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本編

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厨房に着くとまだ3人が居た。
事情を説明すると3人は愕然としていた。

「あの人、まだ食べるのか?」
カベロくんの言葉に2人が頷く。

そりゃそうだよね。
10人前平らげたのにまだお腹すいてるんだもんね…。

「よし、やってやろうじゃないか!
料理人としての血が騒ぐぜ!」
カベロくんがやる気を見せているとそれに焚き付けられたのかリオルくんとコルムくんもやる気満々に調理を始めた。

「どうせ作るなら、さっきとは違った料理じゃないとなんか負けた気がしますよね。」
リオルくんの呟きにカベロくんが頷く。

いいなぁ、楽しそう。

「ねぇ、ラインハルト、俺も…。」

「当然ダメだ。」
即答かよ…。

コルムくんが見るに見兼ねて助け舟を出してくれる。
「アイデア出しと味見をして貰えると助かるんですが…。」

おぉ、コルムくんナイス!

ラインハルトも
「それなら別にいいだろ。」
と言ってくれた。

早速3人が集まってきて作戦会議だ。
何にしようかな…。

そういえばアレンの出発に間に合わなかった天然酵母のパンを焼いて冷凍しといたんだっけ?
結構上手くいったから実際に食事に出すのはアレンが帰って来てからにしようと思ってたんだ。

まぁ、アレンが帰ってきたら焼きたてを食べさせてあげたいから焼いてある分はパン粉にしようと思ってたんだけど。

なら、パン粉にしちゃってトンカツとかもありだね。

うん!そうしよう。

3人に作り方をレクチャーする。
揚げ物を作るならせっかくだからと、ポテトと唐揚げも作りたいとコルムくんに言われてそれも追加した。

ちなみにトンカツソースなんてないから今回はトマトソースとデミグラスソースを足したソースにする。

でも、揚げ物ばかりだと少し重たいかな?

なら、酢の物でも作ろうかな?
三杯酢とか作れないから、キャロットラペとか良さそう。

主食は、ニョッキをトマトソースで用意することにした。

はぁ、このメニューなら絶対に白いご飯が恋しくなっちゃうよなぁ。

でも、こっちの人は米を知らないからあんまり違和感を感じないんだろうけど…。

コルムくん、カベロくんがトンカツ、唐揚げ、ポテトを、リオルくんがキャロットラぺとニョッキを作ることになった。

ニョッキ自体は沢山作って冷凍してあるからソースを作るだけでいい。

俺はリオルくんについてキャロットラぺの作り方を教える。

今回は、オレンジの皮と実をいれて更に爽やかさを増してみようかな。

リオルくんに指示を出してコル(紫人参)とこの前、カベロくんに教えて貰って頼んでおいたコルの親戚?の黄色いコルを千切りにしていく。

本来はキャロットラぺはチーズのおろし金ですりおろして細長くするけどないから仕方ない。

ちなみに、ラペは、すりおろしたと言う意味で、包丁で切るよりも断面が荒くなるから味が染みやすくなる。

次はオレンジの皮をシャトー剥きにして中綿を外して千切りにしていく。

次は、実を剥いて房に分け、角切りにする。
下ごしらえは、これで終わりだ。
ボウルに千切りにしたコルとオレンジの皮を入れ、ビネガー、砂糖、塩、刻んだライユ(胡椒)の実、オイルを加えて和えていく。
全体が馴染んだら、最後に角切りにしたオレンジの実を加えて崩し過ぎないように軽く混ぜたら完成だ。

味見してみると、甘酸っぱい味とオレンジの爽やかな香りが食欲をそそらせる。

保存も効くし、お肉料理の付け合せにはもってこいの料理だ。

紫のコルと黄色いコル、オレンジの皮の色合いがとても綺麗で見た目も楽しい料理に仕上がった。

味見したリオルくんも気に入ったみたいで
「結構簡単なのに、綺麗で味も良くてこの料理いいですね!
普段の食事にも付けようかな…。
それに、他の果物でも相性良さそうですよね。
ビネガーをレモンの汁とかにしても爽やかになりそうだし…」
といろいろな応用を考えついてるみたいだ。

ニョッキのソースは、前、アレンに食べてもらったジョーヌ(黄色いかぶ)を使った野菜のトマトソースにする。

こちらは、何回か騎士団の食事でも出しているからリオルくんも作り方を知っているから任せて大丈夫そうだ。

「トオルさん、ちょっと相談が…。」
カベロくんから呼ばれてそちらに向かう。
唐揚げとポテトの準備は終わって、あとはトンカツの準備だけのようだ。

「ん?どうしたの?」

「このトンカツって料理なんですけど、お肉の中に何かつめたら美味しいかなって…。」

あぁ、カツレツみたいな感じかな?
「うん、いいと思うよ?
なら、香草とか詰めてみようか?」

本当は、バジルとチーズを詰めてミラノ風カツレツにしても美味しいんだけどチーズがないからなぁ。

チーズ作りも研究してみないと。
でも、レンネットってどうやったら手に入るか分からないからなぁ。

とりあえずそれは置いといて、カベロくんとコルムくんは、香草をいくつか選んで戻ってきた。


「あ、でも、中に詰めちゃったら普通のと見分けがつかなくなっちゃいますよね?」

コルムくんがどうしようかなと悩んでいる。

「なら、香草パン粉にしてみるって手もあるよ?」

「香草パン粉ですか?」
カベロくんとコルムくんが興味津々に聞き返してくる。

「うん、パン粉に乾燥させた香草を混ぜて衣付けするんだよ。
それなら見た目も変わるから見分けもつくでしょ?」

香草パン粉を使った料理もなかなか多い。
揚げるだけじゃなく、鶏肉の上に香草パン粉を乗せてオーブンで焼いたり、パン粉付けしてフライパンで揚げ焼きしたり、それに更にチーズを乗せてオーブンで焼く料理もある。

どれもパン粉のサクサク感と香草の香りがマッチして美味しい料理ばかりだ。

「そんなに色んな料理があるんですね…。迷っちゃいますけど、今回はせっかくなので普通のトンカツと、香草パン粉のトンカツの2種類にします!」

そう言うとコルムくんは、楽しそうに料理に戻る。
カベロくんと2人で「こっちの香草のほうが…」とか、「こっちとこっちの方がソースとも相性が…」とか相談し合っていた。

「なんか、皆楽しそうだな?」
俺を監視していたラインハルトの所に戻るとそう言われた。

「うん、やっぱり皆料理が好きだよね!」
新しい料理を覚えて、それを更に自分なりにアレンジする為に色々試行錯誤するのはすごく楽しい。

それに皆が自分で考えて新しい料理を生み出していくのが凄く頼もしく思えた。

「俺ももっと頑張らないと、直ぐに追い越されちゃいそう…。」

俺のつぶやきにラインハルトが

「まぁ、お前は、程々にしないとまたヴェインに怒られるからな?」

と釘をさしてきた。

早く料理したいなぁ。
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