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番外編 公爵子息は副団長を愛したい (本編86話後推奨)

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更新遅くなりました。
本編も数話更新しております。
よろしくお願いいたしますm(_ _)m


♦♦♦♦♦

談話室にヴェインに続いて足を踏み入れる。
アレンの近くには噂通り、黒髪の青年がいた。
その顔は童顔でどう見ても俺と同い年には見えない。
まるでカイルみたいな幼さを感じた。
どちらかと言うと可愛い少年って感じだ。

「トオル、こいつがラインハルトだ。
で、こっちがトオルだ。さっきも軽く話したがうちの騎士団の料理人候補だ。
候補って言うかもう確定だろうけどな。」

まぁ、まだ信じられないがアレンが野菜を自ら食べたと言うならヴェインとしては絶対に騎士団の料理人として働かせたいだろうな…。

「初めまして。トオルっていいます。
ラインハルト様よろしくお願いします。

ヴェインさん、料理人確定でいいんですか?」

トオルが俺に礼をしたあと、驚いたようにヴェインに聞いた。

その後すぐに俺が貴族であることを思い出したのか不安そうにこちらを見てくる。

まぁ、確かに普通の貴族に対してなら無礼に思われるかもしれないが別に俺はそんなこと気にしないから安心させるように微笑む。

するとトオルは、俺を見つめたまま顔を赤くして固まっていた。

あれ?俺なんかしたかな?

そして何故かアレンが俺を睨みつけながらトオルを抱きしめた。

今まで見たことないアレンの行動に心から驚いてしまった。
その様子を見てたら変わりように笑えてきた。
「ヴェイン、本当にこれがあのアレンなのかよ?」


「残念ながら本当にアレンだ…。」
ヴェインが呆れたように返す。

「だってあのアレンだぞ?」

「あぁ、ある意味残念さに磨きがかかってるな。」

確かに違いない…。



「えっと、アレン、久しぶりだな。
で、お前の愛しい人に挨拶しても?」

からかい混じりにを強調してやった。

「ああ、久しぶりだな。
書類仕事、助かったぞ。
腹減ってるから手短にな。」

くっ…こいつ、一応俺も幼なじみだぞ?
扱い雑過ぎないか?

まぁ、とりあえず今はトオルに挨拶だな。

それとなくトオルの魔力を探ってみる。
魔法を使っている形跡はない。

つまり、本当にアレンがこいつに惚れてるのか?
それか、俺やヴェインにすら悟らせない程の実力者なのか?

「初めまして。可愛い人。
私は、ラインハルト・ソランジールです。
アレンとヴェインとは昔馴染みでして今は王宮で文官をしております。
昨日からこちらの騎士団のお手伝いをさせていただいてます。
以後お見知り置きを。」

最初が肝心だからな。
一応貴族らしく丁寧に挨拶をしてみる。

ちなみに、普段はこんな挨拶をしたことはほぼ無い。

「こちらこそよろしくお願いします️。」
トオルも律儀に挨拶を返してくれる。

正直、まだ信用したわけじゃなかった。
念の為に準備しておいた魔法を起動する。

この魔法は、ヴェインやアレンすら知らない俺のオリジナル魔法だ。

相手の声を俺の魔力に取り込み相手の感情を読み取る。

公爵家の人間として生まれた俺には昔から打算で近づいてくる輩が多かった。

それを見極める為に自然と出来上がった魔法だ。

……は?
なんだこいつ?
敵意は愚か、打算すらない。
魔法から読み取れた結果は、俺をある意味、愕然とさせた。

こんな純粋な人間は今まで出会ったことが無い。

あるのは優しさや気遣いばかりだった。

これも偽装してるのか?
いや、それはおそらく不可能だろう。
声から現れる本質は偽装しようと思って出来るものでは無い。

こいつ、本当に面白いやつだな……。

「って言うのは外用の挨拶で、気楽にラインハルトって呼んでくれ。
君はアレンの愛しい人なんだから。」

「い、愛しい人?ラインハルトさんなにか勘違いしてませんか?
俺はアレンのですよ?」

その言葉も嘘偽りがなかった。
そして、その言葉にアレンがダメージを受けている様子についつい吹き出してしまう。

そうか……アレンにもやっと大切な人が出来たんだな?

「クスクス……アレンも大変だな。
頑張れよ!」

「まぁ、食べながらでも話は出来るからとりあえず席に着こうぜ。せっかくトオルが作ってくれたご飯が冷めちまう。」

ヴェインの言葉に皆が頷いて席に着く。

並べられた料理はどれも見たことがないものばかりだった。

美味しそうな匂いに一気に空腹感が増していく。

「凄いな!うちは公爵家だがうちで食べるご飯よりも美味しそうだ。
それに見たことない料理ばっかりだ。
トオルくんが全部作ったのか?」

「はい。お口に合えばいいですけど…。」
トオルは少し緊張しているように見えた。

酒を飲みたかったところだが、まだアレンには仕事がある。
ヴェインがいれてくれた果実水で乾杯した。

それぞれが好きな料理から食べはじめる。

俺はとりあえずスープからだ。
口に入れた途端、いろいろな旨みが口いっぱいに広がる。
これはミルクを使ってるのか?

