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本編

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「わぁ!すごいご馳走ですね!
今日は何かのお祝いなんですか?」

机の上に置かれた料理をみてカイルくんが聞いてくる。

「あぁ、俺とトオルの歓迎会らしい。
もちろん、カイルも食べていくだろ?」

ラインハルトは答えながら、もちろん、お酒はカイルくんには飲ませるつもりは無いみたいで果実水も用意していた。

「……?
トオルさんとラインハルト様の歓迎会なのに2人で料理作ったんですか?」

カイルくんが不思議そうな顔をしながら聞いてきた。

まぁ、確かにそうだよね……。
苦笑いしながらラインハルトを見ると彼も似たような顔をしていた。

「もちろんトオルが居ないと作れないからなぁ…。
ちなみにカイルの試験の応援も兼ねてるからな!」

「カイルくん、試験明日なんだって!?
ごめん、聞いてなくて……。
お祝いは、カイルくんが好きな物を沢山作るからね!」

「ラインハルト様、トオルさんありがとうございます!
でも、お祝いなんて気が早いですよ…。
ダメだったら恥ずかしいじゃないですか…。」

カイルくんが恥ずかしそうに項垂れるが心做しか嬉しそうに見えた。

「さぁ、早く談話室に運ぼうぜ!
アレンとヴェインに遅いって怒られちゃうぞ?」

ラインハルトに急かされて料理を3人で談話室まで運ぶ。

カイルくんが来てくれたおかげで何とか全ての料理を運ぶことが出来た。

ワゴンみたいのがあれば楽かな?
今度街に行ったら探してみよう。


談話室に着くと2人がお腹を空かせて待っていた。
アレンとヴェインさんは先に1杯飲んでたみたいでほんのり顔が赤かった。

「ごめん、2人共お待たせ!
先に飲んでたんだ?」


「遅かったな!
暇だったから先にアレンと飲んでたんだ。
ラインハルトとトオルの歓迎会とカイルの応援会なのに先に始めてて悪かったな。」
ヴェインさんが楽しそうにいつもより大きい声で話しかけてくる。


あれ?ヴェインさんもう出来上がってない?
その様子を見てラインハルトが焦りながらヴェインさんに近づく。

「ヴェイン、酒のんだのか!?」
アレンに聞きながらヴェインさんの様子を見る。

アレンが呆れながら
「飲むって聞かなくてな……。
と言っても葡萄酒を蜂蜜水で割ったやつだからかなり弱いぞ?」

アレンがヴェインさんには聞こえないように9:1で割ったと教えてくれた。

もちろん蜂蜜水が9だ。
それ、もはや蜂蜜水じゃん……。

「ヴェインってお酒あんまり強くない?」
アレンに聞いてみる。

「トオル!俺は別に弱くないぞ!
ただ、ちょっと楽しくなるだけだ!」
ヴェインさんがケラケラ笑いながら横から言ってくる。

「まぁ、弱いな…。しかも、酔うと絡んでくるから気をつけろよ?
せっかくの料理が食べれなくなるのは流石に可哀想だからいつもより更に薄めにしといたんだ。」
アレンが小声で教えてくれた。

「トオル、心配しなくてもあと1杯酒飲ましたら蜂蜜水だけでも本人は気づかないから大丈夫だ。」
さらに、ラインハルトがヴェインさんに聞こえないようにわざわざ声の魔法で話しかけてくる。



