料理人は騎士団長に食べさせたい

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話が纏まり、アレンの出立の日程を話し合っている時にリオルくんがパンケーキを持って来てくれた。

ラインハルトが伝えてくれていたようでアレンが好きなシロップも添えてくれている。

ヴェインさんが紅茶を淹れてくれた。

美味しそうにパンケーキを頬張るアレンを見て少しだけ不安が消えた気がした。

「いつ出発するんだ?」
ヴェインさんがアレンに聞く。

「とりあえず、国を離れる事になるから陛下に聞いてからだが、なるべく早く明日中には行くつもりだ。」

「サザンカンフォートまでなら馬を飛ばして4日ってとこだな。
あっちは今頃、真冬で雪も降ってるだろうから多めにみて6日くらいを考えた方がいい。」
ラインハルトが教えてくれる。

「ラインハルトは、サザンカンフォートに行ったことあるのか?」

アレンが意外そうな顔をする。

「あぁ、ここに来る前は、親書を届ける為にあちこち行ってたからな。
隣国は制覇してるぜ。」

ラインハルトってそんな仕事をしてたのか……。

「サザンカンフォートってどんな国なの?」
アレンに何か必要な物があれば持たせてあげたくて聞いてみる。

「そうだな……一言で言うと水の国ってところだな。
あの国の守護竜様の力らしいが、夏はずっと雨が降ってて、冬はずっと雪が降ってる。
気温もイェーガー王国よりもかなり寒い。
水は清らかだからアレンでも飲水には困らないと思うぞ?」

「と言っても守護竜様が闇に飲まれた今じゃわかんないだろ?」
ヴェインさんがラインハルトの言葉に付け足す。


確かに…。
守護竜が魔物化した今じゃ、なんとも言えないか……。

せめてアレンにご飯を作ってあげたいけど……。

「とりあえず行みるしかないか…。
原因がわかったら1度戻ってきてコアに報告する予定だ。
分からなくても2週間向こうで過ごしたら1度戻ってくる。」

「声の魔法って何処まで届くかな?
アレンの安否確認に使えない?」
思いついてラインハルトに聞いてみる。


「他国程の距離で試したことないからわからないな…。
でも、本人の魔力の量にもよるから……。
それにアレンの魔力は目立つからな。
魔力を辿って送るのは可能だと思うが…。」

やっぱり試してみないことにはわからないか…。

「なぁ、トオル、すまないが日持ちのしそうなご飯を用意してくれないか?
俺はもうトオルの料理が無いと生きていけそうにない……。」

パンケーキを平らげたアレンが遠慮がちに言う。

「もちろんいいに決まってるじゃん!
あ、でも、流石に1ヶ月近く日持ちする料理ってなるとなぁ……。」

缶詰やレトルトパックのような技術が無いこの世界では流石に厳しいような……。

俺の言葉にアレンが肩を落とす。

何とかならないかな……?

「トオル、それなら俺にいい考えがある。
普通に料理を作っていいぞ!」
ラインハルトが親指を立てながら言う。

「ラインハルト?そんなこと言って大丈夫なのか?」

ヴェインさんが不安そうに聞く。

「あぁ、ちょっと方法は教えられないけど、多分いけるはずだ!」

ラインハルトの言葉にアレンとヴェインさんが怪しそうな顔をした。


もしかしてラインハルト、時間操作の魔法を使うつもりじゃ…?

ラインハルトを見ると微かに頷いていた。

いいの?
あんなに嫌ってた力なのに…。

そもそも、ラインハルトが魔法を解かないと食べれないんじゃ…?

心配そうな俺にラインハルトがもう一度「俺に任せろ」と言ってくれた。

親友が任せろと言ってくれてるんだ。

俺はそれを信じて自分の出来ることをしよう。

ヴェインさんはサザンカンフォートへの詳しい道と国内の状況を調べてくれる事になった。

「それと、これは嬉しい知らせだが…。」

話がまとまってそれぞれが自分のやるべきことをしようとした時、アレンが言い出した。

「嬉しい知らせ?」

「あぁ、カイルが正騎士に昇格した。
ジークムントから1本とったらしいぞ!」

カイルくん、凄い!おめでとう!

暗い話ばかりだったが明るい話題のおかげで皆の顔も明るくなった。

ヴェインさんもラインハルトもアレンの言葉に驚きながらも喜んでいる。

「そうか!……?あれ?守護竜様のところに行ってたのになんで知ってるんだ?」
ヴェインさんが聞く。

「あぁ、アルバ様が魔法で教えてくれたんだ。
ラインハルトは聞いてなかったのか?」

「はあ!?父上なんで俺には教えてくれなかったんだよ!」
アレンの言葉にラインハルトが拗ねたように声を上げた。


「まぁ、今回の事をコアが陛下にも伝えたからな。
そのついでだろ。
とりあえず、これでトオルの護衛にカイルが付ける。
トオル、俺が居ない間、カイルやラインハルトから離れるなよ?」

いつの間にか、ラインハルトも護衛になって居たらしい。

そんなに危険があるとは思えないけど、アレンの俺を案じてくれる気持ちが素直に嬉しかった。

むしろ、アレンの方が心配なのに…。

「アレン、明日には出発するんだろ?
カイルの騎士の昇進式はどうするんだ?
流石にアレンに憧れて騎士をめざしたのにアレンが居ないのは可哀想じゃないか?」

ヴェインさんが聞く。

「ああ、確かにそうだよな…。
出来れば俺も参加したいが…。
ついでに、ラインハルトの式も同時にやらないといけないしな…。」

「俺はついでかよ!?
でも、確かにそうだよな。
別に俺はいいけど、カイルはアレンがいた方が喜ぶだろ?」

ラインハルトは、少しだけ不服そうに苦笑いする。


「……カイルに聞いてみたらいいんじゃないか?」
ヴェインさんが、しばらく考えた後、提案した。

もちろん、みんなでしっかりお祝いをしてあげたかったがじ、カイルくんは今日は向こうの騎士団にとどまって明日戻ってくるらしく、ちょうどアレンと入れ違いになってしまう。

ちゃんと本人の意志を確認する辺りが3人らしいなぁと感じる。

「あぁ、じゃあ後でカイルに魔法を送って聞いてみる。」
ラインハルトが申し出てくれた。

とりあえずカイルくんのことは彼に任せて俺は自分の仕事をしよう。

アレンが食べる食事を作らなくては。

もしかしたら2~3週間分の食料では足らないかもしれない。

しっかりと席に着いて食べられるとは限らないから食べやすいものにしないといけないし……。

厨房に向かいながら食べやすそうな料理を考える。

出来ればパンを作りたい。
天然酵母の様子を見てみよう。
朝はもう少しかな?くらいだったし使えるかもしれない。

あとは、クレープ生地を焼いてラップサンドみたいにしたら食べやすいかな?

あとは、パンケーキのサンドもありだな……。


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