こんなに旨みがいっぱいで、優しい味のスープを飲んだのは初めてだった。


「トオル、この肉美味いな!さっぱりしてるからいくらでも食えそうだ。」

アレンが肉をがっつきながらトオルに言う。

トオルはその言葉に嬉しそうに頬を染めていた。

……いや、その反応、こいつ確実にアレンに惚れてるだろ?
その癖に無自覚とは……。

アレン、本当に頑張れ…。

俺も肉料理が気になって1口食べる。
おぉ!美味い!
ん?このソースに使ってる野菜ってジョーヌじゃないか?

全く泥臭くなくて甘みがある。

え?ちょっと待てよ?
アレン、本当にジョーヌを食ってるのか?

ついついアレンの皿を2度見してしまった。

もうほとんど料理が残っていない。

嘘だろ?

肉料理の隣にあるモチモチとした料理にもジョーヌがこれでもかというくらい入っていた。

それなのにアレンが完食している…。

驚きすぎてフォークを取り損ねて落としてしまうくらい動揺した。

アレンが躊躇うことなく料理を平らげて行く様子をヴェインが嬉しそうに眺めている。

お前は、アレンの母親か!とツッコミたくなってしまうが堪えた。

「アレン、ジョーヌ平気になったのか?
それだけじゃない。普通に野菜食べれてるじゃないか?」



「あぁ、トオルが作ったのは平気みたいだ。」
なんてこと無いようにアレンが答えた。

なんだその惚気けたような顔!
見せつけやがって…殴ってやりたくなる。

「だろ?だからトオルにはここでアレンのご飯作って貰わないと困るんだよ。」
ヴェインが言ってきた。

あのアレンがこんなふうになるなんて…。

「愛の力は偉大だな。」

零れるように口から出た。


「ああ…。全くだ。まぁ、とうの作った本人が理解してないからなぁ。」

本当に理解してないのか?

「無自覚にあんなイチャイチャしてるのか?
流石にびっくりだぞ。」


あそこまでアレンに好意を寄せられて気づかないなんて……。

トオルってただの鈍感か?

さっきまで警戒してたのかバカバカしくなる。

せっかく久しぶりにヴェインと一緒にご飯を食べてるんだ。
楽しまないと損だよな…。

ふとヒソヒソと話してたヴェインとの距離が近い事に気づいて顔が熱くなった。

ち、近い……。
相変わらず可愛いし、いい匂いがする……。


気を紛らわす為に、料理を食べ進めた。


ヴェインは、マッシュポテトと言う料理が口あたりが良くて気に入ったらしい。

チラとトオルをみる。
作り方教えてくれって言ったら教えてくれるだろうか?

ちなみに俺は、キッシュと言う料理が1番気に入った。

ホロホロサクサクの生地にふわふわな卵が入っていて毎日食べたいくらい美味かった。


「え、え!?
ア、アレンなに言ってるの……。」

いきなり、トオルが大きな声で叫び出した。

ん?どうしたんだ?
トオルは耳まで真っ赤にしながら口をパクパクさせていた。


「お?アレンもうたべおわっちゃったのか?野菜はすっかり平気になったんだな!」

ヴェインが嬉しそうに聞く。


「あぁ、トオルのおかげだな。」
何故かアレンがため息を吐いてから答える。

「トオルくん、どれも凄く美味しい!
いっそ騎士団じゃなくて俺の家で働かないか?」

どさくさに紛れて家に引き抜いて見ようと試みた。

「「だめだ!」」

アレンとヴェインが綺麗に声を揃えて叫ぶ。

まぁ、そりゃそうだよな…

「まぁ、そうだよな。
ま、俺はしばらくここにお世話になるからトオルくんの料理食べれるし別にいいんだけどな。

それにしても見たことない料理ばっかりだな。
キッシュってやつか?俺はこれが1番好きだな!
フワフワトロトロで外がホロホロ崩れる食感が最高に美味しい。
また作ってくれないか?
トオルくん若いのに本当に凄いな!」

俺の言葉にアレンとヴェインが爆笑する。

「ラインハルト様、俺、24歳です。」

あ、そう言えばヴェインがそう言ってたような?
話してるうちにリオルとかカイルと話してる気分になってたから完全に忘れてた。

「本当に同い年なのか?絶対嘘だろ!」

アレンとヴェインに再度確認をとる。

「まぁ、そう思うよな。
確かめるすべがないから自称24だな。」

ヴェインが笑いながら答えた。
アレンはもはや笑っているだけで肯定も否定もしない。


まぁ、見た目はどう見てもカイルくらいだけど話してる内容は十分同じくらいだから一応、本当に一応だけど信じてやるか……。

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