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本編
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しおりを挟む突然、ヴェインさんにいい渡された3日間の休暇。
「はぁ、暇だ……。」
昨日は、あの後、厨房に戻ることは許されなかった。
仕方なく、部屋でダラダラ父さんの遺してくれたレシピ集を眺めてこの世界でも再現出来る料理を探していた。
しばらく部屋にいると様子を見に来たラインハルトとヴェインさんに「休めって言っただろ!」ってドヤされてしまった…。
あれ?俺から料理をとったら何が残るんだろ?
趣味らしいものも無いし……。
もしかして、俺って酷く寂しい人間なんじゃ……。
途方に暮れていたら、みるに見兼ねたのかラインハルトが晩酌に誘ってくれて彼の部屋で2人酒を酌み交わして色々な話をした。
ついつい深酒をしてしまい、部屋に戻って寝て起きると既に日が登っていた。
更にベッドでダラダラと過し今に至る。
ちなみに食事は、わざわざリオルくんが部屋まで運んでくれた。
パンケーキやスパニッシュオムレツ、スープなど、どれもよく出来ていて美味しかった。
みんなの実力がめきめきと上がっているのは嬉しいが、何だか寂しくも感じてしまう。
「俺が居なくてもみんなしっかりやってるんだよなぁ。
ちょっとだけ複雑な気持ちだ。」
そんなことを考えていると部屋の扉がノックされた。
「はい?」
扉を開くとラインハルトが立っている。
「おう、トオル、やっと起きたな。
昨日は、ちょっと飲ませ過ぎたか?」
ラインハルトも結構飲んでいた気がするけどケロっとしていた。
「ラインハルト、おはよう!
平気だよ。あんなにゆっくりお酒飲んだの久しぶりだったからちょっとだけ調子乗ったかも。
どうしたの?」
「あぁ、実はな……。」
ラインハルトが苦笑いしながら自分の後ろに気にするように視線を送る。
つられて彼の後ろを見るとカイルくんが立っていた。
「カイルくん!?」
カイルくんは、やっと気がついて貰えたのが嬉しかったのか、笑顔で頷く。
「トオルさん!おはようございます!
しばらく会えてなかったからちょっと寂しかったです…。」
「そういえば、本当に久しぶりだね!
身体は大丈夫?
中に入る……あ、まだ、来客用のソファーとか無かったんだった…。」
前に、ラインハルトに言われてたのにバタバタしてたからまだ用意してなかったことを心から悔やんだ。
「だろうと思ったから俺の部屋でお茶を用意しといた。」
ラインハルトが笑いながらそう言ってくれる。
「本当!?ありがとう、ラインハルト!」
そんな感じでラインハルトの部屋にお茶のお呼ばれをした。
部屋に入ってソファーに座ると、何故かカイルくんに違和感を感じる。
なんか、いつもより距離が遠い?
「ね、ねぇ、なんか、カイルくん今日遠くない?」
気になってついつい口に出してしまう。
カイルくんは、俺の言葉に困った顔をした。
「いや、その…正直、僕もトオルさんの近くに行きたいんですけど……。」
言葉の途中でラインハルトを見る。
「まぁ、だめだよなぁ。
俺が一緒にいる意味を忘れたのか?」
ラインハルトが苦笑いしながらカイルくんに答える。
その言葉にカイルくんがしゅんと気を落としたのがわかった。
「え?なに?カイルくんもっとこっちに来なよ?」
俺もちょっとショックだったからソファーの隣を叩きながらカイルくんを呼ぶ。
「いや、ダメだろ?」
ラインハルトがすかさず答える。
「ダメですよ。」
カイルくんにまで言われてしまう。
「なんでだよ!?」
2人に理由を聞くと
「だって、お前まだ魔法の制御出来ないじゃん?」
「だって、トオルさんまだ魔法の制御出来ないじゃないですか?」
2人が声を揃えて答えた。
「はい?」
なんで魔法の制御の話が今出てくるの?
目を点にしながらラインハルトに続きを促す。
ラインハルトは、俺の様子にため息をつきながら答えた。
「カイルはなぁ、体調が良くなってからは、ずっとトオルに会いたがってたんだよ。
でも、ヴェインが2人で会うのは認めないって言っててな、まぁ、その点に関しては俺もカイルも同意見だったんだけどな。」
「なにそれ?会いに来てくれてもよかったじゃん?
むしろ、俺だって会いたかったけどヴェインに面会謝絶だからって止められてたのに……。」
ラインハルトを睨みながら理由を聞く。
「だから、カイルは、まだ怪我が完全に治ってないんだぞ?
で、会った時にカイルがしんどそうにしてたらお前、絶対魔法使うだろ?」
「あ……。つ、使わないし…。」
絶対に使う気がする…。
「いや、嘘だね、最悪無意識に使うな。
アレンの時とか、料理作ってる時みたいに。」
「そうですね。トオルさんは優しいから絶対に無意識に魔法使っちゃいますね。
だから、会わないようにしてたんですよ…。」
確かに、アレンの時は置いといて料理の時とかは無意識に魔法を使ってるから無いとは言えない…。
「まぁ、トオルが3日間休暇で流石に可哀想だから監視付きならカイルも会っていいぞってヴェインが決めたから今日は来れたんだけどな。」
「つまり、ラインハルトは…」
ラインハルトに指を指しながら聞く。
「あぁ、トオルとカイルの監視役だな。」
ん?カイルくんも?
俺だけじゃないの?
不思議そうにカイルくんを見る。
彼は恥ずかしそうに俯く。
「あぁ、カイルはな…。」
「ラ、ラインハルト様ー!
その話は内緒って言ったじゃないですかぁ!」
カイルくんは、恥ずかしそうラインハルトの言葉を遮ろうとする。
そんなカイルくんをラインハルトはデコピンで黙らせてから彼は、話を続けた。
「こいつ、また部屋から抜け出して訓練に参加しようとしたからヴェインに監視してろって言われたんだよ。」
ラインハルトは、おでこの痛みに悶えてるカイルくんに呆れ顔をする。
「あぁ、リオルくんが、次に部屋から抜け出したらラインハルトを監視に付かせるって、ヴェインが言ってたって話してたもんな。」
「リオル兄さんまで、トオルさんにそんな話したんですか!?」
カイルくんは、俺に話が伝わっていたのが余程堪えたのか顔を赤くして埋めてしまう。
「あのね、カイルくん、怪我をしてるんだからちゃんと安静にしてないとダメだよ?
身体が資本なんだからちゃんと休まないと?」
カイルくんは
「はい…。トオルさんがそう言うなら…善処します…。」
と言って肩を落とした。
バシッ
いきなり、頭に衝撃を受けて驚く。
「ラインハルト、なにすんだよ!」
いつものようにラインハルトにチョップされていた。
「いや、お前だけはその言葉をカイルに言っちゃダメだろ?
お前、3日間休暇にされた理由忘れてないだろうな?」
彼は、苦笑いしながらそう告げる。
「あ……。」
自分の置かれている状況を完全に忘れてた…。
「はぁ、騎士団に入って初めての正式な任務が問題児2人の監視とかどうなってるんだよ…。」
ラインハルト、なんかごめん…。
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