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本編
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「この後は何をしますか?」
ご飯を食べ終えてお茶を飲んでいるとカベロくんが聞いてくる。
「んー、とりあえず作り置きのスープストックをたくさん作りたいかな…。」
毎日スープを1日2回作ると考えたらたくさん作っておいて損はないだろうし…。
ちなみにヴェインさんに昨日聞いたらお肉屋さんで捨ててしまう骨をたくさんもらってくれた。
おかげで食材庫には大量の鶏ガラが届いている。
野菜も必要な物を揃えてもらっているから今日からでも作れそうだ。
あとは、パスタとかも作り置きがあったらいいだろうなぁ。
4人で作ればそれなりの量が作れそうだ。
あ、そろそろ天然酵母もいいかもしれない。
やりたいことが沢山あって悩んでしまう。
ヴェインさんやラインハルトなら生地を大量に捏ねる魔法知らないかな?
あとで相談しよう。
3人に魔法を料理に使いたいと話したら驚いた顔をされた。
やっぱり魔法って言うと魔物と戦うと言うイメージが強いらしくて料理に使おうとは考えたことが無いみたいだ。
話を聞く限り皆、魔力はそれなりにあるようだから使わないなんて勿体ないよね。
ヴェインさんにお願いして皆の正確な魔力量を測って貰おうかな。
厨房に戻って食器洗いをしている見習い騎士の子達に混じって皆で片付けをしてから早速作り置きのスープストックを作って行く。
3人はまたメモを取りながら俺の指示に従って作業をしてくれた。
「骨から旨みが出るなんて知らなかったです!
確かにさっきの玉ねぎのスープは玉ねぎだけじゃなくて鶏の旨みもしっかり入ってました!」
鶏ガラを丁寧に洗いながらカベロくんが言う。
「そうだな!今までで飲んだスープの中で1番美味しかった。」
コルムくんも頷いている。
「今まで捨ててた骨からもあれだけ美味しい物が作れたのかと思うとちょっと勿体なく思えてきますね…。」
リオルくんも2人の言葉に頷きながら言う。
「食べることって他の命を貰うってことだからなるべく無駄にしないようにして全ての食材に感謝しながら使いたいよね。」
俺の言葉に3人が真剣に頷いてくれる。
やっぱり皆いい子だなぁ。
3人が学びたいと言ってくれている間はしっかりと俺の知ってることを教えてあげよう。
大きな鍋を6つ用意して5つはフォン・ブランを、あと1つは骨と野菜をきつね色になるまでしっかりと焼いてフォン・ド・ヴォライユにしていく。
フォン・ド・ヴォライユはソースにするベースだ。
海老などの魚介類とも相性がいい。
まだ魚介類を見つけられてないけど、カベロくんに聞いた話だと魚屋さんがあるみたいだから一応作ってみる。
もちろん、鶏肉料理のソースにも使えるから便利だ。
下準備が終わり煮込み始めたころにラインハルトから声の魔法が飛んでくる。
「執務室に着いたぞ。
いつでも来て大丈夫だからな!」
じゃあ、パスタとニョッキのレシピを皆に渡してから行こうかな……?
ラインハルトに「準備出来たらすぐ行く。」と返事をして、急いでメモを書いて3人に渡す。
「俺、今からヴェイン達と話したい事があるからちょっと行ってくるね。
その間にこのメモにあるレシピでパスタとニョッキを作って欲しいんだけどいいかな?」
「俺たちだけでですか!?」
カベロくんが心配そうに言う。
「ちょっと不安かもしれないけど大丈夫だよ?
とりあえずニョッキの方から進めておいてくれれば途中で戻って来ると思うから…。」
そんなに長話をするつもりも無いからじゃがいもを茹でている間に戻って来れると思う。
もちろん何か問題があったらすぐに執務室に呼びに来てねと言って置いた。
少し不安そうにしている3人を背に執務室まで向かった。
扉をノックするとラインハルトの声がしてすぐに扉が開く。
「ヴェイン、おはよう!」
書類仕事をしているヴェインさんはいつもより少し気だるげだった。
「トオルおはよう…。
今日の朝ごはんも美味しかったよ。
ありがとうな!
