料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

閑話12 騎士団長の旅路4

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サザンカンフォードの国王の容態を知った俺は、次の日朝早くにレオンの力を借りて、ブラン・イェーガー王国に引き返した。

「詳しく聞いていなかったが、どうやって移動するんだ?」

レオンに聞く。

「私の煌魔法の中に高速で移動する魔法があります。
それを使ってブラン・イェーガー王国まで移動するつもりです。
ただ、身体に著しく負担がかかるので半日が限界でしょうか……。」

彼は出会った時のようにまた敬語に戻っていた。

本人曰く、今は民の目もないし、年上で自分よりも圧倒的に強い俺に対して敬意をはらうのは当然らしい。

一応、普通に話して欲しいと言ってみたが、泣きそうな顔をされてしまった為、この形で落ち着いた。

常に民の目を気にしないといけないなんて、王族とは面倒なものだ……。

それはさておき、彼の話では光は波であり粒でもあるらしい。
その物質が高速で動くことで世界が明るくなる?そうだ。

正直、話が難し過ぎて理解出来なかった。
こいつは、どこでそんな知識を得たのだろうか?

とりあえず、レオンの煌魔法はその光の速さで移動することが可能らしい。

と言っても、そんな速さで動いてしまえば当然、人の身体では耐えられず死んでしまう。

だから、人の身体が耐えられるギリギリの速さとそれを保護する為の結界を周囲に展開して移動するそうだ。

空気との摩擦?で一瞬で身体が燃え尽きるなど意味のわからないことを言っていた。

原理は分からずとも、ブラン・イェーガー王国まで早く行けると言うことが分かればそれでいい。

実際、彼の魔法の効果は凄まじかった。
景色が認識出来ないほどの速さで移動するのだ。
また、障害物を避けるためにそれなりの高さの場所を飛ぶのだからそれに必要な魔力も相当なもののはずだ。

風魔法が得意なラインハルトですら、これほどの高さを飛ぼうものならものの数分で魔力が尽きるだろう。

それだけでも彼の実力を測るのには充分だった。

半日休まず進み、彼の魔力に限界が来た辺りで野営をする。


「レオン、大丈夫か?」

「はぁ…はぁ…流石に2人で移動するのはキツイです……。」

そう言いながらも、もう既に半分の距離は移動していた。
つまり明日には帰れる。

ブラン・イェーガーに入って仕舞いさえすれば、コアに頼んで王都に転移させて貰えるはずだ。

「とりあえず飯にしよう。」

マジックバックから2人分の食事を取り出した。

これだけ苦労をかけているのだから、彼の分も食事くらい用意しても罰は当たらないだろう。

むしろ、食事を与えなかったらトオルに説教をされてしまいそうだ。

食事を差し出すと驚いた顔をした。

「私の分も頂いて良いのですか?
一応、用意はしてきてるのですが…。」

「あぁ、問題ない。
俺の恋人が作ってくれた自慢の料理だ。
是非食べてくれ。」

彼にハンバーガーの入った包みを渡す。

更に、カップにスープの素を入れてお湯を注いだ。


その様子を見て彼は更に驚いた顔をする。

「アレンさん!?これは?」

「あぁ、スープを乾燥させたらしい。
お湯でとけばそのまま暖かいスープになるんだ。」

俺が考えた訳でないが、俺の恋人は凄いんだぞとばかりに自慢する。


彼は、カップを受け取り1口スープを啜る。

「これは……。まさか……。」

美味し過ぎて言葉が無いようだ。

そのまま、彼はハンバーガーの包みを広げる。

ハンバーガーを見て一瞬固まるが直ぐに食らいついた。

王族の気品はどこに置いてきたと突っ込みを入れたくなる程の気持ちいい食べっぷりだった。

「……ぐすん。」

「レオン?どうした?」
無心でハンバーガーを食べていた彼がいきなり涙を流し始める。

「いえ…なんでも無いんです……。
本当になんでも……。」

彼は、そう言いながらも、涙を流す。

「なんでも無いってことは無いだろ?」
彼の様子の意味がわからず首を傾げた。

「この料理が美味しすぎて涙が出たんですよ。
これは、アレンさんの恋人が作ったんですか?」

「あぁ、恋人は、料理人なんだ。
俺がサザンカンフォードに行くとわかって直ぐに準備してくれたんだ…。」

トオルの料理が褒めらたことが嬉しくてついつい頬が緩んだ。

「アレンさんは、その恋人さんのことが大好きなんですね…。
今、凄く幸せそうな顔をしてますよ?」

「あぁ、大好きだ。
出来ることなら片時も離れたくない。」

俺の言葉にレオンが吹き出す。

「今、私、凄く惚気られてますね…。」

トオルの話が出来てとても嬉しい気持ちだった。
今、トオルは何をしてるだろうか?
仕事をしすぎてヴェインに説教をされてなければ良いが…。


「そうだ、まだあるが食べるか?」
レオンが名残惜しそうにハンバーガーの包みを眺めていたから聞いた。

「いいんですか?」
まるでご褒美を貰えた犬のように尻尾を振っている様に見える。

「あぁ、ハンバーガー以外にもあるぞ?」

俺は、唐揚げの入ったクレープとやらを差し出す。

ラインハルトのマジックバックのおかげで出来たて熱々だった。

「これは…。」

包みを広げたレオンは、また涙を流しながら食らいつく。

こいつ、王族なのにちょっと変わってるな…。

いや、よく考えたらディアミド陛下やライリーも相当変わってる…。

「アレン様、お願いします。
向こうに着いたら恋人さんを紹介してください……。」

いきなりレオンが地面に両膝をつき、地面に頭を擦り着けそうな勢いで頭を下げてきた。

こいつ本当に王族でいいんだよな?

平民でもこんなことしないぞ?

ん?この光景どこかで……。

あ!?トオルが、俺が騎士団長だってわかった時にやってたポーズにそっくりだった。

なんだ?
俺が知らないだけで意外に浸透してるのか?

まぁ、とりあえず……。

「ダメだ!あいつは俺のだ!
絶対にやらん!
最悪、お前には死んでもらおう…。」

剣に手を置きながら威圧する。

「いやいやいや、違います!
そう言う意味じゃないです!
恋人さんの料理に感動して作り方を聞きたかったんです!」

俺の言葉にレオンは、焦りだしながら早口でそんなことを口にした。

「本当にか?」

「はい!この命に誓います!」

真剣な顔で言うレオンに、とりあえず信じてもいいかと思った。

まぁ、そもそも、トオルに逢いに行く為に帰ってる訳だから必然的に紹介しないといけないんだが…。

しかし、ちょっと癪なのも事実だ。

「考えておく…。」

「アレンさん………。」
俺の言葉にレオンが泣きそうな顔をする。


「まぁ、とりあえず、今日は疲れただろ?
早く休め……。」


「……はい。おやすみなさい…。」

レオンは、悲しそうな声を出しながらそのまま横になった。

相当疲れていたのだろう。
直ぐに寝息が聞こえてきた。

結界を張り直し、俺も眠りにつく。

明日には、トオルに会える…。
驚いた顔をするだろうな…。

驚いている所に抱きしめて沢山キスをしてやろう…。


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