのだ」
「あ・・・あ~・・・なるほど、私達の意味する“神”が、こちらでは本物の“神様”になっちゃったと?」
「つまりヒロコは・・・我が国の陛下より上の地位であり、神の代理人の皇帝陛下より・・・高位の存在という事になってしまう」
「いや、ちょ・・・違う! 違うから! その噂の訂正を今すぐお願いします!!」
「早くドレスを作らんとな・・・陛下にちゃんとご挨拶をする場を作らねば・・・」
「陛下にちゃんと土下座するからああああ!」
そして私は、すっかり忘れていた・・・月夜の晩に、ソラルさまが私の涙を飲んでしまっていた事を――――。
熱々のベーコンエッグを、私はトーストと一緒に頬張り始めた。
「ヒロコ様・・・やっちまいましたね・・・」
クレーが青ざめてながらそう言った。
「ナッツチョコの方はどうでした?」
シャキシャキのサラダが、体に染み渡るようだった。
「とりあえず、厨房の調理師達はすごく元気でした」
「じゃあ大した効果は・・・」
「ええ、二夜連続で夜会のピンチヒッターを務めて、朝食係も兼ねてボロボロだった調理師達が、とても爽やかに仕事をこなしていました」
「あったね・・・効果・・・」
とりあえず、チョコレート効果にいち早く気が付いたギヨムが、秘密を守ってくれると約束してくれた。
その辺はクレーが色々と根回しをしてくれていたらしい。
(さすがはクレー先輩! 頭が下がる・・・)
私は、ギヨムに節約して陛下にご挨拶するドレスを購入したい旨を、素直に告げた。
彼はネレと協力して、自分の目の届く範囲でなら「聖女の予算を無駄遣いしそうな輩は締め上げておく」と、快く約束してくれた。
(締め上げておくってなんだい?)
事の顛末は、出勤したイスマエルにクレーより報告された。
本日の午前はこの国の経済状況についての勉強をさせて貰う約束だったので、昨日の事件と関連して、教材はたくさん準備されていたのだ。
さすがは、真面目眼鏡のイスマエル先生・・・仕事が早い。
「ところで・・・ヒロコ、ノエミ様とのお茶会についてなのだが」
「うんうん、トリュフチョコレートをご挨拶に持って行こうと思って!」
「延期になった」
「ええ! なんで? どーして? だってマテオ様が・・・」
「大騒ぎになってる」
「何が?」
「他国の諜報部員に、内密で既に二人の聖女が会合した事が広まってしまっている」
「え? こないだは、そりゃ、ノエミちゃんは庭から突撃してきたけどさ、そんなマズい事しちゃったっけ?」
「マズかった、かなり・・・特にマクシムが扉を開けていた瞬間を切り取られて大騒ぎだ」
「・・・え? あれ? なんで?」
「それがな、他国では二人の聖女の対立が噂されていてな」
「対立なんて、してないし!」
「まあ、噂好きの貴族共の事だ、面白おかしくどちらが本物の聖女か? などと賭け事まがいの事をしていたらしい」
「本物? って、両方本物でしょう!」
「・・・どちらが勝者か揉めているそうだ」
「どうしてそうなった!」
「あの時、ノエミ様は何と言った?」
「神・・・とか?」
「聖女ノエミが、聖女ヒロコを、自分より高位の者だと大声で宣言してしまったのだ」
「あ・・・あ~・・・なるほど、私達の意味する“神”が、こちらでは本物の“神様”になっちゃったと?」
「つまりヒロコは・・・我が国の陛下より上の地位であり、神の代理人の皇帝陛下より・・・高位の存在という事になってしまう」
「いや、ちょ・・・違う! 違うから! その噂の訂正を今すぐお願いします!!」
「早くドレスを作らんとな・・・陛下にちゃんとご挨拶をする場を作らねば・・・」
「陛下にちゃんと土下座するからああああ!」
そして私は、すっかり忘れていた・・・月夜の晩に、ソラルさまが私の涙を飲んでしまっていた事を――――。
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