料理人は騎士団長に食べさせたい

arrow

文字の大きさ
上 下
176 / 196
本編

144

しおりを挟む
すみません…。
今日の更新は少し短めです。

♦♦♦♦♦

ヴェインさんとラインハルトに事情を説明する為に、ソランジール公爵家の屋敷に向かう。

「カイル、先に行けるか?
ヒューガとトオルは、俺が案内する。」

耳と尻尾が生えた状態のカイルくんは、身体能力がかなり向上しているらしい。
アレンが、カイルくんに聞く。

「はい!分かりました!」

カイルくんは、返事をすると直ぐに近くの家の屋根に飛び上がり、軽々と屋根を飛び移りながら一直線にソランジール公爵家の屋敷に向かって行った。

「すごい…。」
彼の様子を見ていた俺はつい零すように呟いた。

彼の身体能力が今は羨ましい。
ヒューガさんと、アレンだけならもっと早く移動出来るだろうに、俺が足を引っ張っているこの状況が歯がゆかった。

「わっ!?」

突然の身体の浮遊感に驚く。

「トオル、くっついていた方が魔力も回復出来るだろ?
舌を噛まないように口を閉じてろよ?」

アレンが俺を抱き上げてさらに走る速度を上げる。

「う、うん…。
ありがとう…。」

俺がアレンにお礼を言うと、彼は嬉しそうに「むしろ、役得だ。」と笑う。


「アレンさんとトオルは、直接、指輪に取り付いた怨念と対峙したんだろ?
奴が行きそうな場所に心当たりは無いか?」

ヒューガさんの問いかけにアレンと顔を見合わせた。

心当たり?

そんなことを言われても……。

「確か、あいつ、この国に恨みがあるって言ってたような…。」

あの呪いとした会話を思い出しながら呟く。

でも、それだけじゃ行先なんてわからないよな…。


ヒューガさんが俺の言葉を聞いて、何かを考える素振りをする。

「あの気配と皆からの話を聞いて察するに、あの指輪に込められた怨念は、作られた時、元にされた人柱の人格が強く残ってるのでは無いだろうか…?」

人柱?
それって
「生贄ってこと?」


「あぁ、呪具を作る時の材料は、生き物であることが多い。
人間でそれをやれば効果も強くなる…。」
「忌むべき話だがな…」とヒューガさんが付け足しながら吐き捨てるように言った。


つまり、この国に恨みがある人間が生贄を使って呪具を作ったと言うことか。

ヒューガさんの言葉を聞いて、俺もアレンも複雑な顔をする。

人が人を呪う為に、人間の命を犠牲にするなんて……。


「あ!あいつ、白魔法に封印された。みたいなことを言ってた…。」

アレンが俺の言葉に驚く。

「白魔法だと?
おとぎ話みたいなものだろ?
トオルより前にも実際に使える人間が居たってことか?」

確かに、アレンやヴェインさん、ラインハルトからは、おとぎ話の魔法だと聞いている。

もし、おとぎ話になるように遥か昔のことなら記録が残っていなくても不思議じゃない?


「この国では、渡り人も白魔法もおとぎ話とされているんだったな?」

ヒューガさんが俺とアレンのやり取りを聞いて呆れたような顔をした。

「お前の故郷では違うのか?」
アレンが彼に聞く。

あ、そうか、ヒューガさんの故郷は、渡り人が創った国だった!

「あぁ、白魔法についての文献は幾つか読んだ。
だからこそ、トオルの力を借りたんだ。
しかし、この国の歴史には明るくない…。
あれを祓うなら、より沢山の情報が欲しいが…。」

白魔法についての文献?
なにそれ?
凄く読んでみたい!

ヒューガさんの言葉にアレンが頷く。

「ソランジール公爵家の人間なら、この国の歴史にも詳しいだろう。
トオル、速度をあげるぞ。
しっかり捕まってろ?
ヒューガも着いてこいよ?」

そう俺に告げてから、さらに速度を上げる。

屋根を伝って走って行ったカイルくん程ではないにしろ、風を切りながら周りの景色が高速で後ろに流れていく。

はやっ!?

ジェットコースターに乗ってる気分だ…。
風を感じていると、アレンが急停止した。

身体に受ける衝撃は、綺麗に抱きとめながらアレンが吸収してくれた。

「トオル、着いたぞ?」
アレンの言葉に前を向くと目の前に、大きな屋敷が広がっている。

「大きい…。」
騎士団の宿舎と同じくらいの規模だろうか?
これが個人の邸宅なんて…。

家の大きさだけでも、ソランジール公爵家がこの国でどれだけ力を持っているのかが伺えた。

「アレンさん、早い…。」
後ろから少しだけ息を切らしながらヒューガさんが追いついてくる。

「そうか?
ヒューガちょっと身体が鈍ってるんじゃないか?」

ヒューガさんの言葉にアレンが意地悪な顔で笑う。

「魔力も使わずにあれだけの速さを生身で出せるアレンさんが異常なだけだろ…。」

ヒューガさんが真顔で呟く。

え?魔力使って無かったの?
あの速さを俺を抱えながら生身だけで……。

改めて自分の恋人の規格外さを思い知った…。






しおりを挟む
Twitterをはじめました!よろしければフォローをお願い致します。https://twitter.com/arrow677995771
感想 140

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

異世界で騎士団寮長になりまして

円山ゆに
BL
⭐︎ 書籍発売‼︎2023年1月16日頃から順次出荷予定⭐︎溺愛系異世界ファンタジーB L⭐︎ 天涯孤独の20歳、蒼太(そうた)は大の貧乏で節約の鬼。ある日、転がる500円玉を追いかけて迷い込んだ先は異世界・ライン王国だった。 王立第二騎士団団長レオナードと副団長のリアに助けられた蒼太は、彼らの提案で騎士団寮の寮長として雇われることに。 異世界で一から節約生活をしようと意気込む蒼太だったが、なんと寮長は騎士団団長と婚姻関係を結ぶ決まりがあるという。さらにレオナードとリアは同じ一人を生涯の伴侶とする契りを結んでいた。 「つ、つまり僕は二人と結婚するってこと?」 「「そういうこと」」 グイグイ迫ってくる二人のイケメン騎士に振り回されながらも寮長の仕事をこなす蒼太だったが、次第に二人に惹かれていく。 一方、王国の首都では不穏な空気が流れていた。 やがて明かされる寮長のもう一つの役割と、蒼太が異世界にきた理由とは。 二人の騎士に溺愛される節約男子の異世界ファンタジーB Lです!

処理中です...