料理人は騎士団長に食べさせたい

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〖料理人は騎士団長に食べさせたい〗をよろしくお願いします。
ちなみに、名前が長いので略称を募集中です笑

♦♦♦♦♦


ラインハルトがじゃがいもを剥いている間にローストビーフを焼いていく。

表面を熱したフライパンで焼いて周りを焼き固める。
先に周りをしっかり焼いて肉汁を閉じ込める為だ。

焼きあがったら150度くらいのオーブンでじっくりと焼いていく。
長い時間オーブンに入れていると表面が乾いていまうからお湯を張ったバットを入れて湯煎焼きにしてみようかな。

あとは放置するだけだ。



「あ、チーズ作らないと!」
次はラザニアかなと考えていたら、ふとチーズが無いことを思い出した。

「あのミルクとビネガー混ぜたやつか?」
ラインハルトが聞いてきた。

「うん。今回は伸びるやつ作りたいから少し工程が増えるけど。」

「ほぅ?じゃあ、じゃがいもは俺が切っとくな。」


「ラインハルトありがとう!」

じゃがいもはラインハルトに任せて俺はチーズ作りだ。

今回はモッツァレラチーズを作る。

生乳にビネガーを入れて温めていく。
ゆっくり混ぜていくとカードと呼ばれる固体とホエーと呼ばれる液体に別れる。

これをゆっくり濾して取り出したカードを90度くらいのお湯に入れて練っていく。

すると、段々と粘り気が出てきてモッツァレラチーズ特有の弾力と粘り気が出てきた。

これを一纏まりにして冷やしたら完成だ。

「おぉ!そんな綺麗な一塊になるのか!」

丸く成形して表面がつるんとしたチーズをみてラインハルトが感嘆の声を上げた。

「うん!このチーズを温めると伸びてトロトロになるんだよ!
もちろん、そのままでも食べれるから前菜にしても美味しいよ。
ちょっと味見する?」
ラインハルトに冷やしたモッツァレラを渡してみる。

俺も味見をしてみると、生乳の香りが凝縮していてほのかに甘みがあって、モッツァレラ特有の弾力が美味しかった。

ついでにカプレーゼも作ろうかな。

ラインハルトが恐る恐るモッツァレラを食べる。

「おぉ!これは美味しいな!
この前のカッテージチーズってやつとはまた違った食感で噛むのが楽しい!」

どうやらこっちの人もモッツァレラチーズ特有の食感は好きみたいだ。

天然酵母が出来たらピザとかも作れそうだな。

「じゃあ、カプレーゼって言うこのチーズを使った前菜も作ろうか。」

「あぁ!今日の飲み会は美味しい料理が沢山あって楽しみだな!」
ラインハルトが嬉しそうに笑う。

そう言えば、この前、ラインハルトって酔いつぶれて騎士団の宿舎に泊まったんじゃなかったっけ?

あんまり飲みすぎないといいけど……。

そう言えば王様から貰ったスパイスの中にターメリックがあった気がする。
ターメリックことウコンは二日酔い予防によく飲まれているあのドリンクの原料だ。

ターメリックを使ってスープでも作ってみようかな……。

とりあえずカプレーゼの準備をする。

ニンニクをみじん切りにしてオイル、塩、ライユの実と、ちぎったウメキ(バジル)を合わせたら、食べやすい大きさに切ったモッツァレラチーズと、湯むきして同じ大きさに切ったトマトを加えてマリネしておく。


そろそろパスタが寝かせ終わったからラザニア用に伸ばしていこうかな。


「次はラザニアを作ろうか。」

「わかった。パスタ伸ばせばいいのか?」
ラインハルトがやりたそうに聞いてくる。


「うん。じゃあ、お願い。
今回は、細く切らないで薄く伸ばしたのを重ねて焼くから。」

「すまん…。よく分からんから伸ばしたらまた聞く。」

そうだよね…。
言葉で形状を伝えるのってすごく難しい。

明日からお城の料理人が来るのにこんなので大丈夫なんだろうか……?

