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【異世界召喚ですか?】その8
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「俺が感じたのは、聖女を求める心の温度だよ」
(うん、なに気にマクシムも私には理解不能な言葉を使ってるよ? 気づいて!)
「教えて! イスマエル先生!?」
メガネ君のイスマエルはちょっと困った顔をした。
(お、珍しい反応だ)
「ヒロコ、ちょっと話の流れをもう少し聞いてくれ」
「はい・・・」
「その・・・なんというか、最初のしんどい召喚士を介抱するヒロコを見た後で、アレはないと思った」
「うん、アレはないな・・・ていうか、彼女の反応こそが普通なんだけどね」
「私は非難されてるの? 持ち上げられてるの? どっち?」
では、マクシム目線の回想シーンからどうぞ!
その少女は“生命の水”の噴水から現れ。
揺らめく大地を想像させる長髪、身体の曲線は細く、白いシャツに膝上の格子柄の短いスカート、大きめの紺色の鞄を肩にかけていた。
小動物を思わせる魅力的な黒い瞳と、整った顔立ちをしていた。
「ここ・・・どこ?」
彼女の声を聞いて、年老いた背の高い宰相は答えた。
「あなたが産まれた世界とは違う世界でございます“聖女様”」
「聖女? へ? これ何のコスプレイベント?」
(ん?:byヒロコ)
「いえいえ、あなたの思っているような向こう側の式典ではないと思いますよ?」
西の宰相がそう言い終わると同時に、漆黒の長髪、ルビーのような赤い瞳をしたルベンが、聖女の手を取り、噴水から連れ出した。
「ひゃあ! 萌え! マティアス様の2.5次元版?」
(んん?:byヒロコ)
「ウホン!」
宰相は咳払いをひとつした。
彼の薄茶色の前髪がその拍子に少し乱れ、琥珀色の双眸が合図だと言わんばかりに、世話係候補の俺達に向けられた。
跪く俺とナトンは、顔を上げてその少女を見上げ、挨拶をした。
「お初にお目にかかります、異世界の聖女様、マクシムと申します」
「はじめまして、聖女様! ナトンです」
(おい、自己紹介が私の時と違わないか?:byヒロコ)
(しょうがないじゃん、進行役の宰相様に合わせてるんだよ:byナトン)
「聖女? アタシが? ・・・ええ! リュカ様! それに・・・アレクシ様がっ! え? 転生!これ異世界転生ってヤツ?」
何故か彼女は混乱し、意味の解らない事ばかり話し始めたので、後ろに控えていたもう1人の世話係候補は自己紹介を省かれた。
(そこすっげー気になる:byヒロコ)
「聖女様は向こう側の死の運命を逃れ、こちら側での新たな人生を手に入れました。今ここで行われたのは、異世界召喚でございます」
(おおっ! マテオGより親切でわかりやすい説明だな:dyヒロコ)
西の宰相の一言で、少女はショックのあまりその場に崩れ落ちる。
「い・・・いや、待って! かなり楽しいけど、アタシこんな夢見てる場合じゃないの! 初回限定ポストカードの在庫があるジョンク堂へ行かなきゃ! 早く行かなきゃ、推しメンが手に入らないの!」
宰相が鋭い視線を黒髪のルベンに向けた。
「おい、ルベン、なんでもいいから“名呼び”をしろ!」
少女に手を貸しているルベンが、そっと震える肩を支え、優しく顎を持ち上げ目線を合わせた。
「マティアス様・・・アタシ現実問題として、今すぐ池袋の本屋へ行かなきゃいけないの!」
(ぬンンっ!?:byヒロコ)
「あの・・・マティアスってどなたです? 私はルベンと申します、あなたのお名前をお聞かせ下さい」
「え! ここって身分証明がいるお店なの? 名前、名前・・・あれ?」
慌てて自分の鞄についている、白い毛だらけの何かを確認した。
