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本編

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皆で団欒をしながら食べる食事は凄く楽しかった。

食べ終わるとヴェインさんが紅茶を淹れてくれてゆっくり飲みながらカイルくんと話をする。

ご飯を食べて少し元気になったカイルくんがポツリポツリ話してくれた。

「トオルさん以外は知ってると思うんですけど、僕、右目の視力ほぼ無いんです。」

え?そうなの?
3人を見るとやはり知っていたみたいで頷いていた。


「孤児院に来る前、魔物に襲われて視力が無くなったんだったよな?」
ラインハルトがカイルくんに聞く。



「はい…。ただ………ちょっと違って……魔物に襲われた時に……僕の魔力が暴走したんです。

魔物に襲われて両親が………死……んでいくのを見て…目の前が真っ白になって……。
気づいたら……周りには……何も無かった……です……。」
カイルくんは、悲しそうに途切れ途切れでそう言った。

その時の光景を思い出したように身体が震えて行き、目からまた涙を流した。

気づいたら、立ち上がり、カイルくんの元へと行っていた。

そして頭を撫でながら彼を抱きしめる。
想像しただけでも涙が溢れていた。

「カイルくん……。」

なんて言ったらいいか分からなくて、でも、少しでも彼の苦しみを和らげてあげたくて……。

「ト……オル……さん…?」
ふいにカイルくんの声が聞こえた。

「え?どうしたの?苦しかった?」
力を入れすぎたかと思い、腕の中のカイルくんを見る。

カイルくんは、こちらを見上げていた。
いつもは髪で隠している右目が今は見えていてその瞳は夕焼けみたいな綺麗な茜色をしていた。

3人を見ると3人も初めて見たようで驚いた顔をしていた。


「トオルさん、やっぱり凄く綺麗な魔力ですね……。
優しくて、暖かそうで、トオルさんの人柄のまんまです……。」
カイルくんは俺の腕の中で呟いた。

え?俺、今、魔力漏れてるの?
やばい、ヴェインさんに怒られる……。

そう思い、ヴェインさんを見ると

「!?カイル、まさか、その目、魔眼なのか?」

「え?魔眼?」
怒られると思って身構えたにも関わらず、ヴェインさんは俺のことなんて眼中にないような顔でカイルくんに問いかけた。

「魔眼って言うんですか?
普段は、何も見えないのに誰かが魔法を使うと魔力だけ見えるんです。
自分で魔法を使う時も見えて……あの時みたいに……また…暴走するんじゃないかって………。」

「そうだったのか……。その目は生まれつきか?」


「いえ、魔物に襲われた後からです…。」

「そうか……。」
ヴェインさんは、カイルくんの答えを聞いて考え込むように黙り込んでしまった。

「魔眼ってなんなんだ?」
ラインハルトがヴェインさんに聞いてくれる。

「魔眼って言うのはな、特殊な力を持つ目だ。
と言っても、俺自身見るのは初めてだし、資料も少ないから分からないことが多い。
ただ、わかってるのは魔力を肉眼で捉えられるくらいだな。
いくつか種類があるらしいが詳しくは分からん……。」

「魔力を肉眼で見えるって凄いことなの?
ラインハルトだって、俺の魔力が漏れてたの見えてたんじゃないの?」
話に着いて行けなくて2人に聞いてみる。

「あれは、目で見えてた訳じゃない。
魔力自体を感じて、あ、漏れてるなって思ってただけだ。」
ラインハルトが教えてくれた。

「え?じゃあ、朝の魔力を測る陣は?」
朝、魔力測定をした時に俺とラインハルトでは光の色が違った。
あれが魔力じゃないのだろうか?

「あれは、陣に可視化させる術式を加えていただけだ。あれ自体、俺のオリジナルでまだ未完成だから1番強い属性の色を表しただけでその本人の魔力とはまた別物なんだよ。」
ヴェインさんが教えてくれた。

「えー!?なんか、難しすぎてわからない……。」
アレンをチラと見ると彼も俺と同じような顔をして安心する。

「いや、アレンは、魔法が苦手だし、ギフトのせいでそこら辺勉強しなくても力技でゴリ押ししてるだけだからな?」
安心していたのにラインハルトにそう言われてしまった……。


俺も魔法苦手になりそう……。

「別に理論なんか知らなくても全開で放てば終わりだろ?」
アレンは、ラインハルトにムスッとした顔でそんなことを言っていた。

うぁ……なんか、脳筋なこと言ってるよ……。
彼の場合、そんなふわっとした感じでもドラゴンを倒せてしまうのだから本当に規格外の存在なんだろうなぁ……。

「カイル、試しにトオルの魔力を詳しく教えてくれ。もしかしたら、属性がわかるかもしれない。」
アレンがカイルに聞く。

「え?、あ、はい。
トオルさんの魔力は、キラキラしてて、優しくて、心が落ち着きます。
癒されるというか、勇気を貰えるというか……。
暖かくて、優しい色をしてます。」

「どうしよう、全く分からないけどカイルくんに凄く褒めて貰えたみたいで嬉しい……。」

「トオル?顔がだらしないぞ?」
ラインハルト、うるさい!

こんなに可愛い子に褒めらたら嬉しいに決まってるだろ?

「ん?待てよ?さっき、カイルが魔力が見えるのは魔法を使った時って言ってたよな?」

ヴェインさんが気づいてはいけないことに気づいてしまった……。




やっぱりヴェインさんから怒られたのだった。
仕方ないじゃん、使い方すら知らないのに………。
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