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【異世界召喚ですか?】その3
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「――――で? 覚えてます? “聖女の宣言”をしたことを・・・ヒロコ様?」
高級ホテルのキングサイズレベルのベッドに腰かけ、目が覚めた私は美味な食事の後のフルーツティーを冷ましながら飲んでいた。
不安げな表情で、小さいGさんは椅子に腰かけながら私に上目遣いで意思確認をしている。
「さあ・・・? ぜんぜん覚えてないっスね?」
「えええええええっ!?」
「誰っスか? そんな大層なセリフ言ったひと」
「あんたでしょーがぁっっっ!!」
ロング白髪&ロング白髭の小さなGさんは力いっぱいツッコミを入れてくれた。
「で? その騎士様には私また会わせてもらえるんですよね?」
「・・・・・・・・・」
「・・・じゃ、寝ますね」
飲み干したフルーツティーのカップをサイドテーブルに戻し、ぽすん、と、私は高級羽根布団を被った。
「あぁ~~~、わかりましたよ・・・とりあえず、まだ色々と手続きが滞っていますので、あの騎士団長を聖女ヒロコ様の正式な騎士にするように陛下にちゃんと書面で申し伝えておきますから」
んんン? と、掛布団を被ったまま冷静に私は思考を巡らせた。
そして、小さいGさんしかいない部屋で、布団から這い出る。
「騎士団長?」
「ええ、貴方が“名呼び”に任命したのは、北の騎士団長ソラルですよ」
(はぁい! 脳内インプット完了です! 超どストライク、渋メン騎士団長ソラルさま!)
「騎士団長のソラルさま・・・でも、彼の担当業務に差し支えるなら、専属じゃなくていいです。たま~にすこぉ~し、遠くからでもチラ見できれば・・・」
あんな素敵なおじ様を眺められる・・・心のオアシス・・・夢でもうれしい。
「ふむ・・・そのご意見は東と北を担当する宰相としては大変助かりますな」
脳内の“気になるあの人!” ランキング第1位は決定したのだった。
「“名呼び”というのは、異世界から召喚した命ある者を引き留める儀式みたいなものです」
「え、じゃあ・・・呼ばなければ?」
「あなたは消滅する予定でした」
「刺そうか?」
サイドテーブルにある銀のナイフに視線を移した。
「ちょっ・・・ちゃんと“名呼び”する者は準備していましたよ!」
食事に使った銀の食器を、いそいそと部屋の扉近くのワゴンに移し、再びベッドの横の椅子に座り直した。
「そのですね、“名呼び”というのは、異世界から召喚した者の存在をこちら側に固定する大事な工程です。云わば、召喚術に於いて決して省いてはいけない作業なので、その辺は準備していたのですが・・・」
「ですが?」
「なんというか・・・“名呼び”を逆指名するなんて前代未聞で記録がないので、我々も困惑しています」
「はあ、そうなんですか」
「こんな規格外の聖女様、ワシ、初めてです」
「・・・召喚されたの、人生に於いて初めてですが? 召喚される側は作法でもあるんですかねえ? へえぇ、知らなかったあ! なんで前もって連絡くれなかったんでしょうねえ?」
「済みません。ごめんなさい。全てこちら側の手配ミスです・・・はい」
聖女の召喚を行うには、国王の任命の下、宰相の立ち合いによって実行されるらしい・・・「八十年に一度ぐらい、必要に応じて行う」とGさんが説明してくれた。
この国には宰相が二人いて、あのGさんは“東の宰相”と呼ばれ、もう一人は“西の宰相”と呼ばれているらしい。
ぶっちゃけ国王陛下が少々アレなんで(どんなんだよ?)政治業務が大変で、一昔前に宰相は二人必要だと判断して以来、東と北を担当、西と南を担当するように分けられたらしい。
そして、どちらか一方が事故ったら次世代が決定するまで、緊急対応としてすべての業務を片方が代行するという。
どこも才能ある人間は、苦労が絶えないと思う。
しかし、あの小さいGさんが宰相だなんて・・・宰相のイメージが違い過ぎると思った。
宰相ってのは戦略のプロというイメージがあったので、ぱっと見あれはないかな~?
同じ日にもう一人の“聖女”を召喚しているという・・・あっちもいい迷惑なんじゃないか?
