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本編

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「そういえば、明日からしばらくここを離れることになりそうなんだ。」

カレーの味見をしていた2人に伝える。

元々、それを伝えるつもりで厨房に来たのについつい忘れていた。

「何処かに行くんですか?」

コルムくんが首を傾げた。

「うん、アレンと一緒にレオンくんの国に行かないといけなくて…。」

他国の国王が呪われているからそれを治しに行くとは流石に言えなくて、なんと言っていいものか迷う。

しかし、アレンの名前を出したからか、2人は深く聞いてこなかった。

「何日くらい離れられる予定ですか?
アレン様が以前出発される時のように、持って行ける料理を用意した方が良いでしょうか?」

コルムくんが少し考えてから聞いてくる。

「あ、確かにそうかも…。
そこまで考えてなかったよ…。」

「でしたら、先にトオルさんは皆さんと夕食を召し上がってください。
その時に相談して頂いて後で教えてください。
こちらは用意だけしておきますから。」

カベロくんが言う。

「2人ともありがとう!
じゃあ、さっそく執務室に行ってくるね。
ヴェインはまだ目が覚めてないらしいから、後で運んであげようかな。」

「はい!
談話室に食事運んで貰うようにしておきます。
ヴェイン様の方も任せてください!」

「ありがとう!」

カベロくんとコルムくんにお礼を言って厨房から出て執務室に向かった。


執務室の扉をノックするとアレンの声が返ってきた。
中には、レオンくんとヒューガさんも居る。

「3人ともご飯作ったけど食べれそう?」

中に入り声をかける。

「いいんですか!?」
レオンくんは、ご飯と聞いて嬉しそうにいう。

「あぁ、もうこんな時間だったか。
明日からの予定はトオルを交えて話をした方がいいだろうし、食べながら話をしようか。」
アレンもお腹が空いていたらしく目を輝かせながらレオンくんに答えた。

ヒューガさんもそれに頷く。

「あ、アレン!
何日くらい王都から離れる予定かわかる?
コルムくんとカベロくんが遠征に持っていく食事を心配してくれてたんだけど…?」

アレンが俺の質問に少し考えてから応える。


「何とも言えないな…。
向こうで何が起こるか分からないし…。
とりあえず、前回と同じ位の量でいいんじゃないか?」

アレンの言葉にレオンくんが申し訳なさそうに言う。

「アレン様、可能であれば食材を多めに用意して頂けると有難いです。
まだ食料に余裕はありますが、民や兵士も疲弊していますので……。
もちろん、ちゃんと料金は支払いますので…。」

さっきレオンくんと話をした時にチラッと聞いたけど、魔物が大量に発生していると言っていた。

それなら物流は止まっているだろうし、食材を持って行って炊き出しとかした方がいいのかな?

アレンの持っているアイテム袋ならかなりの量の食材を持っていけるだろうし……。

「わかった。
用意出来るだけ食材も用意してもらうよ。
ちょっと厨房に寄ってから行くから3人は先に談話室に行っててくれる?」

「トオルさん、ありがとうございます。」

レオンくんが頭を下げてくる。

アレンに目配せすると頷いてくれたので、案内は任せてそのまま厨房に引き返した。

厨房に行き、コルムくんとカベロくんに食料の話をすると
「準備は任せてください!」と言い残して慌ただしく動き始めてしまった。

俺も早く夕食を食べてから、合流して手伝わないと…。


談話室に着くと3人がもう席についていた。

カベロくんとコルムくんがサラダも用意してくれていたみたいで、カレーとナン、サラダを配膳していく。

作り置きしているアレン用の特製ドレッシングも用意してくれていたおかげで、アレンもちゃんとサラダを食べれそうだ。

「食欲をそそるいい匂いだな。」
アレンがカレーを見ながらキラキラした目で言う。

レオンくんは、匂いでカレーだと分かっていたみたいでワクワクしていた。

「トオルさん!
まさか、さっそくカレーを作ってくれるなんて……。」

カレーを配膳するとレオンくんは、感激したのか、目をうるうるさせながら見つめてくる。

そんな様子を見てアレンの機嫌があからさまに悪くなってしまった…。

そっとアレンに抱き寄せられてしまった。
アレンを宥めながらレオンくんに答える。

「米じゃなくてナンだけどね…。
アレン、これがさっき話してたカレーだよ。」

米と言う言葉にヒューガさんが反応した。

「これは本来は米にかけて食べる物なのか?」

「そうですね。
俺が居た世界だと、米にかけて食べる事の方が多かったかな…。
でも、本場のカレーはこのパンみたいなナンにつけて食べるんですよ。
あとは、麺類のソースやスープにしたり、パンに入れたり色々な食べ方がありました。」

俺の言葉にヒューガさんは少し関心したように声を上げる。

「そうか。
そんなに沢山食べ方があるのか。
カレー?という料理か。
奥が深いな。
米が近々手に入ると思うから、用意出来たらまた作ってくれ。」


「やっぱり、お米手に入るんですか!?」
ヒューガさんの言葉にレオンくんが嬉しそうに声を上げた。

「あぁ、故郷からこっちに持って来させている。」

あてがあると聞いてはいたが、まさかもう運んでもらっている最中だったとは……。

お米が手に入ったら何作ろうかな?

色々な米料理を思い浮かべながら、皆でカレーを食べる。

レオンくんは、懐かしい味に涙を流していた。
アレンやヒューガさんも気に入ったらしく黙々と食べ続けおかわりまでしてくれた。

喜んで貰えて良かった…。







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みんなの感想(140件)

かりかり
2023.04.26 かりかり

再開待ってました🎵

なので、最初から改めて読み耽ってしまいました🎵
やっぱり、面白い😁✨

解除
ぎょらんかんのん

111話まですらすらと読め、主人公を取り囲む人たちもやさしく温かい物語ですね。
これから不穏な雰囲気になりそうです。主人公に試練が降りかかるのか。

誤字脱字報告です。
111話 
21行目 強いて言うなら…本とかを戻って来たかったけど…
→ 本とかを持って戻って来たかったけど…
→ 本とかを持って来たかったけど…

38行目 あと、アレンに持って言って貰う…
→ 持って行って貰う…

62行目 ラップサンドと、パンケーキサンドつく、
→ ラップサンドと、パンケーキサンド、

解除
すっぺ
2023.04.20 すっぺ

約1年ぶり、お待ちしておりました!
ラインハルトの事が心配でだったので、再開うれしいです💓またみんなで美味しいものを食べる日を楽しみにしてま~す

解除
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