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【聖女の育成って何ですか?】その9
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「その・・・ノエミ様は召喚されて以来、ずっと元気がなく、食事もほとんど手を付けない状態で・・・私が悪かったのです、ノエミ様のお話をちゃんと受け止めず、ただ突然の事で錯乱しているだけだろうと思い、落ち着くまでそっとしておこうとしました」
「・・・ヒロコ様も最初はそうだったな」
「そうなのですか?」
「ただ、ヒロコ様の世話係は三人で多少なりとも分担できたし、私の父の協力もあった・・・それに、侍女のクレーも召喚の時からずっとヒロコ様の傍に仕えているので、とても助かっていた。ルベン、そなたも辛かったであろう・・・目の前で自分の大切な聖女が弱っていくのを見るのは・・・」
(たたたたたた・・・大切な聖女っ!)
なんか、背中がムズムズする・・・ドキドキする・・・なんかすごく照れるんですけど?
ナニコレ!?
「イスマエル様、よろしいでしょうか?」
クレーがすっと右手をきれいに上げて見せた。
「なんだ? クレー」
「ヒロコ様は私にとって特別な方です」
「特別?」
イスマエルが眉を顰めた。
「はい、私は以前、神官職にたずさわっておりましたが・・・どいつもこいつも“神に仕える身だ”“この星の意思だ”なんだのと御託や説教ばかりを並べて、助けが必要な人間に手を差し伸べる者は誰一人いませんでした。けれどヒロコ様は違いました!」
(止めてぇ! 本人の前で、なにヲ・・・羞恥プレイ? これは新手の羞恥プレイですかっ!?)
「そうだな、聖女ヒロコは目の前にいる相手に、ちゃんと必要な言葉をかけ、自分が倒れるかも知れないのに、か弱く小さな体で他人を懸命に支えようとする方だ・・・」
(小さいは余計! そして私を持ち上げ過ぎ! どこで私を地面に叩き落とすおつもりですか?)
「何がどうなってこの状況なのかは、アタシから説明するわ・・・ルベン、色々ごめんなさい、ちゃんと最初から話すから――――」
落ち着いたノエミは、顔から冷えたタオルを外し、ソファーにきちんと座り直した。
「アタシってば、いつも自分の世界に入っちゃって、相手の身になって言葉を選ばないから、アタマおかしいとか思われてもしょうがないかなって思ってる・・・」
アタシの名前は砂賀コズエ、身長は162センチ、年齢は16歳。
スマホゲームの[ムツノクニ下克上]でのニックネームは“ノエミ”でプレイしていた。
マジで課金しまくりで、お母さんに怒られる事が多かったけど・・・お母さんは私の好きなものは認めてくれてて、今は育ててくれた感謝しかないわ。
課金制度はフルネーム・ニックネーム・パスワードでセットだから、アタシはたまたまその作用でこちら側でも本名を忘れずに済んだみたい。
その[ムツノクニ下克上]がラノベ化して、初回限定のキャラクターポストカードがランダムにオマケで付くって言うんだから、お金のあるOL女子の買い占めバトルは壮絶極まりなかった。
貯めたお小遣いと、バイト代を握りしめて、池袋の大きな書店に電話で在庫確認をして、塾の帰りに買いに走った。
乗用車のスマホの脇見運転で、信号無視のノーブレーキでアタシは軽く吹っ飛んで、対向車の大きなトラックに更にバーンっ・・・よ・・・泣けてくるわ!
運転中は自動車だろうが自転車だろうが、ましてや歩きスマホだって人間の反応速度は死人同然よね?
まったくいやんなっちゃうっ!!
これって、みんなスマホゾンビ状態よね?
それともスマホ画面見ていないと死んじゃう病気なのかしら!
別に、気晴らしでベンチに座ってとか、部屋のベッドに転がって、とかなら全然オッケーなんだけどさ・・・だいたい、人と話しながらスマホ弄ってるなんて失礼じゃない?
アンタなんかスマホとデートしてれば? って感じ!
「・・・ヒロコ様も最初はそうだったな」
「そうなのですか?」
「ただ、ヒロコ様の世話係は三人で多少なりとも分担できたし、私の父の協力もあった・・・それに、侍女のクレーも召喚の時からずっとヒロコ様の傍に仕えているので、とても助かっていた。ルベン、そなたも辛かったであろう・・・目の前で自分の大切な聖女が弱っていくのを見るのは・・・」
(たたたたたた・・・大切な聖女っ!)
なんか、背中がムズムズする・・・ドキドキする・・・なんかすごく照れるんですけど?
ナニコレ!?
「イスマエル様、よろしいでしょうか?」
クレーがすっと右手をきれいに上げて見せた。
「なんだ? クレー」
「ヒロコ様は私にとって特別な方です」
「特別?」
イスマエルが眉を顰めた。
「はい、私は以前、神官職にたずさわっておりましたが・・・どいつもこいつも“神に仕える身だ”“この星の意思だ”なんだのと御託や説教ばかりを並べて、助けが必要な人間に手を差し伸べる者は誰一人いませんでした。けれどヒロコ様は違いました!」
(止めてぇ! 本人の前で、なにヲ・・・羞恥プレイ? これは新手の羞恥プレイですかっ!?)
「そうだな、聖女ヒロコは目の前にいる相手に、ちゃんと必要な言葉をかけ、自分が倒れるかも知れないのに、か弱く小さな体で他人を懸命に支えようとする方だ・・・」
(小さいは余計! そして私を持ち上げ過ぎ! どこで私を地面に叩き落とすおつもりですか?)
「何がどうなってこの状況なのかは、アタシから説明するわ・・・ルベン、色々ごめんなさい、ちゃんと最初から話すから――――」
落ち着いたノエミは、顔から冷えたタオルを外し、ソファーにきちんと座り直した。
「アタシってば、いつも自分の世界に入っちゃって、相手の身になって言葉を選ばないから、アタマおかしいとか思われてもしょうがないかなって思ってる・・・」
アタシの名前は砂賀コズエ、身長は162センチ、年齢は16歳。
スマホゲームの[ムツノクニ下克上]でのニックネームは“ノエミ”でプレイしていた。
マジで課金しまくりで、お母さんに怒られる事が多かったけど・・・お母さんは私の好きなものは認めてくれてて、今は育ててくれた感謝しかないわ。
課金制度はフルネーム・ニックネーム・パスワードでセットだから、アタシはたまたまその作用でこちら側でも本名を忘れずに済んだみたい。
その[ムツノクニ下克上]がラノベ化して、初回限定のキャラクターポストカードがランダムにオマケで付くって言うんだから、お金のあるOL女子の買い占めバトルは壮絶極まりなかった。
貯めたお小遣いと、バイト代を握りしめて、池袋の大きな書店に電話で在庫確認をして、塾の帰りに買いに走った。
乗用車のスマホの脇見運転で、信号無視のノーブレーキでアタシは軽く吹っ飛んで、対向車の大きなトラックに更にバーンっ・・・よ・・・泣けてくるわ!
運転中は自動車だろうが自転車だろうが、ましてや歩きスマホだって人間の反応速度は死人同然よね?
まったくいやんなっちゃうっ!!
これって、みんなスマホゾンビ状態よね?
それともスマホ画面見ていないと死んじゃう病気なのかしら!
別に、気晴らしでベンチに座ってとか、部屋のベッドに転がって、とかなら全然オッケーなんだけどさ・・・だいたい、人と話しながらスマホ弄ってるなんて失礼じゃない?
アンタなんかスマホとデートしてれば? って感じ!
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