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本編

閑話13 騎士団長の旅路5

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朝、空が明るくなる頃にはレオンも既に起きていて、準備をして出発する。

彼のの顔にはまだ昨日の疲れが残っているようだった。


「大丈夫か?」

彼に問いかける。

「なんとか…。
恐らく、向こうに着いたら気を失うと思います。
アレンさん、後のことはお願いします……。」

「あぁ、わかった。
無理をさせてすまない…。」



-———


ブラン・イェーガーに辿り着く頃にはもう既に太陽が高く登っていた。

宣言通り、レオンはブラン・イェーガーに入ってすぐに魔法を解き、そのまま気を失う。

彼の身体を支えながらコアの名を呼んだ。


「コア!気づいてるだろ?帰ってきた。」


頭の中に彼の声が響いた。

(アレンか!?なんていいタイミングで……。)

彼の声は少し焦っているようだった。


「なにかあったのか?」

(何があったのかまでは分からん。
だが、トオルに何か危険が迫っている!)

「トオルに?どういうことだ!?」

コアから言われた言葉に焦りを感じる。

(なにか良くない気配がトオルに近づいている。
穢れが強すぎて正確に場所を感じることが出来ん!)

「なんだと!?コア、とりあえず直ぐに騎士団まで送ってくれ!
こいつも一緒に頼めるか?」

レオンを指しながら彼に聞く。

(こいつ?……またお前は面白い人間を見つけたな?
わかった。直ぐに送ろう。)

彼がなにか呟き、手を叩く音がする。
それと同時に俺とレオンの下に魔法陣が出現し、瞬く間に目の前の景色が反転する。

そして、俺達は騎士団の宿舎の前に立っていた。

「あ、アレン様?」

突然現れた俺達に宿舎の前に立つ見張り達が驚きの声をあげた。

その中の1人を呼ぶ。

「おい、グレイブ!こいつを頼む。
魔力が尽きかけてるだけだから休ませてやってくれ。
一応、高貴な身分だから丁重にもてなせよ?」

俺の言葉にグレイブは少し怯えた様子で恐る恐るレオンの身体を預かった。

その時に、騎士団の様子が少しおかしいのに気づいた。
何か騒がしい?

「トオルは何処にいる?
この騒ぎはなんだ?」

胸騒ぎがした。

周りにいた騎士達に訪ねた。

「申し訳ありません。
料理長殿は今休暇中でして…。

この騒ぎは、ソランジール家が襲撃を受けたらしく……。」

「ソランジール家が襲われた!?」

一体なにが起こっているんだ……?

「詳しい話が聞きたい。
ラインハルトかヴェインはいるか?」

「ラインハルト様も本日は休暇中でして…。
ヴェイン様は、ソランジール家に送る増援を編成するために執務室にいらっしゃいます。」

ヴェインの所の隊の騎士が教えてくれた。
「助かる。」
彼に返してから、急いで執務室へ向かった。


「ヴェインいるか!?」


突然開いた扉に彼は驚きながら声を上げる。

「おい、扉はもっと丁寧に……!?
アレン!?なんでお前がここに?」

執務室には、もう1人知った顔があり、彼も珍しく驚きの表情を見せた。

「アレンさん?サザンカンフォードに行ったんじゃ無かったのか?」

「お前こそ、遠征に出てたんじゃなかったのか?
いつ戻った?」

「昨日。」
彼は無愛想にそれだけ答える。


「お前がしばらく居ないから、俺が呼び戻したんだ。
アレンの話を聞きたいが今は少し立て込んでてな…。」

ヴェインが深刻な顔をしながら言う。

「そうだ、それについて聞きに来た。
ラインハルトの家が襲われたと聞いたが?
それにトオルは何処にいる?」


「アレンも聞いたか。
アイリーンが襲われて、意識が戻らないらしい。
ラインハルトは今日、休暇でトオルとカイル、リオルを連れて街に行ってたんだ。
ラインハルトとリオルは、ソランジールの屋敷に戻ると知らせを受けた。
トオルとカイルは孤児院に居るから、ヒューガに迎えに行って貰おうとしてたところだ。」


ラインハルトの妹が襲われて意識が戻らない?

「大体、状況はわかった。
ヴェインは、ラインハルトの所に行くんだろ?
なら、俺がヒューガと孤児院に行く。」


俺の言葉にヒューガが驚いた顔をした。

「アレンさんが行くなら、俺は行かなくても平気なんじゃないのか?」

ヴェインも俺が1人で孤児院に向かうと言い出すと思っていた様で少し驚いていた。

実際、あのソランジール家の結界が破られたのだとしたらそちらの戦力を増やしたほうが良いだろう。

だが……。

ラインハルトとトオルが出かけていた時に、ソランジール家が襲われた。

そして、コアからの「トオルに危険が迫っている。」と言う言葉。

上手くは言えないが嫌な予感がした。

「とりあえず、説明はあとだ。
ヒューガ、行くぞ。」

まだソファーに腰掛けていたヒューガを引っ張り急いで孤児院に向かう。

後ろからヴェインの声が聞こえてきたがとりあえずほうって置いた。



孤児院の近くまで来た辺りでヒューガが顔をしかめる。

「何か変だ。」

彼が呟く。

「何だ?」

「まだ昼なのに何故、こんなに人が居ない?」

ヒューガの言葉にハッとする。
途中まですれ違っていた人の気配が全く無かった。

孤児院の方を見ると更に違和感が増す。


孤児院の上だけ夜のように暗いように感じた。


「急ぐぞ!」

俺の言葉にヒューガが頷き速度をあげた。

しばらく走って居たが、何故か一向に孤児院が近くならない。

ヒューガが悔しそうに呟く。

「くっ、やられた…。
結界の中に引き込まれた。」


「結界?」

彼に聞き返す。

しかし、彼から返事を聞く余裕は直ぐに無くなった。

周囲に黒い靄が集まり魔物が湧いてきたのだ。

「魔物だと!?何故、街の中に?」


「魔物じゃない。
多分、穢れが生んだ使い魔だ…。」

ヒューガが懐から紙切れを取り出し言葉を続ける。

「結界をこじ開ける。
アレンさん、時間稼げる?」

「あぁ、任せろ。」


剣を取り出し、構えた。

襲いかかってくる魔物を片っ端から叩き切る。

しかし、魔物は、倒しても倒してキリがなく湧いてくる。

「ちっ…1匹1匹は弱いのに数か多いな…。」


「アレンさん、準備出来た。
下がって…。」

後ろからヒューガが叫ぶ。
彼の言葉に従い魔物達から距離をとった。

「全方位の一切如来に礼したてまつる。一切時一切処に残害破障ざんがいはしょうしたまえ。
最悪大忿怒尊さいあくだいふんぬそんよ。一切障難を滅尽に滅尽したまえ。残害破障したまえ。」

彼は呪文を唱えながら魔物の群れに向かって紙切れ投げつける。

その紙切れは、黄金の炎となり魔物もろとも空間を焼き払っていく。

何かが砕ける音がした。

「アレンさん、行こう。」

まだ、炎が消えてないのに彼がその中に走って行く。

「お、おい!」

仕方なく、彼の後を追った。
黄金の炎は、俺が触れても熱さを感じる事無い。

「本当に不思議な魔法だ…。」

とりあえず、ヒューガのおかげで道が開けた。

俺達は、まっすぐに孤児院に向かって走った。




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