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本編
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しおりを挟む目覚めるとまだアレンが隣で寝ていた。
朝日で明るくなった部屋で彼の寝顔を眺める。
かっこいいな………。
端正顔立ちと時たま見せる子供っぽい表情を思い出しながらこの人が俺の恋人なんだ!
と皆に自慢したくなった。
「アレン…大好き…。」
呟くように無意識に口から言葉が出ていた。
彼への好きと言う気持ちが心から溢れ出てくるようだった。
そのまま彼の胸に顔を埋めてその体温を堪能する。
次第に睡魔が襲ってきてまた眠りについた。
「………トオル………トオル!」
目を開くとまだアレンに抱きしめられている。
「ん………アレン……?おはよう…。」
目を擦りながら窓の外を見るとすでに日が登っていた。
「トオル、おはよう。よく眠れたか?」
アレンは、そう言いながらキスをくれる。
「うん!ぐっすり眠れたよ。」
俺もアレンにキスを返しながら答えた。
どうやらアレンの体温を感じながら二度寝してしまったらしい。
「俺は朝の鍛錬に行くがトオルはどうする?
眠いならまだ寝てても大丈夫だぞ?
お昼頃に王宮に行く予定だからまだ時間はある。」
王宮……あ、シュークリームを作っちゃわないと…。
「いや、俺も起きるよ。
シュークリームも作りたいし…。
朝ごはんは、何食べたい?」
アレンに朝のメニューの希望を聞いてみる。
「そうだな…パンケーキがいいな…。
今朝はなんだか、甘めの物を食べたい…。」
「わかった!
じゃあ、用意しとくね!
ラインハルトとヴェインは帰って来てるかな?」
2人とも俺たちが寝る頃にはまだ帰って来ていなかった。
「どうだろうな?
いつも通りなら、ヴェインも鍛錬場にいると思うが…。
確認したら連絡するよ。」
「うん!お願い!」
寝衣から着替えて2人で部屋を出た。
厨房に着くとカイルくんが居て、俺の顔を見ると走って近づいてくる。
「トオルさんー!おはようございます!」
俺たちの天使は今日も元気いっぱいのようだ。
「カイルくん、おはよう!昨日の疲れはとれた?」
彼の頭を撫でながら聞くと笑顔で頷く。
「はい!昨日のスープも美味しかったです!
ギレス達がトオルさんに教えてもらったって自慢してましたよ。」
自慢?
あれ?カイルくんの為に作りたいって言ってたのに本人には伝えなかったのかな?
「俺は教えただけだから、ギレスくん達が頑張って作ったんだよ?
カイルくんが頑張ってるから応援したいって言っててさ。」
俺の言葉を聞いてカイルくんが少し照れたように顔を赤くしながら微笑んだ。
「そうだったんですね…。
後で皆にお礼を言わないと…。
トオルさんもありがとうございます!」
「どういたしまして!」
「あれ?そう言えば今日は、ラインハルト様は一緒じゃないんですか?」
カイルくんは、ラインハルトを探して辺りを見渡しした。
「うん、昨日の夜出かけてたから今日はまだ会ってないんだよね…。」
「じゃあ、僕が手伝いましょうか?
トオルさん、まだ魔力扱うの苦手ですよね?」
あ、忘れてた…。
俺1人じゃ、まだ火をつけたり水を出したり出来ないんだった……。
「ありがとう…。
助かるよ。今日は、パンケーキを作りたかったんだ!
それにしても、カイルくんは、もうすっかり魔法得意になったんだね?」
一緒に頑張ろうって言ってたのにもう既にかなり置いていかれてる気がする……。
ラインハルトにもっと教えてもらわなきゃ…。
「はい、皆様のおかげです!あ、ラインハルト様?」
カイルくんが俺の後ろを見てラインハルトの名前を呟いた。
振り返るとラインハルトがこちらにゆっくりと歩いてくる。
あれ?なんか歩き方ぎこちなくない?
「トオル……おはよう……。カ、カイル!?」
声が掠れてるようで小さい声しか出ていなかった。
俺の隣のカイルくんを見つけてちょっとだけ焦った声を出す。
「ラインハルトおはよう?どうしたの?なんか…グッ……。」
途中でラインハルトが手を俺の口にあてて言葉を遮る。
「カイル、おはよう。
ちょっとトオル借りてもいいか?」
「ラインハルト様、おはようございます!
トオルさんをですか?大丈夫ですけど……?」
カイルくんは、ラインハルトに首を傾げるが、聞かない方がいいと察したのかそれ以上は何も言わなかった。
「カイル、悪いな……。」
ラインハルトは力なく謝ると俺を引っ張って歩き始める。
「あ、トオルさん!パンケーキの準備しておきますねー!」
俺たちの後ろ姿に声をかけてくれるカイルくんにラインハルトが気まずそうだった。
ラインハルトは、彼の部屋に着くとやっと俺を解放してくれる。
「ラインハルト?どうしたの?風邪でも引いた?」
体調が悪そうにベッドに腰掛ける彼に聞いてみる。
すると突然ラインハルトが俺に向かって頭を下げてきた。
「トオル……頼む、理由を何も聞かずに俺に白魔法をかけてくれ……。」
「はい?」
必死に頼んでくるからとりあえず頭を上げさせた。
「トオル…頼むよ…。
こんな状態で王宮に行ったら兄貴と父上に弄られまくる……。」
ちょっと泣きそうな顔をしながら言ってくる。
「あ、もしかして……。
昨日…ヴェインに…?」
俺がそう言うと今度は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
あ、なんかごめん……。
「とりあえず出来るかわかんないけど試してみてみるよ……。」
「トオル……。」
ラインハルトは、俺の言葉に涙を溜めながら抱きついてきた。
「はいはい、よしよし。」
ラインハルトの頭を撫でながらアレンの時を思い出しながら魔法を使う準備をする。
目を閉じて身体の中の魔力を感じる。
あれ?なんか、この前よりも感じる魔力が多いような?
それに何だか暖かくてアレンの温もりを思い出した。
その魔力を少しずつラインハルトを撫でている手に集める。
ラインハルトの身体の怠さと喉を治したい。
元気になったラインハルトを想像しながら魔力を放出していく。
キラキラと白い光がラインハルトを包んでいく。
喉と腰のあたりは集まる光が多いような気がする。
光が治まるとラインハルトは驚いた顔で俺を見た。
「治った……?」
彼に聞いてみる。
「あぁ!トオルありがとう!
この恩は一緒忘れないぞ!」
ラインハルトは俺の手を握りながらブンブンと手をふりまわしてきた。
やばい手が取れそう……。
まぁ、ひとまず魔法が成功したみたいで良かったよ……。
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