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本編
118
しおりを挟む「あ、そう言えばもうひとつ話があったんじゃなかった?」
ハーブティーを飲みながらヴェインさんに聞いてみた。
「あぁ、さっきカイルに聞いたんだがな、トオルにも伝えておくべきだと思って。」
カイルくんからの話?
リオルくんの話じゃ、もうだいぶ元気になったみたいだけど……。
「あ、あれか?カイルが戻った日に言ってた、アレンが戻って来るまでトオルは魔法を使うなってやつか。」
ラインハルトが、ふと思い出したように声を出した。
「あぁ、それだ。
ちゃんと話を聞く前にカイルが気を失ったからな。
さっき聞いてきたんだ。
カイルが魔眼を持ってるのは知ってるだろ?」
ヴェインさんが俺に確認をしてくる。
もちろん覚えてる。
カイルくんは、昔魔力が暴走した時に魔眼が発現したって前に言ってたもんな。
「うん、でも、いきなりなんで魔眼の話?」
話が読めなくてヴェインさんに尋ねる。
「前々からカイルがトオルを魔眼で見て魔力の流れを感じ取って、ある仮説を立ててたみたいなんだ。
まだ、確定した訳じゃないそうだが…。
そうだな、とりあえず何処から話すべきか…。」
ヴェインさんは、1度ハーブティーで口を潤してから佇まいを正してから口を開いた。
あ、これは研究者モードのヴェインさんだ。
ってことは、難しい話か…。
「トオル、魔力は何処から造られるか知ってるか?
いや、違うな。消費された魔力は何処から補充されるか…の方がわかりやすいか?」
魔力?
確かに考えたこと無かった。
ゲームだとMPは、アイテムを使うか宿屋に泊まると回復するみたいな仕様だったっけ?
「薬とか、寝たら…いや、時間経過で回復するみたいな感じかな?」
俺の言葉にヴェインさんは少し驚いたような顔をした。
「半分正解だな。
トオルは、魔法の知識があまりない割には時々的をいた答えを言うことがあるよな。」
「半分?ってことは他にもあるの?」
「いや、ない。
正確には、この世界の人々には魔力を造り出す身体の臓器があるんだ。
例えば、血を失っても時間が経てば減った分を身体が作ろうとするだろ?
それと同じだ。
だから、認識という意味では半分正解ってことだな。」
なるほど…。
ん?あれ?それって…?
「その臓器って違う世界からきた俺にはないんじゃない?」
ヴェインさんが俺の言葉に頷く。
「仮説だがな。
それと、建前上臓器って言ってるが実際に身体の中にある訳じゃないんだ。
だから、調べようもないんだけどな。」
臓器だけど、身体の中に実際ある訳じゃない?
なんか、頭がこんがらがってきた…。
「つまり、概念として魔力を造る機関が身体にはあるけど実際の臓器としてある訳じゃないってことかな?
なんか、体質みたいな?」
「体質か。確かにその言葉が1番しっくり来るかもしれないな。」
ラインハルトが納得したように頷いた。
「まぁ、そもそもな話、この世界の人間なら誰でも持っている当たり前のことだからわざわざ研究の対象にもならないからなぁ……。」
ヴェインさんが苦笑いしながら言う。
「あれ?でも、俺、魔力あるんでしょ?
なら、なんでそんな話になってるの?」
やっと納得したのに新しい疑問が生まれてしまった。
「そこでカイルの話だ。
カイルがアレンからトオルに魔力が流れていくのを確認したらしい。」
「アレンから?」
「あぁ、その魔力がトオルの魔力の元になってるんじゃないか?って話だ。
普通は、魔力が流れているならアレン自身の魔力が減るから、分かる気もするんだけどな…。」
ラインハルトがいきなり声を上げる。
「あ、あいつ、守護竜様の加護で無限の魔力があるから減ることがないのか!?