相談ってなにかあったのか?」
「あぁ、うん、今日から来てくれてる3人の勤務時間の話なんだけどさ、朝から晩まで騎士団の厨房で働いてから各家に戻るのはちょっと無理がありすぎるんじゃないかなって……。」
ヴェインさんとラインハルトに3人の1日のスケジュールを話すと2人も厳しそうな顔をする。
「うちの料理長がそんなことリオルにさせようとしてたのか?」
ラインハルトは少しお怒りの用ですぐに声の魔法を何処かに2回飛ばしていた。
「どこに送ったんだ?」
ヴェインさんがラインハルトに聞く。
「父上とうちの料理長だよ。
王宮の料理人の方は父上の管轄だからな。
いっそ、騎士団に料理部門でも作って3人を引き抜くか?」
「あぁ、それはありだな。
実際、有事の時に騎士団が炊き出しとかもするからトオルを料理長にして料理人を育てて貰えばいいんじゃないか?」
「あぁ、それがいいな!
ならリオル達も宿舎に住めるだろ?
1~2週間に1回くらい報告がてら今の上司に会いに行かせればいいだろうし…。」
2人だけでどんどん話が進んでいく。
「ちょっと待ってよ?
別に今の上司さん達が悪い人達って言う訳でもないし、3人が無理しない程度に休みをとらせてあげられればそれで良かったんだけど?」
まさか、騎士団の料理部門を作るなんて話が大きくなるとは思わなかった……。
「もちろん、本人の気持ちを聞いてみてだから安心しろよ?
リオルは俺の家の使用人だから何とかなるけど、カベロとコルムは王宮の所属だから陛下に聞いてみないと何とも言えないからな?」
「あぁ、まぁ、本人の気持ち次第だな…。」
ヴェインさんもラインハルトの言葉に頷く。
ちょうど1羽鳥が戻って来てラインハルトの肩に止まる。
「父上からだった。
父上も若い子に無理はさせたく無いから騎士団がよければ部屋を宿舎に用意してやって欲しいってさ。」
ラインハルトが鳥の言葉を聞いた後に満足気に教えてくれる。
「そうか、なら本人達の意見を聞きに行くか!」
ヴェインさんが意気揚揚と立ち上がり厨房に向かって歩きだす……がすぐにその場に座り込んでしまう。
「ヴェイン、大丈夫?」
具合が悪いのかと急いでヴェインさんの元に駆け寄ろうとするがラインハルトに止められた。
「トオル……ヴェインのことは俺に任せて先に厨房に行っててくれ……。」
あ……もしかして……。
「トオルすまん、すぐに行くから先に行っててくれ……。」
顔を真っ赤にしながらヴェインさんがそう呟くように言って来た。
あぁ…ラインハルト、本当にリベンジ成功したんだね……。
おめでとう?でいいのかな?
とりあえずヴェインさんのことは原因の本人に任せて先に執務室から出た。
扉を閉めた瞬間に執務室から2人の言い合う声が聞こえたけど気にしないことにする。
「お前が加減しないからだろ!
トオルにこんなところ見られたじゃないかよ!」
「ヴェインが散々煽って来たんだろ!?
大体、最後の方はヴェインもノリノリだった癖に!」
なんて会話、俺は聞いてないから……。
やっぱり初めて最後までした次の日って歩くのも辛いのか……。
俺、大丈夫かな……?
