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【本物って誰のこと?】その6
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がっつり朝昼兼食を済ました後、戻ってきたクレーとイスマエルは私のお世話(お護り)を交代した。
どうやら先ほどの口ぶりからして、帳簿などの確認やら、聖女補佐としての実務の仕事をイスマエルは担当しているようだった。
やっぱりイスマエルは生真面目な仕事人間らしく、忙しそうだ。
ついでに戻ってきたナトンを捕まえて、仕事を手伝わせるつもりらしい・・・イスマエルに捕獲された彼の顔色が急に悪くなった。
(体育会系の少年よ、健闘を祈る!)
「ヒロコ様、今日はお疲れでしょう。午後のお散歩は中止して、ベランダにお茶の準備をしますので、ごゆっくり日向ぼっこでもいかがですか?」
「そうね、日光浴も(ウツ病回復に)大事ね・・・お願いするわ」
(うんうん、さすが女子! 気遣いが素晴らしい)
ベランダの木製のベンチにクッションなどを敷いてもらい、ゆったりと食後のお茶を啜りながら、ぼ~と遠くを眺めていた。
緑の木々の間には高い塀がちらほら見えているのだが、気にしない気にしない・・・今は・・・ね。
ティーセットのワゴンの横で凛と立っているクレーを見て、私は言った。
「クレー、一緒に飲もうよ」
「いえ、私は侍女ですから、このままでいいのです」
ニッコリと貴婦人のような笑顔で返されてしまった。
「え、でも、ずっと動きっぱなしで疲れてなぁい?」
「あ、いえ・・・何故だか最近、体力の回復が早くって・・・昨日の疲れも・・・ンんン?」
クレーが自分の顎を持ちながら首を傾げている。
その動作に釣られて私も同じ方向に首を傾げた。
「どうしたの?」
「え? 今、あれぇ?」
「?????」
「疲れが、今イッキに吹き飛びました」
「うっそお?」
クレーは自分の掌をグーパーグーパーしながら見つめていた。
「いま・・・感覚的にですけど、昨夜消費した魔力が完全回復した気がします」
「ど、どうした!?」
「う~ん? ヒロコ様の身の回りのお世話って意外とハードなんですよね」
「すみません」
私はティーカップ片手に、思わずペコリと頭を下げた。
「まあ、やりがいがあるんですけど、それでも神官職の早寝早起きの時よりもすごく体が楽なんですよ。どうしてですかね?」
「そう、言われましても・・・さっぱり分からんとです!」
「不思議ですねぇ・・・ヒロコ様のお傍にいると、私はいつも元気をもらえる気がします」
「あ・・・はい、ありがとうございます」
再びペコリである。
クレーも釣られてペコリとお辞儀をする。
疲れた・・・と、言わんばかりにクレーにお茶を下げさせ、私は手招きをする。
「は、何でしょう?」
「ここ、座って」
ポンポンと、ベンチをゆるく叩いて見せた。
「いえ、私はやはりこのままで・・・」
「ううん」
左右に首を振る。
「?」
「膝枕お願いします」
クレーはくすっ、と可愛らしい大人美人の笑顔を見せた。
「なるほど、ヒロコ様のおねだりですね?」
私の好みは、男性の肩から手にかけての長めのラインが美しければ、ルックスは二の次だ。
女性の美人のマイ基準は・・・顎から鎖骨にかけてのラインの美しさである!
つまり、男性に向ける好みは腕フェチ、女性の美人基準は顎から鎖骨のライン・・・つまり首&鎖骨フェチである。
クレーは格別にそこのラインが美しい・・・美女の決定版なので、この膝枕で180度眺め放題である。
変態? さて、何のことやら・・・。
ウエストはクビれてるし、太ももは良い感じの肉付きだし。
胸の山が・・・ヤマヤマしているし、きれいな顔は下から見ても崩れてないし、赤茶の瞳はキラキラしてて宝石みたいだし、オリーブグリーンの髪は絹の糸みたいに輝いている――――。
ユリ属性の気持ちが分かる気がする。
(我ながらその扉を開ける予定はないが)
ガサ、ガサガサッ――――。
近くの茂みが揺れた。
「何奴!?」
クレーはササッと変わり身の術で、私の体を揺らさずにクッションと入れ替わった。
(お~っ!“くノ一”系侍女ですか?)
敵襲に備えて、クレーはかっこよく構えた。
(キャー! ステキ!)
