料理人は騎士団長に食べさせたい

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「そういえば、なんでリオルくんがコルムくんに恋人がいることを知ってるの?」

ふと気になり、聞いてみた。

俺の問いにリオルくんが「あっ…」としまったと言うように自分の口に手をあてる。


聞いちゃまずかったのかな?

リオルくんのその様子にラインハルトも不思議そうな顔をした。

「リオル?何か隠してるのか?」

「ラ、ラインハルト様……。
いえ…ただ…その……コルムさんの恋人さんに内緒にして欲しいって言われたので…。」

あぁ、じゃあ、つまり、リオルくんはコルムくんじゃなくて恋人さんから聞いたのか!

「なんだ?俺に隠し事するのか?」
ラインハルトがちょっと意地悪な顔をしながらリオルくんに手を伸ばす。

「ラインハルト様?」

咄嗟にリオルくんは嫌な予感を感じたのか逃げようとするが、それよりも早くラインハルトがリオルくんを羽交い締めにしてくすぐり始める。

「リオルー?俺に隠し事をするなんて悪い子に育ったなぁ?」

口ではそんなことを言っているがラインハルトは怒っている様子はなく、楽しそうにリオルくんとじゃれているようだった。

「ひゃ…ラ、ラインハルト様…もう…子供じゃないんだから……辞めてくださいよぉ……。
トオルさん…た、助けてください……。」

くすぐられているリオルくんは辛そうに涙目になりながら、必死に抵抗しているが体格差には敵わないようで俺に助けを求めてくる。

「ラインハルト?そろそろ勘弁してあげなよ?
ヴェインが睨んでるよ?」

さっきから騒ぎを聞きつけたヴェインさんがラインハルトをジト目で睨みつけていて怖いんだけど?


「ん?なんだヴェイン、リオルに嫉妬してるのか?
可愛いやつだなぁ!」

ヴェインさんの視線に気づいてリオルくんを解放したラインハルトが彼に聞く。
そのままヴェインさんを抱きしめようとラインハルトが近づくと……。


…思いっきりみぞおちを殴られていた。

リオルくんは息も絶え絶えに蹲っていて、その近くではラインハルトもみぞおちを抑えながら蹲っている。

うぁ…今、思いっきり拳が入ってたよ。
痛そう……いや、ラインハルトは完璧に自業自得なんだけどさ……。

「俺だって久しぶりに会えた弟分と仲良くしたいのに邪魔するな!」

ヴェインさんはそう言うとリオルくんに「大丈夫か?」と声をかけていた。


あ、リオルくんと仲良くしてるラインハルトに嫉妬してたのね…。



完全に状況を理解していないカベロくんとコルムくんは口を開けながら唖然としている。


「はぁ、ラインハルトもヴェインも3人と話があったんじゃ無いの?」

話が全く進まなそうだから仕方なく俺から3人にさっきの執務室での話を切り出した。


カベロくんとコルムくんは騎士団の所属になる話を二つ返事で引き受ける。

「え?いいの!?
なんか、こうもっと悩むとか上司に相談するとかあるんじゃないの!?」

「いや、俺たちは特に王宮に思い入れはないですし、正直、今日のこの数時間でも自分達の知らない知識が沢山知れて楽しかったですから……。」
コルムくんの言葉をカベロくんが引き継ぐ。

「むしろ、宿舎に部屋が貰えて、毎日美味しいご飯を食べながらトオルさんから料理を教えて貰えるなら願ったり叶ったりですよ!」

2人とも嬉しいそうに笑う。

「リオルはどうする?」
復活したラインハルトがリオルくんに聞く。

「え……僕は……ソランジール家の皆様に恩がたくさんありますし……。」

リオルくんは困ったように笑う。


「あぁ、そんなこと気にしなくてもいいんだぞ?
それに元々、騎士団の宿舎に住むなら使用人を1人は連れて行けってセバスがうるさかったんだよ……。
俺としてはリオルが居てくれた方が嬉しいんだが……?」