♦♦♦♦
補足
この世界では主に魔物から身を守る魔法が発達しているため、魔物と戦う機会がない人々は魔法自体を覚えていません。
日常生活で火を使ったり水道を使う時のみ魔力を使うくらいです。
カイルが覚えた洗浄の魔法は騎士団の遠征などの時に身を清める為に使うのが一派的な使い方です。
また、一部特殊な職業についている人
例えば、酪農家がバターを作る際には大量の生乳に振動を与える魔法を使って一気にバターを作るなど例外があります。
彼らは代々、その魔法の使い方を受け継いで秘匿としているため世の中には広まっておらず、魔法で生乳からバターに一気にしてしまう為、この世界では生クリームやチーズが無いと言うデメリットもあります。
ご飯を食べ終えてお茶を飲んでいるとカベロくんが聞いてくる。
「んー、とりあえず作り置きのスープストックをたくさん作りたいかな…。」
毎日スープを1日2回作ると考えたらたくさん作っておいて損はないだろうし…。
ちなみにヴェインさんに昨日聞いたらお肉屋さんで捨ててしまう骨をたくさんもらってくれた。
おかげで食材庫には大量の鶏ガラが届いている。
野菜も必要な物を揃えてもらっているから今日からでも作れそうだ。
あとは、パスタとかも作り置きがあったらいいだろうなぁ。
4人で作ればそれなりの量が作れそうだ。
あ、そろそろ天然酵母もいいかもしれない。
やりたいことが沢山あって悩んでしまう。
ヴェインさんやラインハルトなら生地を大量に捏ねる魔法知らないかな?
あとで相談しよう。
3人に魔法を料理に使いたいと話したら驚いた顔をされた。
やっぱり魔法って言うと魔物と戦うと言うイメージが強いらしくて料理に使おうとは考えたことが無いみたいだ。
話を聞く限り皆、魔力はそれなりにあるようだから使わないなんて勿体ないよね。
ヴェインさんにお願いして皆の正確な魔力量を測って貰おうかな。
厨房に戻って食器洗いをしている見習い騎士の子達に混じって皆で片付けをしてから早速作り置きのスープストックを作って行く。
3人はまたメモを取りながら俺の指示に従って作業をしてくれた。
「骨から旨みが出るなんて知らなかったです!
確かにさっきの玉ねぎのスープは玉ねぎだけじゃなくて鶏の旨みもしっかり入ってました!」
鶏ガラを丁寧に洗いながらカベロくんが言う。
「そうだな!今までで飲んだスープの中で1番美味しかった。」
コルムくんも頷いている。
「今まで捨ててた骨からもあれだけ美味しい物が作れたのかと思うとちょっと勿体なく思えてきますね…。」
リオルくんも2人の言葉に頷きながら言う。
「食べることって他の命を貰うってことだからなるべく無駄にしないようにして全ての食材に感謝しながら使いたいよね。」
俺の言葉に3人が真剣に頷いてくれる。
やっぱり皆いい子だなぁ。
3人が学びたいと言ってくれている間はしっかりと俺の知ってることを教えてあげよう。
大きな鍋を6つ用意して5つはフォン・ブランを、あと1つは骨と野菜をきつね色になるまでしっかりと焼いてフォン・ド・ヴォライユにしていく。
フォン・ド・ヴォライユはソースにするベースだ。
海老などの魚介類とも相性がいい。
まだ魚介類を見つけられてないけど、カベロくんに聞いた話だと魚屋さんがあるみたいだから一応作ってみる。
もちろん、鶏肉料理のソースにも使えるから便利だ。
下準備が終わり煮込み始めたころにラインハルトから声の魔法が飛んでくる。
「執務室に着いたぞ。
いつでも来て大丈夫だからな!」
じゃあ、パスタとニョッキのレシピを皆に渡してから行こうかな……?
ラインハルトに「準備出来たらすぐ行く。」と返事をして、急いでメモを書いて3人に渡す。
「俺、今からヴェイン達と話したい事があるからちょっと行ってくるね。
その間にこのメモにあるレシピでパスタとニョッキを作って欲しいんだけどいいかな?」
「俺たちだけでですか!?」
カベロくんが心配そうに言う。
「ちょっと不安かもしれないけど大丈夫だよ?
とりあえずニョッキの方から進めておいてくれれば途中で戻って来ると思うから…。」
そんなに長話をするつもりも無いからじゃがいもを茹でている間に戻って来れると思う。
もちろん何か問題があったらすぐに執務室に呼びに来てねと言って置いた。
少し不安そうにしている3人を背に執務室まで向かった。
扉をノックするとラインハルトの声がしてすぐに扉が開く。
「ヴェイン、おはよう!」
書類仕事をしているヴェインさんはいつもより少し気だるげだった。
「トオルおはよう…。
今日の朝ごはんも美味しかったよ。
ありがとうな!