召喚当日に“名呼び”を逆指名して、ぶっ倒れたのは私の方だけらしい。
ま、しょうがないじゃん? 私はとりあえず、デプロメールとマイスリーと漢方薬と頓服を少々しか持ってないんだから、布団を被るしかないのだ。
「からだ、だるいな・・・クラクラする、召喚された昨日もメニエール寸前みたいな感じで天井が回ったし・・・」
“体が弱い!”宣言もしといたし、しばらくは楽ができそうだ。
などど、私は気楽に・・・現実逃避を決め込んだ。
ありがたい事に”お世話係”が本当にお世話をしてくれるとの事だ。
高級ホテルのキングサイズレベルのベッドに腰かけ、目が覚めた私は美味な食事の後のフルーツティーを冷ましながら飲んでいた。
不安げな表情で、小さいGさんは椅子に腰かけながら私に上目遣いで意思確認をしている。
「さあ・・・? ぜんぜん覚えてないっスね?」
「えええええええっ!?」
「誰っスか? そんな大層なセリフ言ったひと」
「あんたでしょーがぁっっっ!!」
ロング白髪&ロング白髭の小さなGさんは力いっぱいツッコミを入れてくれた。
「で? その騎士様には私また会わせてもらえるんですよね?」
「・・・・・・・・・」
「・・・じゃ、寝ますね」
飲み干したフルーツティーのカップをサイドテーブルに戻し、ぽすん、と、私は高級羽根布団を被った。
「あぁ~~~、わかりましたよ・・・とりあえず、まだ色々と手続きが滞っていますので、あの騎士団長を聖女ヒロコ様の正式な騎士にするように陛下にちゃんと書面で申し伝えておきますから」
んんン? と、掛布団を被ったまま冷静に私は思考を巡らせた。
そして、小さいGさんしかいない部屋で、布団から這い出る。
「騎士団長?」
「ええ、貴方が“名呼び”に任命したのは、北の騎士団長ソラルですよ」
(はぁい! 脳内インプット完了です! 超どストライク、渋メン騎士団長ソラルさま!)
「騎士団長のソラルさま・・・でも、彼の担当業務に差し支えるなら、専属じゃなくていいです。たま~にすこぉ~し、遠くからでもチラ見できれば・・・」
あんな素敵なおじ様を眺められる・・・心のオアシス・・・夢でもうれしい。
「ふむ・・・そのご意見は東と北を担当する宰相としては大変助かりますな」
脳内の“気になるあの人!” ランキング第1位は決定したのだった。
「“名呼び”というのは、異世界から召喚した命ある者を引き留める儀式みたいなものです」
「え、じゃあ・・・呼ばなければ?」
「あなたは消滅する予定でした」
「刺そうか?」
サイドテーブルにある銀のナイフに視線を移した。
「ちょっ・・・ちゃんと“名呼び”する者は準備していましたよ!」
食事に使った銀の食器を、いそいそと部屋の扉近くのワゴンに移し、再びベッドの横の椅子に座り直した。
「そのですね、“名呼び”というのは、異世界から召喚した者の存在をこちら側に固定する大事な工程です。云わば、召喚術に於いて決して省いてはいけない作業なので、その辺は準備していたのですが・・・」
「ですが?」
「なんというか・・・“名呼び”を逆指名するなんて前代未聞で記録がないので、我々も困惑しています」
「はあ、そうなんですか」
「こんな規格外の聖女様、ワシ、初めてです」
「・・・召喚されたの、人生に於いて初めてですが? 召喚される側は作法でもあるんですかねえ? へえぇ、知らなかったあ! なんで前もって連絡くれなかったんでしょうねえ?」
「済みません。ごめんなさい。全てこちら側の手配ミスです・・・はい」
聖女の召喚を行うには、国王の任命の下、宰相の立ち合いによって実行されるらしい・・・「八十年に一度ぐらい、必要に応じて行う」とGさんが説明してくれた。
この国には宰相が二人いて、あのGさんは“東の宰相”と呼ばれ、もう一人は“西の宰相”と呼ばれているらしい。
ぶっちゃけ国王陛下が少々アレなんで(どんなんだよ?)政治業務が大変で、一昔前に宰相は二人必要だと判断して以来、東と北を担当、西と南を担当するように分けられたらしい。
そして、どちらか一方が事故ったら次世代が決定するまで、緊急対応としてすべての業務を片方が代行するという。
どこも才能ある人間は、苦労が絶えないと思う。
しかし、あの小さいGさんが宰相だなんて・・・宰相のイメージが違い過ぎると思った。
宰相ってのは戦略のプロというイメージがあったので、ぱっと見あれはないかな~?
同じ日にもう一人の“聖女”を召喚しているという・・・あっちもいい迷惑なんじゃないか?
召喚当日に“名呼び”を逆指名して、ぶっ倒れたのは私の方だけらしい。
ま、しょうがないじゃん? 私はとりあえず、デプロメールとマイスリーと漢方薬と頓服を少々しか持ってないんだから、布団を被るしかないのだ。
「からだ、だるいな・・・クラクラする、召喚された昨日もメニエール寸前みたいな感じで天井が回ったし・・・」
“体が弱い!”宣言もしといたし、しばらくは楽ができそうだ。
などど、私は気楽に・・・現実逃避を決め込んだ。
ありがたい事に”お世話係”が本当にお世話をしてくれるとの事だ。
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