だから、トオルに魔力が流れても分からないってことか?」
ラインハルトの言葉にヴェインさんが苦笑いをしながら頷く。
「つくづくあいつは規格外だよな…。」
ヴェインさんの言葉にラインハルトまで苦笑いをしていた。
「えーっと、つまり、俺には魔力を造る機関がなくてアレンから魔力を分けてもらってたから魔法が使えるってことか。
で、今はアレンが近くに居ないから魔力がなくなっても補充する術がない?」
なんか、あれみたいだな。
充電式のバッテリーみたいな?
「まだ、仮説の域を出ないがな。
ただ、そう考えると筋が通るんだよな。
トオルがアレンの部屋に行かずに自分の部屋で寝た次の日の魔力測定では魔力が減ってたし、アレンの傷を治した次の日は魔力が増えてた。」
あぁ、言われてみればそうかも………?
「ち、ちょっと待って?
なんで、俺がアレンの部屋行った日をヴェインが把握してるんだよ!?」
ラインハルトとヴェインさんが顔を見合わせながら
「「まぁ、たまたまだ…。」」
と口を揃えて言う。
え?ラインハルトにも把握されてんの?
なんか、いたたまれない……。
いや、別にいつもエロい事してた訳じゃないし!
普通にアレンの隣で寝てただけだし……。
や、やましい事なんて何にもないもん。
右往左往する俺の様子を見て2人がくすくす笑っている。
「コホン。とりあえずだ、トオル、アレンが戻るまで魔法は使うなよ。
特に白魔法は見た限り魔力の消費量が桁違いだ。
あの魔力測定の魔法陣で言うと、5個分位は魔力が無くなると思え。」
は!?10個中半分も無くなるの?
燃費悪すぎでしょ?
声の魔法なんて微々たる魔力しか減らないのに?
あれ?待てよ。
「ねぇ、魔力が全部無くなったらどうなるの?」
俺の質問に2人が顔を顰めた。
「魔力が全部無くなるなんてことは普通はありえないことなんだ。
そこまで魔力を消費したら普通は身体が無理矢理に休息を取ろうとする。
つまりは、気を失って寝込む。」
ラインハルトが教えてくれた。
「魔力は、精神力だ。
仮に、全て失ってしまったとしたら最悪死ぬだろうな。
良くて自我のない人形って所か……。」
魔力が無くなったら死ぬかもしれない?
良くて廃人……。
考えただけで身震いがした。
「魔力を回復する薬ってないの?」
「無いわけじゃないが、魔力回復薬は、魔力を造る機関の働きを強める薬だ。
だから……。」
あ、俺には効果が無いかもしれないってことか…。
「まぁ、そんな落ち込むなよ。
まだ、魔力を造る機関がないって確定した訳じゃないんだろ?
それに、俺たちが護るから。
トオルがヘマして白魔法を使わない限りは大丈夫だって。」
ラインハルトが元気づけるように明るく言ってくれる。
そうだよね。
何が起こるわけでも無いだろうし…。
「そうだな。
俺の方でも他の対処方法は考えてみる。
もちろん、料理に使う魔力や普段の生活に使う魔力は最小限にするように。」
「わかった。ヴェインもラインハルトもありがとう!じゃあ、俺はそろそろ厨房に戻ろうかな…。」
ソファーから立ち上がろうとするとラインハルトに肩を組まれて阻まれてしまった。
「ラインハルト?まだ何か用?」
キョトンとしながらラインハルトを見つめる。
「まだ何か用?じゃないわ!
休めって言ったばっかりだろうが!」
あ、忘れてた…。
ヴェインさんもそんな俺を見てため息をつく。
「トオル、お前3日間休暇取らせるから。」
「え?3日も?そんなに要らないよ!
せめて1日で…。「却下だ。」」
ヴェインさんは取り付くしまもなく却下する。
ラインハルトも満足そうに頷いてるし…。
「リオル、カベロ、コルムからの頼みだ。
一応3人はお前の部下だろ?
部下に心配かけてどうするんだ…。」
こうして突然3日間の休暇を貰ってしまった……。
アレンも居ないのに3日間もどうやって過ごせばいいんだ…。
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