料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

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リールさんとアンナさんが帰ったあとは
また、アレンが部屋まで送ってくれた。

「アレン、団服ありがとう。
家族って言って貰えて嬉しかったよ。」

「ああ、当たり前だろ?
なぁ、トオル。ちょっとだけ部屋に入っていいか?」

「もちろんだよ!でも、仕事戻らなくていいの?」

「あと30分くらいなら大丈夫だ。」

それならとアレンを部屋に入れて2人でベッドに腰掛けた。

給料が出たらソファーでも買おうかな…。
人が来た時に座って貰う場所がベッドしかないのは少し困るし……。


「なぁ、トオル。少し聞いてもいいか?」
アレンが躊躇うように聞いてくる。

「ん?なに?」

「さっき、アンナが妊娠をしたって聞いときに暗い顔してただろ?気になってな。」

あぁ、そのことか…。
言おうかすごく躊躇った。
そのことを指摘したらアレンが離れていってしまいそうで少し怖かった。

黙っているとアレンが俺を抱きしめてキスをくれる。

「トオル?何か不安なことがあるなら言ってくれ。
俺に出来ることなら何でもするから…。」

優しく言われ、俺のことを純粋に心配しているその顔にアレンの俺への気持ちを信じきれなかった自分が恥ずかしくなる。

大丈夫だ。
きっとアレンなら……。

そう思い、アレンに伝える。


「………アンナさんの妊娠を聞いて思ったんだ。
俺は、男だからアレンの子供を産んであげられないなって。
それでもアレンは、俺を選んでくれる?」

アレンのことは信じてる。でも、やっぱり答えを聞くのが怖かった。

いつか、女の子のほうがいいと言われてしまいそうで……。

アレンを見ると何故かキョトンとした顔をしていた。

「トオル?そんなことで悩んでたのか?」

そんなこと?え?

「重要なことじゃないか!
俺はアレンの子供を産んであげられないんだよ?」
予想外の反応に驚く。
まるで、考えても見なかったという感じだった。

「あぁ、そうか…。
トオルの世界ではそれが普通なのか。」

「え?どういう意味?男なら好きな人との間に子供が欲しいって思うのは当然じゃないか!」

この世界では、普通じゃないの?

「いや、それは当たり前だぞ?」

「じゃあ、なにが違うんだよ?」

俺の問にアレンが衝撃の答えを言う。

「トオル、この世界ではな、普通に男も妊娠出来るんだぞ?」

「……………は?」
妊娠?出来る?男が?

……………は?

アレンの言葉が脳内で処理しきれず固まる。

「トオル?」

「…………。」


「おい、トオル?」

「…………。」

突然、唇にキスをされて現実に引き戻された。

「トオル、大丈夫か?」

「え?あれ?何の話してたっけ?」
なんか、凄く怖い話を聞いた気がする。

「だから、トオルも妊娠出来るって話だぞ?」

「………はぁ!!!!?
なにそれ?なんで?
意味がわからない。どうやって!!!?」

アレンが俺をなだめながら教えてくれた。

この世界で、同性同士でも自由に恋愛が出来るのは、妊娠が男でも出来るからだそうだ。

魔力を持つものなら誰でも妊娠が可能らしい。

男女の場合は、俺が知ってる知識とそうは変わらなかった。

しかし、同性同士の場合は、ちょっと違った。

ちょっとだけ生々しいからサラッと話すとお互いが本気で子供が欲しいと思いながら行為を繰り返してるうちに身体に子宮が出来るらしい。
それは、魔力を元にして出来るらしく、亜空間に出来る?らしくて身体の中だけど身体の中じゃないらしい。
そこら辺は良くわからなかった。

母体の魔力で成長して出産の頃になると亜空間から出てくるそうだ。
出産の話は怖くて聞けなかった。

「なんというか……人体の神秘……。」

「あぁ、そうだな。
それに関してはまだわかってないことのほうが多いらしい。」

「そうなんだ……。
なんか、凄く怖い話を聞いた気分だよ…。」

アレンが俺を抱きしめて言った。
「だから、トオルも俺の子供を産めるぞ?
これで安心したか?
俺はもうトオルを手放すつもりなんてないからな?」


俺がアレンの子供を……。
嬉しいけど、嬉しくない……。

別の意味で不安になってきた…。

「と、とりあえず、子供の話は置いといて…。
ありがとう。心配かけてごめん…。」


「あぁ、大丈夫だ。
これからも不安があるならすぐに言うんだぞ?
それに子供が出来るのはお互いが望んだ時だけだ。
俺は今は望んでない。」

「え?そうなの?アレン、子供苦手なの?」

「いや、そんなことないぞ?
それにもし苦手でもトオルとの子供なら可愛がりまくるに決まってるだろ?」

子供にデレデレなアレンを想像して少し笑ってしまう。

「じゃあ、なんで?」

「だって、子供が出来たらトオルは子供を優先にするだろ?」
アレンが少し拗ねたような顔で聞いてくる。

「まぁ、普通そうなるよね?」

元の世界で数少ない友人の1人が結婚をして子供が出来た時にそうだった。

親は普通そういうものだろう。

「だから、ダメだ。
俺の子供であろうとトオルを取られるのは悔しい……。
今はまだ、トオルだけを愛したい。」

大人げないことを平気で言うアレンは可愛くて…好きだなぁって心から溢れてきた。

俺がついつい笑って居ると、キスをされる。
しかも、深いキスだった。

身体が反応しそうになるのを我慢して何とかキスから逃げ出した。

「はぁ、はぁ、はぁ…。
アレン、仕事戻るんでしょ?」

「くっ………俺の部下たちは皆、優秀なんだから俺が居なくても平気だろう。
今は、トオルと愛し合いたい!」

そう言って、俺の礼服の中に手を入れようとしてくる。


「ダ、ダメだよ。
せっかくの礼服が皺になるじゃん……。」

やばい、流されちゃいそう……。


突然ノックが聞こえてくる。

「トオル~!お菓子つくるんだろ?まだ盛るなよー?」


ラインハルトの声が扉越しに響いた。

俺は慌てて、アレンを突き飛ばして扉に向かう。

「ラインハルト!廊下でそんなことでっかい声で言うな!」

扉を開けてラインハルトを部屋に引きづりこんだ。


彼は笑いながら「仕返しだ」って言ってくる。

は?なんのこと…。

「まさか、手合わせって……。」

ニヤニヤしながら頷いてくる。

くっ……それは俺が悪かった…。


「アレン、そんな睨むなよ?
ヴェインにこの時間になってもアレンが仕事に戻らないならトオルを連れ出せって言われてたんだから……。」


「くそっ…またヴェインの仕業か…。
あいつ、未来予知でも出来るのかよ!」

「そんだけアレンが単純なんだよ……。
それにしてもまたすげぇ服、贈ったな?」

ラインハルトが俺の礼服を見ながら言う。
まぁ、わかっちゃうよなぁ…。


「似合ってるだろ?
それに牽制しとかないといけないからな。」

「まぁ、それに関しては同意するわ。
トオル、鈍感過ぎて心配だからなぁ……。」

ラインハルトがアレンを憐れむような目で見ていた。

「な、なんだよ?」
俺はそこまで鈍感じゃないぞ?


「まぁ、トオルよく似合ってるよ。
せいぜい明日は、その服で王宮を歩いて宣伝するぞ。
『俺はアレンのものだからな!』って。
したら、手を出してくるヤツらも居ないだろ。」

「わぁー、言うなよー!せっかく忘れてたのに…。」

明日やっぱり私服じゃダメかな?


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