105 / 196
本編
82
しおりを挟む目覚めるとまだアレンが隣で寝ていた。
朝日で明るくなった部屋で彼の寝顔を眺める。
かっこいいな………。
端正顔立ちと時たま見せる子供っぽい表情を思い出しながらこの人が俺の恋人なんだ!
と皆に自慢したくなった。
「アレン…大好き…。」
呟くように無意識に口から言葉が出ていた。
彼への好きと言う気持ちが心から溢れ出てくるようだった。
そのまま彼の胸に顔を埋めてその体温を堪能する。
次第に睡魔が襲ってきてまた眠りについた。
「………トオル………トオル!」
目を開くとまだアレンに抱きしめられている。
「ん………アレン……?おはよう…。」
目を擦りながら窓の外を見るとすでに日が登っていた。
「トオル、おはよう。よく眠れたか?」
アレンは、そう言いながらキスをくれる。
「うん!ぐっすり眠れたよ。」
俺もアレンにキスを返しながら答えた。
どうやらアレンの体温を感じながら二度寝してしまったらしい。
「俺は朝の鍛錬に行くがトオルはどうする?
眠いならまだ寝てても大丈夫だぞ?
お昼頃に王宮に行く予定だからまだ時間はある。」
王宮……あ、シュークリームを作っちゃわないと…。
「いや、俺も起きるよ。
シュークリームも作りたいし…。
朝ごはんは、何食べたい?」
アレンに朝のメニューの希望を聞いてみる。
「そうだな…パンケーキがいいな…。
今朝はなんだか、甘めの物を食べたい…。」
「わかった!
じゃあ、用意しとくね!
ラインハルトとヴェインは帰って来てるかな?」
2人とも俺たちが寝る頃にはまだ帰って来ていなかった。
「どうだろうな?
いつも通りなら、ヴェインも鍛錬場にいると思うが…。
確認したら連絡するよ。」
「うん!お願い!」
寝衣から着替えて2人で部屋を出た。
厨房に着くとカイルくんが居て、俺の顔を見ると走って近づいてくる。
「トオルさんー!おはようございます!」
俺たちの天使は今日も元気いっぱいのようだ。
「カイルくん、おはよう!昨日の疲れはとれた?」
彼の頭を撫でながら聞くと笑顔で頷く。
「はい!昨日のスープも美味しかったです!
ギレス達がトオルさんに教えてもらったって自慢してましたよ。」
自慢?
あれ?カイルくんの為に作りたいって言ってたのに本人には伝えなかったのかな?
「俺は教えただけだから、ギレスくん達が頑張って作ったんだよ?
カイルくんが頑張ってるから応援したいって言っててさ。」
俺の言葉を聞いてカイルくんが少し照れたように顔を赤くしながら微笑んだ。
「そうだったんですね…。
後で皆にお礼を言わないと…。
トオルさんもありがとうございます!」
「どういたしまして!」
「あれ?そう言えば今日は、ラインハルト様は一緒じゃないんですか?」
カイルくんは、ラインハルトを探して辺りを見渡しした。
「うん、昨日の夜出かけてたから今日はまだ会ってないんだよね…。」
「じゃあ、僕が手伝いましょうか?
トオルさん、まだ魔力扱うの苦手ですよね?」
あ、忘れてた…。
俺1人じゃ、まだ火をつけたり水を出したり出来ないんだった……。
「ありがとう…。
助かるよ。今日は、パンケーキを作りたかったんだ!
それにしても、カイルくんは、もうすっかり魔法得意になったんだね?」
一緒に頑張ろうって言ってたのにもう既にかなり置いていかれてる気がする……。
ラインハルトにもっと教えてもらわなきゃ…。
「はい、皆様のおかげです!あ、ラインハルト様?」
カイルくんが俺の後ろを見てラインハルトの名前を呟いた。
振り返るとラインハルトがこちらにゆっくりと歩いてくる。
あれ?なんか歩き方ぎこちなくない?
「トオル……おはよう……。カ、カイル!?」
声が掠れてるようで小さい声しか出ていなかった。
俺の隣のカイルくんを見つけてちょっとだけ焦った声を出す。
「ラインハルトおはよう?どうしたの?なんか…グッ……。」
途中でラインハルトが手を俺の口にあてて言葉を遮る。
「カイル、おはよう。
ちょっとトオル借りてもいいか?」
「ラインハルト様、おはようございます!
トオルさんをですか?大丈夫ですけど……?」
カイルくんは、ラインハルトに首を傾げるが、聞かない方がいいと察したのかそれ以上は何も言わなかった。
「カイル、悪いな……。」
ラインハルトは力なく謝ると俺を引っ張って歩き始める。
「あ、トオルさん!パンケーキの準備しておきますねー!」
俺たちの後ろ姿に声をかけてくれるカイルくんにラインハルトが気まずそうだった。
ラインハルトは、彼の部屋に着くとやっと俺を解放してくれる。
「ラインハルト?どうしたの?風邪でも引いた?」
体調が悪そうにベッドに腰掛ける彼に聞いてみる。
すると突然ラインハルトが俺に向かって頭を下げてきた。
「トオル……頼む、理由を何も聞かずに俺に白魔法をかけてくれ……。」
「はい?」
必死に頼んでくるからとりあえず頭を上げさせた。
「トオル…頼むよ…。
こんな状態で王宮に行ったら兄貴と父上に弄られまくる……。」
ちょっと泣きそうな顔をしながら言ってくる。
「あ、もしかして……。
昨日…ヴェインに…?」
俺がそう言うと今度は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
あ、なんかごめん……。
「とりあえず出来るかわかんないけど試してみてみるよ……。」
「トオル……。」
ラインハルトは、俺の言葉に涙を溜めながら抱きついてきた。
「はいはい、よしよし。」
ラインハルトの頭を撫でながらアレンの時を思い出しながら魔法を使う準備をする。
目を閉じて身体の中の魔力を感じる。
あれ?なんか、この前よりも感じる魔力が多いような?
それに何だか暖かくてアレンの温もりを思い出した。
その魔力を少しずつラインハルトを撫でている手に集める。
ラインハルトの身体の怠さと喉を治したい。
元気になったラインハルトを想像しながら魔力を放出していく。
キラキラと白い光がラインハルトを包んでいく。
喉と腰のあたりは集まる光が多いような気がする。
光が治まるとラインハルトは驚いた顔で俺を見た。
「治った……?」
彼に聞いてみる。
「あぁ!トオルありがとう!
この恩は一緒忘れないぞ!」
ラインハルトは俺の手を握りながらブンブンと手をふりまわしてきた。
やばい手が取れそう……。
まぁ、ひとまず魔法が成功したみたいで良かったよ……。
14
お気に入りに追加
5,564
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる