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本編
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隣の部屋に戻るとアレンが待っていた。
「さぁ、アレン様、トオルさんに似合う生地は見つかりましたか?」
リールさんがアレンに向かって聞く。
「あぁ、これにしてくれ。」
アレンは俺には見えない様にカタログの冊子を指差してリールさんに伝えていた。
さらに、リールさんに耳打ちをしている。
耳打ちをされた彼女は、少しだけ怪訝そうな顔をして
「宜しいのですか?トオルさんにはもっと愛らしい服の方が…。」
「あぁ、いいんだ。それにトオルは、あぁ見えて24歳だぞ?」
アレンのその言葉に、リールさんは目を見開いて驚いていた。
なんだよその反応……。
もう慣れたからいいや…。
元の世界から幾度となく繰り返された反応に虚な目になる。
「そういうことだから頼む。可能なら急いでもらえると助かるがどれくらい掛かりそうだ?」
「はい!かしこまりました。
そうですね…。急ぎたいのは山々なのですが…。」
リールさんは、少し困った顔をする。
「何か困りごとか?」
アレンが聞いた。
「アレン、リールさんの娘さんが風邪で寝込んでるんだって。
だから、あんまり無理させちゃダメだよ?
リールさんまで倒れちゃう。」
「アンナが寝込んでるのか?
じゃあ、ハンスは看病で付きっきりってとこか…?」
アンナさんが娘さんで、ハンスさんが娘婿さんかな?
アレンの問いにリールさんが頷いた。
「はい。ですのでアンナが治るまで少し時間がかかってしまいそうで…。」
「なら、あとでうちの騎士団の治療士を送る。
本当は無理はさせたくないが王様が絡んでるからな…。
すまないが頼む。」
そう言いながら、アレンは頭を下げた。
「よろしいのですか?」
「あぁ、もちろんだ!
リール達にはいつも世話になってるからな。」
アレンの申し出にリールさんは嬉しそうにしている。
「では、よろしくお願いします。このお礼は必ず!」
「いや、気にするな。
トオルのためにいい物を仕上げてくれ。
じゃあ、俺たちはこれで。」
「リールさん、よろしくお願いします!
無理はしないでくださいね?」
「はい!アレン様、トオルさん楽しみにお待ちくださいね。
次来る時は、結婚の衣装だと嬉しいです!」
なんて、言ってくる。
「あぁ、もちろんだ!」
俺が何か言う前にアレンがそう返して俺の手を引いてお店から出た。
お店から出ると、日が沈み始めていて夕焼けの空が広がっていた。
俺たちは、宿舎に向けて歩き出す。
「もう、夕暮れか。コアのところで時間を使いすぎたな。」
「ほんと、あっという間だったね…。
アレン、今日は、ありがとう!凄く楽しかった!」
「いや、すまない。
トオル、市場とか行きたかっただろ?」
残念そうな顔をしている。
確かに食材とか見てみたかったけど…。
「まぁ、ちょっと残念だけど。
でも、アレンと街を散策出来て楽しかったよ!
服もいっぱい買って貰っちゃったし…。
本当に今日はありがとう!
また来ようね!」
俺がそう言うと、アレンは嬉しそうに微笑んでくれた。
「楽しんでもらえてよかった!」
夕焼けが照らすアレンの顔は、キラキラしていて凄く綺麗でまた見惚れてしまった。
好きだなぁ…。
心から思った。
早くこの気持ちを伝えたい。
「アレン、あのさ、宿舎に戻ったら話したいことがあるんだ!」
「ん?あぁ、わかった。じゃあ、早く帰るか!」
俺たちは、足早に宿舎に戻る。
市街地から宿舎までは30分くらいかかり戻る頃にはすっかり日が沈んで夜になっていた。
街には街灯が灯り幻想的な風景が広がっている。
いい街だな。
賑やかで、平和だし、いい人も沢山いる。
俺はこの街でこれからアレンと過ごすんだ!
そう思うとこれから先の人生がとても楽しみに思えた。
宿舎に戻ると、ラインハルトが出迎えてくれた。
「おぉ、戻ってきたか!2人とも待ってたぞ!」
「ラインハルト?どうしたの?」
俺たちを待っていたラインハルトに事情を聞く。
「ヴェインがさ、朝の罰としてアレンと俺の2人で晩飯を作れって。トオルは監督で教えるだけでいいからって…。」
「な!?」
アレンは、驚いた顔で俺とラインハルトを見る。
ヴェインさんやっぱり覚えてたのか…。
今日のお礼にアレンが買ってくれたコックコートを着て料理したかったなぁ…。
でも、今料理をしたら、きっとアレンへの気持ちで魔力がダダ漏れになるだろうからよかったのかもしれない。
ヴェインさん、約束破ったら怖いだろうし…。
「ヴェインさんの命令なら仕方ないかぁ。
アレン、ラインハルト、頑張ろうね?」
2人はため息をつきながら、「「トオルが居るから大丈夫か…」」と揃えて口に出す。
ラインハルト、ヴェインさんにいいところ見せるチャンスだよ?
頑張ってね!
俺たちは、その足で厨房に向かった。
何にしようかな?
