料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

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ラインハルトの部屋にご飯を持って行く途中に、ヴェインさんとばったりあった。

「トオル、持って来てくれたのか?悪かったな。」

「このくらい大丈夫だよ。
カイルくんが持っていくって言って大変だったんだよ?」

俺の言葉にヴェインさんは苦笑いをする。

「あぁ、それはよく阻止してくれた。
ラインハルトにしばらく口を聞いて貰えなくなるところだった……。」

とりあえずヴェインさんに2人分のご飯を渡す。

「はい、これよろしく。
ラインハルトは?」

「もう、すっかり元気だよ。
トオル、本当にありがとうな。」

魔法はよく効いたみたいだ。
良かった……。

「ラインハルトが倒れそうになりながら厨房に来た時はびっくりしたよ。
というか、ラインハルトがヴェインを嫁に貰うみたいに言ってたからてっきり逆なのかと思ってたよ……。」

俺の言葉にヴェインさんが吹き出す。

「ラインハルトはそのつもりだったみたいだな………クスクス。
実際、押し倒されたんだけどな。
あまりにも震えて緊張してるから、可愛くて我慢出来なかったんだ……クスクス。」

つられて俺まで笑ってしまった。

「ラインハルトらしいや……。
まぁ、リベンジするみたいな事言ってたし、俺はラインハルトを応援するよ。」

「ほぉ?トオルは、ラインハルトを応援するのか……。
随分仲良くなったんだな?」
ヴェインさんが嬉しそうに言って来た。

「そうだね。
同い年で何でも話せる親友だから。
ヴェイン、ラインハルトと幸せになってね?」

俺の言葉に篭った色々な気持ちを理解してか、ヴェインさんは真剣な顔で頷いてくれた。

「トオル、お前もアレンと幸せになるんだぞ?」

「俺は今でもすごく幸せだよ!
さ、冷めないうちにラインハルトに持ってってあげて!」
ヴェインさんは、俺の言葉を聞いて満足そうにラインハルトの部屋に引き返して行った。

途中、談話室の前を通るとアレンとカイルくんがもう来ていた。
料理も運んでくれたらしく俺を待って居てくれたようだ。

「2人共、遅くなってごめんね!」

「トオルさん、おかえりなさい!
ラインハルト様どうでしたか?」

カイルくんがすぐに聞いてくる。
よっぽど心配だったらしい。
まぁ、朝のあの状態を見たら心配にもなるよね…。

「ラインハルトそんなに具合悪いのか?」
アレンも、詳しく知らないからかラインハルトを心配していた。

「もう大丈夫だよ。
元気になったから。
ヴェインに任せてしばらく放って置けば大丈夫だよ。」

「ヴェインに?……あぁ、そういうことか。」
アレンは察したらしくニヤニヤと悪い笑みを浮かべていた。

あぁ…これ絶対にラインハルトを揶揄うやつだ…。

「アレン、しばらくはそっとしといてあげるんだよ?
いいね?約束だよ?」

アレンに念を押すと観念したように頷いた。

「わかったよ……。
だが、大丈夫なのか?
今日、ラインハルトも王宮に行くんだぞ?」

「あぁ、それは問題無さそう。
さっき、ラインハルトに頼まれて白魔法使ったから。
さぁ、それより、冷めちゃう前に食べようよ!」

「あぁ、食べながら詳しく聞こう。
カイルも待たせなたな!」

「いえ、気にしないでください!」

カイルくん、そう言っても、さっきからオムレツを早く食べたそうにチラチラ見てたのを知ってるよ?


とりあえず、皆で「いただきます」をする。

カイルくんは、すぐにオムレツを食べて頬を緩ませている。

「はい、アレンには、これ。シロップだよ。
好きな量パンケーキにかけて食べてね。」

アレンにシロップを渡すと顔を綻ばせてパンケーキにかけた。
その後は、カイルくんにも渡している。

 木の樹液を煮詰めた物もらしくて、メープルシロップににた味わいだった。
はちみつとはまた違う美味しさがある。

「トオルさん!オムレツ、トロトロで美味しいです…。
パンケーキもシロップ掛けたらまた違う味わいになるんですね!」
オムレツと甘いパンケーキを食べて嬉しそうに笑ってくれる。

アレンも気に入ってくれたらしく、パンケーキはもう無くなっていた。

「アレン、パンケーキお代わりは?」

「もちろん、貰う!
オムレツも美味いなぁ……。」
しみじみ呟くように言っていた。

「ありがとう。ちょっと待ってね。
すぐに用意するから。」

アレンにパンケーキを渡してあげると、珍しくカイルくんにも遠慮がちにお代わりを頼まれた。

カイルくんにもパンケーキを渡すと更に嬉しそうに笑う。

はぁ、本当に天使だよ……。

いっぱい食べて大きくなるんだよ!

あ、でも、俺より大きくなるのはちょっとショックかも…。


ご飯を食べていると突然俺に向かって緑色の鳥が飛んできて頭の上を旋回した。

「あれ?これってラインハルトの魔法?」

アレンを見ながら呟く。

「あぁ、ラインハルトの声の魔法だな。
魔力を込めた手で触れてみろ。」

アレンに言われた通りに右手に魔力を集めて触ってみる。
まだ時間はかかるけど、魔力を集めるのはスムースに出来るようになってきた気がする。

「トオル、朝ごはんありがとうな。
卵の料理すごい美味しかった!
身体もすっかり良くなったよ。
この後、陛下に持っていくお菓子を作るんだろ?
お礼に俺も手伝っていいか?」

鳥からラインハルトの声が聞こえてきた。

手を離すとまた俺の頭の上を旋回する。

「ラインハルトなんて言ってた?」
アレンに聞かれる。

「ん?これって俺にしか聞こえないの?」

アレンは頷きながら教えてくれる。

「あぁ、元々ヴェインが考えた魔法をラインハルトが改造したものでな、知ってる人の魔力を探知して声を鳥に変えて送る魔法なんだ。
相手の魔力を吸収して周りに遮音結界を張るから周りには何も聞こえない。
もう一度魔力を込めて触れて喋るとその声がラインハルトに帰って行くんだ。」

「へぇー!ラインハルトのオリジナル魔法なんだ?
すごいね!ご飯美味しかったって。
身体は平気だからお礼にお菓子作りを手伝ってくれるみたい。」

カイルくんは、それを聞いて安心したようだ。

アレンに言われた通り、もう一度魔力を込めた手で触れてみる。

「ありがとう。ご飯食べ終わったら厨房に戻ってシュー生地作るから手伝ってくれると嬉しい。」

手を話すと鳥は飛んでいってしまう。

「これでラインハルトの所に戻るんだ?
すごいね!俺も覚えたいよ……。」

「それならラインハルトに頼んでみたらどうだ?
俺には難しすぎて使えなかったからなんとも言えないが……。」
アレンが悔しそうに言う。


やっぱり難しいのか…。
一応後で聞いてみよう。

ラインハルトを待たせるわけにもいかないから急いで朝食を食べ進めて厨房に戻る。

アレンは午前中は街の見回りに行くらしく、カイルくんもついて行くようだったから食器洗いは俺が引き受けて解散した。

カイルくんは申し訳無さそうにしてたけどお仕事だから仕方ないよね?

「早く魔法をもっと練習して洗浄の魔法を覚えてトオルさんに楽をさせますね!」って言ってくれた。


優しい……。
本当にカイルくんは天使だよ!

ちなみに、アレンの浄化の魔法は、生き物以外には使えないらしい。

とりあえず、俺は1人で厨房に戻った。


♦♦♦♦♦

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