私もベンチの上で寝っ転がってる場合では無いので、直ぐに起き上がって、その場に立ち上がった。
「何者ですか! 名乗りなさい!」
すぐ近くの花々が揺れ、私達の真正面に茶色い影が飛び出して来た。
その素早さに、クレーも私も動体視力が追いつかなかった――――。
どうやら先ほどの口ぶりからして、帳簿などの確認やら、聖女補佐としての実務の仕事をイスマエルは担当しているようだった。
やっぱりイスマエルは生真面目な仕事人間らしく、忙しそうだ。
ついでに戻ってきたナトンを捕まえて、仕事を手伝わせるつもりらしい・・・イスマエルに捕獲された彼の顔色が急に悪くなった。
(体育会系の少年よ、健闘を祈る!)
「ヒロコ様、今日はお疲れでしょう。午後のお散歩は中止して、ベランダにお茶の準備をしますので、ごゆっくり日向ぼっこでもいかがですか?」
「そうね、日光浴も(ウツ病回復に)大事ね・・・お願いするわ」
(うんうん、さすが女子! 気遣いが素晴らしい)
ベランダの木製のベンチにクッションなどを敷いてもらい、ゆったりと食後のお茶を啜りながら、ぼ~と遠くを眺めていた。
緑の木々の間には高い塀がちらほら見えているのだが、気にしない気にしない・・・今は・・・ね。
ティーセットのワゴンの横で凛と立っているクレーを見て、私は言った。
「クレー、一緒に飲もうよ」
「いえ、私は侍女ですから、このままでいいのです」
ニッコリと貴婦人のような笑顔で返されてしまった。
「え、でも、ずっと動きっぱなしで疲れてなぁい?」
「あ、いえ・・・何故だか最近、体力の回復が早くって・・・昨日の疲れも・・・ンんン?」
クレーが自分の顎を持ちながら首を傾げている。
その動作に釣られて私も同じ方向に首を傾げた。
「どうしたの?」
「え? 今、あれぇ?」
「?????」
「疲れが、今イッキに吹き飛びました」
「うっそお?」
クレーは自分の掌をグーパーグーパーしながら見つめていた。
「いま・・・感覚的にですけど、昨夜消費した魔力が完全回復した気がします」
「ど、どうした!?」
「う~ん? ヒロコ様の身の回りのお世話って意外とハードなんですよね」
「すみません」
私はティーカップ片手に、思わずペコリと頭を下げた。
「まあ、やりがいがあるんですけど、それでも神官職の早寝早起きの時よりもすごく体が楽なんですよ。どうしてですかね?」
「そう、言われましても・・・さっぱり分からんとです!」
「不思議ですねぇ・・・ヒロコ様のお傍にいると、私はいつも元気をもらえる気がします」
「あ・・・はい、ありがとうございます」
再びペコリである。
クレーも釣られてペコリとお辞儀をする。
疲れた・・・と、言わんばかりにクレーにお茶を下げさせ、私は手招きをする。
「は、何でしょう?」
「ここ、座って」
ポンポンと、ベンチをゆるく叩いて見せた。
「いえ、私はやはりこのままで・・・」
「ううん」
左右に首を振る。
「?」
「膝枕お願いします」
クレーはくすっ、と可愛らしい大人美人の笑顔を見せた。
「なるほど、ヒロコ様のおねだりですね?」
私の好みは、男性の肩から手にかけての長めのラインが美しければ、ルックスは二の次だ。
女性の美人のマイ基準は・・・顎から鎖骨にかけてのラインの美しさである!
つまり、男性に向ける好みは腕フェチ、女性の美人基準は顎から鎖骨のライン・・・つまり首&鎖骨フェチである。
クレーは格別にそこのラインが美しい・・・美女の決定版なので、この膝枕で180度眺め放題である。
変態? さて、何のことやら・・・。
ウエストはクビれてるし、太ももは良い感じの肉付きだし。
胸の山が・・・ヤマヤマしているし、きれいな顔は下から見ても崩れてないし、赤茶の瞳はキラキラしてて宝石みたいだし、オリーブグリーンの髪は絹の糸みたいに輝いている――――。
ユリ属性の気持ちが分かる気がする。
(我ながらその扉を開ける予定はないが)
ガサ、ガサガサッ――――。
近くの茂みが揺れた。
「何奴!?」
クレーはササッと変わり身の術で、私の体を揺らさずにクッションと入れ替わった。
(お~っ!“くノ一”系侍女ですか?)
敵襲に備えて、クレーはかっこよく構えた。
(キャー! ステキ!)
私もベンチの上で寝っ転がってる場合では無いので、直ぐに起き上がって、その場に立ち上がった。
「何者ですか! 名乗りなさい!」
すぐ近くの花々が揺れ、私達の真正面に茶色い影が飛び出して来た。
その素早さに、クレーも私も動体視力が追いつかなかった――――。
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