2人が出来そうな料理。
ラインハルトは、器用だからなんでも出来そうだけど、アレンは結構、脳筋なところあるからなぁ…。
「さぁ、アレン様、トオルさんに似合う生地は見つかりましたか?」
リールさんがアレンに向かって聞く。
「あぁ、これにしてくれ。」
アレンは俺には見えない様にカタログの冊子を指差してリールさんに伝えていた。
さらに、リールさんに耳打ちをしている。
耳打ちをされた彼女は、少しだけ怪訝そうな顔をして
「宜しいのですか?トオルさんにはもっと愛らしい服の方が…。」
「あぁ、いいんだ。それにトオルは、あぁ見えて24歳だぞ?」
アレンのその言葉に、リールさんは目を見開いて驚いていた。
なんだよその反応……。
もう慣れたからいいや…。
元の世界から幾度となく繰り返された反応に虚な目になる。
「そういうことだから頼む。可能なら急いでもらえると助かるがどれくらい掛かりそうだ?」
「はい!かしこまりました。
そうですね…。急ぎたいのは山々なのですが…。」
リールさんは、少し困った顔をする。
「何か困りごとか?」
アレンが聞いた。
「アレン、リールさんの娘さんが風邪で寝込んでるんだって。
だから、あんまり無理させちゃダメだよ?
リールさんまで倒れちゃう。」
「アンナが寝込んでるのか?
じゃあ、ハンスは看病で付きっきりってとこか…?」
アンナさんが娘さんで、ハンスさんが娘婿さんかな?
アレンの問いにリールさんが頷いた。
「はい。ですのでアンナが治るまで少し時間がかかってしまいそうで…。」
「なら、あとでうちの騎士団の治療士を送る。
本当は無理はさせたくないが王様が絡んでるからな…。
すまないが頼む。」
そう言いながら、アレンは頭を下げた。
「よろしいのですか?」
「あぁ、もちろんだ!
リール達にはいつも世話になってるからな。」
アレンの申し出にリールさんは嬉しそうにしている。
「では、よろしくお願いします。このお礼は必ず!」
「いや、気にするな。
トオルのためにいい物を仕上げてくれ。
じゃあ、俺たちはこれで。」
「リールさん、よろしくお願いします!
無理はしないでくださいね?」
「はい!アレン様、トオルさん楽しみにお待ちくださいね。
次来る時は、結婚の衣装だと嬉しいです!」
なんて、言ってくる。
「あぁ、もちろんだ!」
俺が何か言う前にアレンがそう返して俺の手を引いてお店から出た。
お店から出ると、日が沈み始めていて夕焼けの空が広がっていた。
俺たちは、宿舎に向けて歩き出す。
「もう、夕暮れか。コアのところで時間を使いすぎたな。」
「ほんと、あっという間だったね…。
アレン、今日は、ありがとう!凄く楽しかった!」
「いや、すまない。
トオル、市場とか行きたかっただろ?」
残念そうな顔をしている。
確かに食材とか見てみたかったけど…。
「まぁ、ちょっと残念だけど。
でも、アレンと街を散策出来て楽しかったよ!
服もいっぱい買って貰っちゃったし…。
本当に今日はありがとう!
また来ようね!」
俺がそう言うと、アレンは嬉しそうに微笑んでくれた。
「楽しんでもらえてよかった!」
夕焼けが照らすアレンの顔は、キラキラしていて凄く綺麗でまた見惚れてしまった。
好きだなぁ…。
心から思った。
早くこの気持ちを伝えたい。
「アレン、あのさ、宿舎に戻ったら話したいことがあるんだ!」
「ん?あぁ、わかった。じゃあ、早く帰るか!」
俺たちは、足早に宿舎に戻る。
市街地から宿舎までは30分くらいかかり戻る頃にはすっかり日が沈んで夜になっていた。
街には街灯が灯り幻想的な風景が広がっている。
いい街だな。
賑やかで、平和だし、いい人も沢山いる。
俺はこの街でこれからアレンと過ごすんだ!
そう思うとこれから先の人生がとても楽しみに思えた。
宿舎に戻ると、ラインハルトが出迎えてくれた。
「おぉ、戻ってきたか!2人とも待ってたぞ!」
「ラインハルト?どうしたの?」
俺たちを待っていたラインハルトに事情を聞く。
「ヴェインがさ、朝の罰としてアレンと俺の2人で晩飯を作れって。トオルは監督で教えるだけでいいからって…。」
「な!?」
アレンは、驚いた顔で俺とラインハルトを見る。
ヴェインさんやっぱり覚えてたのか…。
今日のお礼にアレンが買ってくれたコックコートを着て料理したかったなぁ…。
でも、今料理をしたら、きっとアレンへの気持ちで魔力がダダ漏れになるだろうからよかったのかもしれない。
ヴェインさん、約束破ったら怖いだろうし…。
「ヴェインさんの命令なら仕方ないかぁ。
アレン、ラインハルト、頑張ろうね?」
2人はため息をつきながら、「「トオルが居るから大丈夫か…」」と揃えて口に出す。
ラインハルト、ヴェインさんにいいところ見せるチャンスだよ?
頑張ってね!
俺たちは、その足で厨房に向かった。
何にしようかな?
2人が出来そうな料理。
ラインハルトは、器用だからなんでも出来そうだけど、アレンは結構、脳筋なところあるからなぁ…。
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