料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

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3人で料理を談話室に運んだ。

「あれ?ヴェインさんまだ来てないんだね。」

そう呟くとラインハルトが教えてくれる。

「あぁ、多分、今日、見習い騎士の魔法講義だったから補習に付き合ってるんじゃないか?」

「そうなんだ?まだかかりそうかな?
ヴェインさん、やっぱり面倒見がいいんだね?」


「いや、この場合は、面倒見みじゃなくて鬼教官ぶりだと思うぞ?
あいつ、出来るまで帰らせないからな……。見習い泣いてないといいが……。」
アレンが苦笑いで教えてくれた。

あ、やっぱり、ヴェインさんって鬼教官なんだ……。

魔力があるならヴェインさんに魔法を教えて貰いたかったけど、やっぱりラインハルトに教えて貰おう……。


「おい!誰が鬼だ!」
突然扉が開きヴェインさんの声が響く。


俺たち3人は今の会話を聞かれてしまい背筋に嫌な汗が流れた。

やば……。


錆び付いた機械のようにぎこちなく後ろを振り返るとヴェインさんと………カイルくん?が立っていた。

カイルくんは目を真っ赤に腫らしながら俯いている。

部屋の中にラインハルトを見つけるやいなや彼に向かって抱きついていた。

「ラインハルト様………。」

「お!?おい?カイルどうした?」
ラインハルトは、カイルくんを抱き留めながらヴェインさんをチラとみる。

ヴェインさんは、その視線に気まずそうに目を逸らしながら事の経緯を教えてくれた。


「カイルは、魔法が苦手でな…。
ちょっと厳しくし過ぎたみたいで……。
とりあえずそのままにもしとけなくて連れてきたんだ。」

あぁ、それで泣かしちゃったのか……。

ラインハルトに抱きつきながら泣いているカイルくんが可哀想になり彼の頭を撫でてあげる。

俺が頭を撫でたのに気づいてカイルくんが顔をあげた。
「トオルさん……すみません……。」

茶色の瞳から大粒の涙を流すカイルくんは、控えめに言っても可愛かった……。

なにこの可愛い生き物。
天使かな?

俺がカイルくんに見蕩れていると、アレンが俺を抱き寄せてきた。

ちょっと、今、カイル撫でるので忙しいから!
ラインハルト、そこ変われ!

目でラインハルトに訴えようとするがアレンに抱き締められて邪魔されてしまった……。

「トオル、カイルの分のご飯まだあるよな?」

アレンが抑えた声で俺に聞く。

「うん、皆がお代わりしても大丈夫なように用意しておいたから厨房に行けばあるよ?」

そう伝えるとアレンは、ヴェインさんに目線を送った。

「トオル、俺が一緒に行くから頼む。
アレンとラインハルトはカイルを頼んだ。」

ヴェインさんは、俺をアレンから離して厨房に連行した。




厨房に着いてカイルくんの分のパスタを用意しているとヴェインさんがポツリポツリと話し始めた。


「カイルはな、小さい頃に魔物に襲われて家族を無くして孤児院に来たらしいんだ。」

「そうなんだね……。
確か、アレンに憧れて騎士を目指したんだっけ?」

初めてカイルくんに出会った時に彼が言っていたことを思い出した。

「あぁ、魔法は苦手だが、剣の扱いは上手いぞ。力任せじゃなくてスピードで敵を翻弄するタイプだ。見習いの中だと1番剣技が上手い。」

そうなのか。
あの天使みたいに可愛いカイルくんが剣を持ってる姿はちょっと想像出来ないな……。

「俺は、次の昇進試験でカイルを正式な騎士にしたいんだ。
でも、あいつ魔法が苦手過ぎて難しくて……。」


「あぁ、それでついつい厳しく指導して泣かせちゃったんだ。」
期待してるからこそ厳しくする。
ある意味、ヴェインさんは、師匠と似てるかも。

俺の師匠も鬼だったもんなぁ。

「それもあるが、あいつの魔法は苦手なんてレベルの話じゃないんだ。
使うことを恐れてるみたいで……。
理由を無理やり聞こうとしたら泣かしてしまった……。」


カイルくんが魔法を使おうとしない理由を聞き出すのに失敗したのか…。

「ヴェインさんの気持ちも分からなくないけどやり方が不味いよ……。
それじゃ、カイルくんもっと魔法が苦手になっちゃうじゃん。」

話をしている間にカイルくんの分の夕食が完成した。

それをヴェインさんに渡す。

「はい、これはヴェインさんが持っていって。で、カイルくんにちゃんと謝ろうね。」

「あぁ……。」

俺たちは急いで3人の元へ戻った。

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