苦笑いしながらラインハルトが言った。

「あぁ…ラインハルト様は昔からセバス様には逆らえませんもんね?」

セバスと言うのはラインハルトの家の執事長のことらしい。

小さい頃からラインハルトの世話をしてくれていたようでラインハルトは頭があがらない存在だとリオルくんが教えてくれた。

「あぁ、リオルだから頼む…。
所属を移す必要まではないからせめて宿舎で寝泊まりしてくれ……。」

ラインハルトが苦笑いしながらリオルくんに頭をさげる。

「はぁ……わかりました。
しかし、ラインハルト様、セバス様は身の回りの世話をするものを連れて行けって意味で言ったんだと思いますけど?」

リオルくんの言葉にラインハルトが悪そうな顔で笑う。

「大丈夫だろ?
セバスは使用人を1人連れて行けって言っただけだからな!
それに、俺のご飯をリオルが作ってくれるんだからある意味間違ってない!」

ドヤ顔でラインハルトはそんなことを言う。

いや、絶対に違うだろ?
ラインハルトの言葉に俺とヴェインさんが呆れた顔をしたのは言うまでもない。

ラインハルト……間違いなく、お前はジークムントさんの弟だよ。
いや、ジークムントさんより悪知恵が働く分タチが悪いかも?

ヴェインさんも同じことを思ったようで2人で苦笑いをしてしまった。


「まぁ、とりあえず、3人は宿舎に住むってことでいいか?
1人部屋はすぐには、用意出来ないかもしれないがなるべく早く用意するようにする。」

「はい!なら、私はコルムと同じ部屋で大丈夫ですよ!
な?コルム?」

カベロくんがヴェインさんの言葉に頷いてからコルムくんに確認をとる。

コルムくんは少しだけ顔を赤らめながらヴェインさんに
「は、はい。それで大丈夫です。
よろしくお願いします。」

と小さい声で答えた。

まだヴェインさんと面と向かって話をするのは厳しいのかな?

「わかった!
改めて、これからよろしくな!
リオルはしばらくカイルと同じ部屋でいいか?」


「カイルと同じ部屋ですか!?
いいんですか?
嬉しいです!」

リオルくんはカイルくんと同じ部屋になれると聞いてすごく嬉しそうにしている。

あれ?カイルくんって確かギレスくんと同じ部屋じゃなかったっけ?

俺の疑問にラインハルトが答えてくれた。

「見習いの騎士の間は3~4人の部屋らしいんだが、カイルは今度、正騎士になるだろ?
正騎士になったばかりは2人部屋になるらしいんだ。
でも、あいつ人見知りだし、あの見た目だから一緒の部屋になるやつは慎重に選ばないといけないだろ?」

ラインハルトの説明に納得する。
確かにカイルくんは騎士団のなかでも人気だからなぁ……。
カイルくんとリオルくんは孤児院でも同じ部屋だったらしいし、久々に兄弟水入らずで仲良く出来てちょうどいいのかも?


「そうと決まればすぐに準備しないとな。
明日までには3人とも部屋が準備出来ると思うから待っててくれ。
3人の上司にも俺達から話を通さないといけないしな!」

ヴェインさんが意気揚々と厨房から出ていく。
ラインハルトもそれを追ってすぐに厨房から出ようとするが
「ラインハルトは、ソランジール家に話を通してくれればいいからあとはトオルを手伝ってろ!」とヴェインさんからピシャリと言われて少し落ち込みながら厨房に戻ってくる。


「ラインハルト、なんか、どんまい……。」

「トオル…あれやっぱりリオルに嫉妬してたよな?」


「え?あぁ……ん……そうなのかな?
それよりもさ、この話アレンを交えなくてもよかったのかな?」

やぶ蛇になりそうだったからそれとなく話を逸らす。

「あぁ、大丈夫だろ?
アレンはトオルが楽になってトオルと居れる時間が増えるなら何でもいいだろうし……。
それに人事は基本ヴェインが全部やってるからな…。」


「そうなんだ……。」
アレン…団長だよね?
扱い雑だよなぁ……。

今頃、コア様と会っているであろう恋人を少しだけ不憫に感じたのだった。
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