とりあえず、ラインハルトがパスタを伸ばしてる間にターメリックスープを作ってみようかな。

玉ねぎをスライスしてオイルで炒めたら刻んだ燻製肉を加える。

燻製肉の香りが出たら、フォン・ブランを加えて煮込んでいく。

あとは、生乳とターメリックを加えて味を整えたら完成だ。


途中でラインハルトがパスタを伸ばし終わったから交代してラザニア用のシートに切っていく。

「あぁ、そういう形か!
パスタって色んな形があるのか?」
ラザニアシートを見ながらラインハルトが聞いてきた。

「うん。いっぱい種類があるよ。
ペンネとか、ラビオリとか、スパゲティー二とか……。
それにニョッキもパスタの1つだし、この前の細長いやつでも太さによって名前が変わってくるから俺も全部は知らないかも……。」

「そんなに沢山あるのか!?
パスタ……奥が深いんだな…。」

「うん…。
パスタが出来た国は、主食がパスタだから色々な形で発展したらしいよ。」


ラインハルトにパスタの話をしながらラザニアを組み立てていく。

生パスタを塩をいれたお湯で軽く茹でる。
大きな器にパスタ、ミートソース、ホワイトソースを交互に重ねる。
最後に小さく角切りにしたモッツァレラチーズをのせてオーブンで焼いたら完成だ。


「手間がかかる料理だな…。」
一緒にラザニアを組み立てていたラインハルトが呟く。

「そうだね…。
まぁ、その分すごく美味しいから楽しみにしててよ!」

俺の言葉に嬉しそうに頷く。
その時、突然、厨房に青い鳥が入って来た。

その鳥はラインハルトと俺の上を飛び回るとラインハルトの肩にとまる。


「これって声の魔法?」

「あぁ、ヴェインのだな。
俺のはオリジナルで本人にしか聞こえないようにしてるが、元々ヴェインが考えたのは周りにも聞こえるやつなんだ。」

そう言いながらラインハルトは鳥に触れた。
すると、鳥からヴェインさんの声がする。

「もうすぐ仕事終わりそうだが、そっちはどうだ?
先にアレンと談話室で酒を用意して待ってる。」


「向こうはもう終わるみたいだな?
じゃあ、さっさと仕上げて俺たちも談話室に行くか?」

「うん!向こう思ったよりも早かったね。
じゃあ、フライドポテトとガレット焼いちゃおうか。」

ラインハルトが鳥に触れながら「あと20分くらいで行く」って話しかけると鳥はまた飛んでいく。

その後は2人で手分けをして料理を仕上げていく。

ラインハルトはもちろんガレットの方をやりたがったから俺が揚げ物担当だ。

ヴェインさんにポテトチップスをいつでも作ってあげるんじゃなかったのかよ……。

まぁ、ついでに揚げ物の鍋の隣で一緒にローストビーフ用のソースを作ろうかな。

甘めの葡萄酒を煮詰めてこの前作ったフォン・ド・ヴォーを加えて更に煮詰める。

最後にバターを加えて乳化させて塩とライユの実で味をととのえたらマディラソースの完成だ。

まぁ、マディラワインじゃないけど……。


途中でローストビーフの様子を見る為に取り出して金串を刺してみる。

刺したところから肉汁が吹き出して来て、とても美味しそうだった。

金串で中の温度を確認すると少し低いかな?
くらいだった。
あとは余熱で大丈夫だろう。
このまま持って行って皆の前で豪快に切ったらアレンが喜びそう。

ラザニアが入ってる方のオーブンからはいい匂いが漂ってきていた。
中を見ると、ラザニアがいい色に焼けている。
こっちも完成だね。

ラインハルトもちょうどガレットが焼けたみたいだ。

「結構いっぱい作ったな!」
料理を皿に盛り付けるとラインハルトが満足気に言った。

「うん。カプレーゼにサラダでしょ?
ラザニアに、ガレット、フライドポテト、ローストビーフにスープ。
ちょっと2人じゃ持っていくの大変だね……。」

ちなみにサラダは騎士見習いの子達が用意してくれたのを貰った。

ドレッシングはアレンが好きなオレンジのドレッシングを作り置きしてあるからそれにする。

今日は、いつもみたいに小分けにしないでドカンと大皿料理にしてみた。

それでも量が結構あって2人で運ぶの大変そうだ。

「大丈夫だ!ちゃんと助っ人を呼んであるから!」

「助っ人?」
ラインハルトの言葉に首を傾げる。


「ラインハルト様?」
厨房の入口からラインハルトを呼ぶ声がしてそちらを見るとカイルくんが入ってくるところだった。

「カイルくん!助っ人ってカイルくんのことか!」

ラインハルトを見ると
「カイル、明日が騎士の試験なんだよ。
だから、ヴェインと相談して応援も兼ねて晩御飯に呼ぼうって話してたんだ。」

え!?明日試験なの?

「なんで教えてくれなかったんだよ!?
それならカイルくんが好きな物も作ったのに……。」


「それな…。
合格はほぼ決まってるみたいなもんだし、トオルを張り切らせるなら合格祝いの時のほうがいいかなってなってな。」

合格祝いもするけど……。
試験ならステーキとカツとか作りたかったのに……。


合格祝いではカイルくんが好きな物をいっぱい作ってあげよう……。



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