「聖女様・・・お名前は私が授けてもよろしいでしょうか? 異世界転移をした場合は、前の世界に自分を示す名前を置いてきてしまうものだと伺っております」
「やばい、“もふもふトリッキーくん”に入れといた定期の名前がかすれて読めな~い! そうだ、学生証!」
どうやら、鞄に付いている白い毛だらけの妙な形の物体は“もふもふトリッキーくん”と言うらしい。
「もふもふ?・・・て?」
顔面氷結をしているルベンの手を放し、彼女は自分の鞄をひっくり返し、中身をぶちまけた。
「あの・・・聖女様、大丈夫ですよ、身分証明書とか見せなくていいんですよ?」
「あああああった・・・けど、自分の好きな名前に設定してもいいの?」
「設定? あ、はい、どうぞ?」
「マティアス様に呼ばれるなら“ノエミ”がいいな!」
「では、“聖女ノエミ”私達の世界へようこそ!」
噴水の中に循環している生命の水が、ほのかに白く光り、“星霜希水の間”はマイナスイオンの清浄な空気で満たされた。
聖女ノエミはその直後に宰相達から今後の説明を受けたが、本人は納得せず「サギだ! 自分の世界に返して!」と、泣きながら叫び出したという。
召喚士四名は、先に交代したGさんズに支えられながら“星霜希水の間”からなんとか緊急救護室に運ばれたらしい――――。
私は両手で頭を抱えながらマクシムのその話を聞いていた。
そういえばもう一人、世話係候補に黒髪長髪の超絶美形がいたよね・・・タイプじゃないからすっかり忘れてたけど。
こっちの金髪碧眼マクシムの“俺様キャラ・アレクシ”風のルックスはその子の精神衛生上よろしくないかもな。
寸胴の兎っぽい“もふもふトリッキーくん”はアレクシ様の大事なペットだもの、コアなファンしか買わないよ。
そんなファンにとっては、私にソラルさまを見せるぐらいの彗星ぶち抜き弾丸級に違いない。
まあ、声優投票ではマティアス様が不動の第一位だけどね?
そうかぁ、あの声で名前を呼んで貰えるのかあ・・・って! 声まで同じじゃないと思うよ?
「うん、その子の反応は同郷としては“ある意味普通”だと思うよ・・・」
気の毒だ・・・気の毒すぎる!
だって、私のパターンから推測すると・・・その子もまた、死の運命によりこちら側に来てしまったのだ。
このままこの世界の軌道を正さないと、向こう側で輪廻転生するはずの人が、生きた軌跡も消されて、家族からも忘れられ、存在しなかった事にされてしまうのだという――――。
それぞれの宰相は命を懸けて召喚術を行った。
詰まるところ、100%の成功確率がないからこそ命をかけねばならないのだ。
実際は宰相を中心として召喚術を行使するメンバーが、どんなに優秀で素晴らしい魔力や才能を持っていても、成功確率は半分以下だという。
聖女召喚が失敗すれば、ある者は発狂し、ある者は四肢を失い、ある者は塵になると言う・・・そして、術を発動したという事実さえもどこかで消えているという始末なのだ・・・と。
なんという狂った世界に、私は来てしまったんだろう!
異世界から1人の人間を転送するのだ、失敗すれば、召喚する者もされた者も、どちらの世界にも存在できずに、肉体も精神も魂も消滅してしまうのだという。
この星の延命の為に、神の代理人と呼ばれる皇帝の命令によって、6つの国が次々と聖女召喚の準備を進めているという。
私一人では・・・いや、この国の聖女二人の力では、せいぜい定期的にこの国付近の星の生命の水を、清浄化できるのが関の山のような気がする。
(ん? 私ら定期交換の浄水フィルター扱いか? まさか、使えなくなったらポイっとかされないだろうな!)
私はとても恐ろしい事を想像してしまった。
もしかして、私の故郷の方がヤバいんでないかい?
そんな頻繁に人間が掻っ攫われるんか?
特に日本の被害が酷くて、過労死の原因になっているとか?
ほら、いつの間にこの仕事を私がやる事になったんだろうか? みたいな事ありませんか?