相談ってなにかあったのか?」
「あぁ、うん、今日から来てくれてる3人の勤務時間の話なんだけどさ、朝から晩まで騎士団の厨房で働いてから各家に戻るのはちょっと無理がありすぎるんじゃないかなって……。」
ヴェインさんとラインハルトに3人の1日のスケジュールを話すと2人も厳しそうな顔をする。
「うちの料理長がそんなことリオルにさせようとしてたのか?」
ラインハルトは少しお怒りの用ですぐに声の魔法を何処かに2回飛ばしていた。
「どこに送ったんだ?」
ヴェインさんがラインハルトに聞く。
「父上とうちの料理長だよ。
王宮の料理人の方は父上の管轄だからな。
いっそ、騎士団に料理部門でも作って3人を引き抜くか?」
「あぁ、それはありだな。
実際、有事の時に騎士団が炊き出しとかもするからトオルを料理長にして料理人を育てて貰えばいいんじゃないか?」
「あぁ、それがいいな!
ならリオル達も宿舎に住めるだろ?
1~2週間に1回くらい報告がてら今の上司に会いに行かせればいいだろうし…。」
2人だけでどんどん話が進んでいく。
「ちょっと待ってよ?
別に今の上司さん達が悪い人達って言う訳でもないし、3人が無理しない程度に休みをとらせてあげられればそれで良かったんだけど?」
まさか、騎士団の料理部門を作るなんて話が大きくなるとは思わなかった……。
「もちろん、本人の気持ちを聞いてみてだから安心しろよ?
リオルは俺の家の使用人だから何とかなるけど、カベロとコルムは王宮の所属だから陛下に聞いてみないと何とも言えないからな?」
「あぁ、まぁ、本人の気持ち次第だな…。」
ヴェインさんもラインハルトの言葉に頷く。
ちょうど1羽鳥が戻って来てラインハルトの肩に止まる。
「父上からだった。
父上も若い子に無理はさせたく無いから騎士団がよければ部屋を宿舎に用意してやって欲しいってさ。」
ラインハルトが鳥の言葉を聞いた後に満足気に教えてくれる。
「そうか、なら本人達の意見を聞きに行くか!」
ヴェインさんが意気揚揚と立ち上がり厨房に向かって歩きだす……がすぐにその場に座り込んでしまう。
「ヴェイン、大丈夫?」
具合が悪いのかと急いでヴェインさんの元に駆け寄ろうとするがラインハルトに止められた。
「トオル……ヴェインのことは俺に任せて先に厨房に行っててくれ……。」
あ……もしかして……。
「トオルすまん、すぐに行くから先に行っててくれ……。」
顔を真っ赤にしながらヴェインさんがそう呟くように言って来た。
あぁ…ラインハルト、本当にリベンジ成功したんだね……。
おめでとう?でいいのかな?
とりあえずヴェインさんのことは原因の本人に任せて先に執務室から出た。
扉を閉めた瞬間に執務室から2人の言い合う声が聞こえたけど気にしないことにする。
「お前が加減しないからだろ!
トオルにこんなところ見られたじゃないかよ!」
「ヴェインが散々煽って来たんだろ!?
大体、最後の方はヴェインもノリノリだった癖に!」
なんて会話、俺は聞いてないから……。
やっぱり初めて最後までした次の日って歩くのも辛いのか……。
俺、大丈夫かな……?
♦♦♦♦
補足
この世界では主に魔物から身を守る魔法が発達しているため、魔物と戦う機会がない人々は魔法自体を覚えていません。
日常生活で火を使ったり水道を使う時のみ魔力を使うくらいです。
カイルが覚えた洗浄の魔法は騎士団の遠征などの時に身を清める為に使うのが一派的な使い方です。
また、一部特殊な職業についている人
例えば、酪農家がバターを作る際には大量の生乳に振動を与える魔法を使って一気にバターを作るなど例外があります。
彼らは代々、その魔法の使い方を受け継いで秘匿としているため世の中には広まっておらず、魔法で生乳からバターに一気にしてしまう為、この世界では生クリームやチーズが無いと言うデメリットもあります。
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