ヴェインさん………。

「まぁ、とりあえず、料理冷める前にご飯食べちゃおうか。
カイルくんも早く席について!」

陽気なヴェインさんをみて入口で固まっていたカイルくんに声をかけて席に誘う。

「あ、は、はい!
すみません、驚いちゃって……。」

呆然としてたカイルくんは俺の声で現実に帰って来たみたいだ。

まぁ、鬼教官って呼ばれてるヴェインさんがこんな陽気なのは驚くよね……。

とりあえず皆で「頂きます」をする。

「今日は、大皿料理にしたから皆、自分が好きな料理を取ってね!
こっちのローストビーフは言ってくれれば好きな量を俺が切るから!」

一通り料理を説明して、好きな物を自分で取ってもらうことにする。

「トオル!肉くれ!もちろんいっぱいだ!」
俺の言葉に待ってました!とばかりにアレンが声をかけてくる。

「クスクス……わかった!」
その様子についつい笑いが零れる。

ローストビーフに包丁を入れると柔らかく仕上がっているようでスっと包丁が入っていく。
切り口から肉汁が溢れ出してロゼ色の綺麗な断面が見えてきた。

「「「「おぉ!!!」」」」
4人が綺麗な断面をみて驚きの声を上げた。

うん。
綺麗に焼けてるな!
アレンのお皿に切った極厚のローストビーフを乗せて塩とソースをかけてあげると皆がゴクリと唾を飲むのがわかった。

アレンのローストビーフをみて皆が「俺にも!」とお皿を出してくるのが餌を待ちわびてる雛みたいで少しおかしかった。

「美味そうだな!
こんな大きな塊で焼く肉なんて見たことなかったぞ!
なぁ、カイル!」

ヴェインさんが楽しそうにカイルくんと話してる。

「はい、ヴェイン様!
すごいですね!すごく柔らかそうだし、肉汁が溢れてますよ……。」
カイルくんもヨダレを垂らしながらこっちを見ていた。


やっぱり皆、男の子だからお肉が好きなんだね!
ローストビーフにして正解だったかも。

皆にお肉が行き渡るとそれぞれが真っ先にお肉を切ってかぶりつく。

「おぉ!噛む事に肉汁が溢れ出してくるぞ!
それにこのソースも相性抜群だな!」

「美味しいな!こんな柔らかい肉公爵家でも滅多に出てこないぞ?」

「これは葡萄酒とも相性抜群だな!」

「こんなに柔らかいお肉生まれて初めて食べました……。」

上からアレン、ラインハルト、ヴェインさん、カイルくんの感想だ。

皆、口いっぱいにお肉を頬張って幸せそうに笑っている。

うん、やっぱりお肉を食べると笑顔になるよね……。

「あ、そうだ!
実家から持ってきた葡萄酒開けようぜ!」
ラインハルトが来る途中に部屋から持ってきた葡萄酒を皆に注いでくれる。

カイルくんには葡萄ジュースを注いであげてた。


注がれたのは赤ワインで濃くて綺麗な色合いだった。
飲んでみると程よく葡萄の渋みがあり、フルーティーな香りと、樽の芳醇な香りが鼻に抜けてローストビーフにピッタリなものだった。

「この葡萄酒、美味しい……。」
ついつい呟いてしまう。

「珍しい葡萄酒だから実家から貰って来たんだ!
濃い味なのに口当たりがよくて飲みやすいだろ?」
ラインハルトが俺の呟きを聞いて頷いてくれる。

「ラインハルト、お前………。これ……。」

葡萄酒を1口飲んだアレンが驚きの声をあげてラインハルトをみる。

「え?アレン知ってるの?」
アレンに聞いてみる。

「あぁ、2年前にドラゴンに襲われて畑が焼けたせいで今はもう作れない幻の葡萄酒だ。」

は!?もう手に入らないの?
プレミアついてるやつじゃん?
絶対高いよ……。

「あぁ、アレンよくわかったな!
ちなみにそこの50年物の葡萄酒だぜ!」

「は!?50年!?俺の歳の倍以上じゃん!」
驚きのあまり、グラスを落としそうになるが慌ててキャッチする。

「トオル、ちなみに値段は俺の半年の給料くらいだ……。」
小さな声で教えてくれたアレンも、ちょっと緊張しながらグラスを持っている。

半年!?
アレンが半年で1本なら俺なんて数年くらい働かないと買えないんじゃないの?

驚いている俺たちに首を傾げながらラインハルトが聞いてくる。


「2人ともどうしたんだ?
もっと飲みたいならまだ部屋に5~6本あるから持ってくるぞ?」

「「はぁ!?5~6本だと!?」」
ラインハルトの言葉に衝撃を受けてアレンと綺麗にハモって叫んでしまう。


流石、公爵家………。
違う世界に住んでいる人間を垣間見た気がする……。

俺、ラインハルトと親友で居られるかな……。

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