あ、ない? 失礼しました~!
(うん、なに気にマクシムも私には理解不能な言葉を使ってるよ? 気づいて!)
「教えて! イスマエル先生!?」
メガネ君のイスマエルはちょっと困った顔をした。
(お、珍しい反応だ)
「ヒロコ、ちょっと話の流れをもう少し聞いてくれ」
「はい・・・」
「その・・・なんというか、最初のしんどい召喚士を介抱するヒロコを見た後で、アレはないと思った」
「うん、アレはないな・・・ていうか、彼女の反応こそが普通なんだけどね」
「私は非難されてるの? 持ち上げられてるの? どっち?」
では、マクシム目線の回想シーンからどうぞ!
その少女は“生命の水”の噴水から現れ。
揺らめく大地を想像させる長髪、身体の曲線は細く、白いシャツに膝上の格子柄の短いスカート、大きめの紺色の鞄を肩にかけていた。
小動物を思わせる魅力的な黒い瞳と、整った顔立ちをしていた。
「ここ・・・どこ?」
彼女の声を聞いて、年老いた背の高い宰相は答えた。
「あなたが産まれた世界とは違う世界でございます“聖女様”」
「聖女? へ? これ何のコスプレイベント?」
(ん?:byヒロコ)
「いえいえ、あなたの思っているような向こう側の式典ではないと思いますよ?」
西の宰相がそう言い終わると同時に、漆黒の長髪、ルビーのような赤い瞳をしたルベンが、聖女の手を取り、噴水から連れ出した。
「ひゃあ! 萌え! マティアス様の2.5次元版?」
(んん?:byヒロコ)
「ウホン!」
宰相は咳払いをひとつした。
彼の薄茶色の前髪がその拍子に少し乱れ、琥珀色の双眸が合図だと言わんばかりに、世話係候補の俺達に向けられた。
跪く俺とナトンは、顔を上げてその少女を見上げ、挨拶をした。
「お初にお目にかかります、異世界の聖女様、マクシムと申します」
「はじめまして、聖女様! ナトンです」
(おい、自己紹介が私の時と違わないか?:byヒロコ)
(しょうがないじゃん、進行役の宰相様に合わせてるんだよ:byナトン)
「聖女? アタシが? ・・・ええ! リュカ様! それに・・・アレクシ様がっ! え? 転生!これ異世界転生ってヤツ?」
何故か彼女は混乱し、意味の解らない事ばかり話し始めたので、後ろに控えていたもう1人の世話係候補は自己紹介を省かれた。
(そこすっげー気になる:byヒロコ)
「聖女様は向こう側の死の運命を逃れ、こちら側での新たな人生を手に入れました。今ここで行われたのは、異世界召喚でございます」
(おおっ! マテオGより親切でわかりやすい説明だな:dyヒロコ)
西の宰相の一言で、少女はショックのあまりその場に崩れ落ちる。
「い・・・いや、待って! かなり楽しいけど、アタシこんな夢見てる場合じゃないの! 初回限定ポストカードの在庫があるジョンク堂へ行かなきゃ! 早く行かなきゃ、推しメンが手に入らないの!」
宰相が鋭い視線を黒髪のルベンに向けた。
「おい、ルベン、なんでもいいから“名呼び”をしろ!」
少女に手を貸しているルベンが、そっと震える肩を支え、優しく顎を持ち上げ目線を合わせた。
「マティアス様・・・アタシ現実問題として、今すぐ池袋の本屋へ行かなきゃいけないの!」
(ぬンンっ!?:byヒロコ)
「あの・・・マティアスってどなたです? 私はルベンと申します、あなたのお名前をお聞かせ下さい」
「え! ここって身分証明がいるお店なの? 名前、名前・・・あれ?」
慌てて自分の鞄についている、白い毛だらけの何かを確認した。
「聖女様・・・お名前は私が授けてもよろしいでしょうか? 異世界転移をした場合は、前の世界に自分を示す名前を置いてきてしまうものだと伺っております」
「やばい、“もふもふトリッキーくん”に入れといた定期の名前がかすれて読めな~い! そうだ、学生証!」
どうやら、鞄に付いている白い毛だらけの妙な形の物体は“もふもふトリッキーくん”と言うらしい。
「もふもふ?・・・て?」
顔面氷結をしているルベンの手を放し、彼女は自分の鞄をひっくり返し、中身をぶちまけた。
「あの・・・聖女様、大丈夫ですよ、身分証明書とか見せなくていいんですよ?」
「あああああった・・・けど、自分の好きな名前に設定してもいいの?」
「設定? あ、はい、どうぞ?」
「マティアス様に呼ばれるなら“ノエミ”がいいな!」
「では、“聖女ノエミ”私達の世界へようこそ!」
噴水の中に循環している生命の水が、ほのかに白く光り、“星霜希水の間”はマイナスイオンの清浄な空気で満たされた。
聖女ノエミはその直後に宰相達から今後の説明を受けたが、本人は納得せず「サギだ! 自分の世界に返して!」と、泣きながら叫び出したという。
召喚士四名は、先に交代したGさんズに支えられながら“星霜希水の間”からなんとか緊急救護室に運ばれたらしい――――。
私は両手で頭を抱えながらマクシムのその話を聞いていた。
そういえばもう一人、世話係候補に黒髪長髪の超絶美形がいたよね・・・タイプじゃないからすっかり忘れてたけど。
こっちの金髪碧眼マクシムの“俺様キャラ・アレクシ”風のルックスはその子の精神衛生上よろしくないかもな。
寸胴の兎っぽい“もふもふトリッキーくん”はアレクシ様の大事なペットだもの、コアなファンしか買わないよ。
そんなファンにとっては、私にソラルさまを見せるぐらいの彗星ぶち抜き弾丸級に違いない。
まあ、声優投票ではマティアス様が不動の第一位だけどね?
そうかぁ、あの声で名前を呼んで貰えるのかあ・・・って! 声まで同じじゃないと思うよ?
「うん、その子の反応は同郷としては“ある意味普通”だと思うよ・・・」
気の毒だ・・・気の毒すぎる!
だって、私のパターンから推測すると・・・その子もまた、死の運命によりこちら側に来てしまったのだ。
このままこの世界の軌道を正さないと、向こう側で輪廻転生するはずの人が、生きた軌跡も消されて、家族からも忘れられ、存在しなかった事にされてしまうのだという――――。
それぞれの宰相は命を懸けて召喚術を行った。
詰まるところ、100%の成功確率がないからこそ命をかけねばならないのだ。
実際は宰相を中心として召喚術を行使するメンバーが、どんなに優秀で素晴らしい魔力や才能を持っていても、成功確率は半分以下だという。
聖女召喚が失敗すれば、ある者は発狂し、ある者は四肢を失い、ある者は塵になると言う・・・そして、術を発動したという事実さえもどこかで消えているという始末なのだ・・・と。
なんという狂った世界に、私は来てしまったんだろう!
異世界から1人の人間を転送するのだ、失敗すれば、召喚する者もされた者も、どちらの世界にも存在できずに、肉体も精神も魂も消滅してしまうのだという。
この星の延命の為に、神の代理人と呼ばれる皇帝の命令によって、6つの国が次々と聖女召喚の準備を進めているという。
私一人では・・・いや、この国の聖女二人の力では、せいぜい定期的にこの国付近の星の生命の水を、清浄化できるのが関の山のような気がする。
(ん? 私ら定期交換の浄水フィルター扱いか? まさか、使えなくなったらポイっとかされないだろうな!)
私はとても恐ろしい事を想像してしまった。
もしかして、私の故郷の方がヤバいんでないかい?
そんな頻繁に人間が掻っ攫われるんか?
特に日本の被害が酷くて、過労死の原因になっているとか?
ほら、いつの間にこの仕事を私がやる事になったんだろうか? みたいな事ありませんか?
あ、ない? 失礼しました~!
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