料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

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やっぱりアレンは、お肉がいいかな?
今日は、贅沢にお肉にしようと思う。
ちょうどフォン・ド・ヴォーをソースにも使えるし…。

そんなことを考えているとちょうど、見習い騎士の子達が夕食の支度をしに厨房に来た。

アレンが居て少しだけ、緊張していた。

「とりあえず、騎士団の皆の分のスープを作ろうかな?」

そう呟くと慌てて1人の見習いの子が遠慮がちに声をかけてきた。

「あの……ト、トオル様!」

「ん?どうしたの?」
声を掛けてくれた子は、カイルくんとよく話してる子だった。
カイルくんとは違い、身体付きがしっかりとしていて身長が俺より少し高い茶色の髪の子だ。

「お前は確か、カイルと同室のギレス?だったか?どうしたんだ?」
カイルくんと同室の子かぁ!

アレンに名前を覚え貰っていたのが嬉しかったらしくギレスくんはちょっと赤くなりながら微笑んでいた。

「あ、あの、カイルが正騎士の試験の為に頑張ってるの見てて応援したくて…。
出来れば今日はスープを僕達にも作らせて頂けませんか?」

後ろの子達もその言葉に頷いている。

そっか!皆、カイルくんを応援してくれるんだ。

弟を応援して貰ってるような気分になって嬉しくなった。

「わかったよ!じゃあ、俺は手を出さないから皆にスープ作りをお願い出来るかな?」

そう言うとギレスくん達は嬉しそうに元気な返事をくれた。


ちなみに、騎士団の皆の食事はパン屋さんから仕入れているパンとスープ、メインのお肉と野菜が大体の献立だ。

お肉料理は、大体は、焼いて塩で味付けをしたらシンプルなものが多い。
そちらは皆作り慣れてるから任せようかな。
でも、ソースは教えてあげるつもりだ。

「どんなスープがつくりたい?」

皆に聞いてみた。

皆で少し話し合った後に
「で、では、カイルが好きな卵を使えませんか?」
と代表してギレスくんが言った。


卵かぁ……。
卵スープにしようかな?

「じゃあ、とりあえず、皆はニンニク、コルと玉ねぎ、ほうれん草、鶏肉を持って来てくれる?
ちなみに、今日のメインのお肉は何にする予定?」

ギレスくん以外の皆は俺に言われた食材を取りに行った。

「今日は、セルの肉にする予定です。」
ギレスくんが教えてくれる。
セルは、豚に似た生き物のことらしい。

「じゃあ、ギレスくんは、トマトをいっぱい持って来て貰っていい?ソースにしようかな?玉ねぎと、ニンニクも使うから他の子達に多めに剥いて貰ってくれるかな?」

「はい!わかりました!」
俺が指示を出すとギレスくんも走って食材を取りに向かった。


「皆カイルくんのこと応援してくれるんだね?」
アレンに言うと

「カイルは、あの見た目だし、気が利いて優しいだろ?
結構人気があるみたいだぞ?
剣術に関しては速さなら俺にも着いてこれるから騎士としても有望だしな。」

「そうなんだね?
カイルくん右目見えないって言って無かった?
ハンデをものともしないなんて凄いね。」

カイルくんは、幼い頃に右目の視力を失ったらしい。
代わりに魔眼が出たみたいだけど…。
でも、日常生活であんまり気になったことがない。
それはカイルくんの努力の賜物なんだろう。

「あぁ、この世界の全てのものには多少なり魔力が含まれている。
ヴェインが言うには、微弱な魔力をカイルの右目は感じ取って見ることが出来るらしくてな、攻撃が来る前に先読みして動けるみたいだ。
最も、反応出来るのはカイルの才能と努力の成果だがな。」

アレンの話に納得する。

相手が動き出す前に相手の行動が魔力からある程度予測出来るならそれは戦いにおいてアドバンテージになるのだろう。

まぁ、俺がそれが出来たところで上手く扱える気がしないからなんとも言えないが…。

「やっぱりカイルくんはすごいや。」

「そうだな。
トオル、カイルが正式に騎士になってから話すつもりだったんだが、あいつをトオルの護衛に付けようと思うんだ。いいか?」

「カイルくんを俺の護衛に?
将来有望な騎士なんでしょ?俺なんかの護衛なんて勿体ないよ…。
それに俺は基本ここに居るんだから危険だって少ないし…。」

俺がそう言うとアレンは少しだけ怒ったような顔をする。

「トオル、明日、王様にも言われると思うが、お前の護衛は最優先の事項だ。
コアの加護持ちで、異世界の知識だってある。
危険がないとはいい切れない。
本当は、俺が常に一緒に居てやれればいいんだがどうしてもそうはいかないだろ?
カイルが居れば街にも自由に行けるようになる。」

「そんな…。
俺は護衛されるような大層な身分じゃないのに…。」

それに自分よりも10も年下の子に護って貰うのは流石に抵抗がある。

「何かあってからじゃ遅いんだ。
それにな、カイルは、お前も知っての通り少し気が弱くて人見知りなところがあるだろ?
トオルには懐いてるし、トオルの護衛を通して護衛の練習をさせたいんだ。
だから、協力してくれないか?」

あぁ、カイルくんの練習も兼ねてなのか。
なら、断るのは少し無粋と言うものだ。

それに、確かにカイルくんが居れば街に食材や調味料を見に行くことも自由に出来る。
団長のアレンを俺の都合に連れ回すのは気が引けた。

「わかったよ…。
正直、カイルくんと一緒に居られるのは嬉しいから俺としては有難いけど、ちゃんとカイルくんの意見も聞くんだよ?
せっかく、騎士になって最初の仕事が俺の護衛なんてガッカリさせたら悪いだろ?」

「それに関しては問題ないと思うが一応確認はするさ。」

そう言った後にアレンはいきなり俺を抱きしめてくる。

「だが、俺以外の男と一緒に居られるのが嬉しいなんてちょっと妬けるな?」
と耳元で呟いてくる。

「ば、ばか!カイルくん相手に嫉妬なんかするなよ!
何歳離れてると思ってるんだ!?」

突然の言葉にちょっとだけ、赤くなりながら抗議する。

「わかってるがちょっと寂しい…。」

あぁ、もう…。
俺もアレンに手を回して答える。

「俺が好きなのはアレンだけだよ。
だから、変な心配はするなよ?」

「キスをしてくれたら心配が無くなる気がするな?」
イタズラな笑みを浮かべながらそんなことを言ってきた。

「はぁ!?こんなところで出来るわけないだろ?」

「そうか…。」

くぅ……そ、そんな寂しそうな顔するなよ…。
アレンのその顔に弱いんだからな?

見習いの子達を気にしながらアレンの頬にキスをした。

「唇じゃないのか?」

「ダメに決まってるだろ!
後で2人になったらしてあげるから早く離して!?」

アレンは俺の言葉に満足したように俺を話す。
「じゃあ、後でいっぱいくれよな?」
ニヤニヤしながら言ってきた。

あ、嵌められた……。

……わかったよ!
後で思いっきりしてやるよ。
骨抜きにされても後悔するなよ!

後でたっぷり仕返ししてやろうと心に決めた。

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