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本編
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♦♦♦♦♦
目の前にはちょうどアレンより少し大きいくらいの、羽の生えた蛇が居た。
え?これが守護竜?
思ってたより小さい。
あ、でも、東洋の龍に見えなくもない。
角があるし、手もある。
蛇に手は無いから龍なのか?
守護竜って聞いてたからもっと西洋的なのを勝手に想像していたがそもそもこの世界では漢字なんてないから関係ないのかな?
そんなことより、何故だろう……。
この人に会ったことがある気がする。
まぁ、人では無いんだけど。
「コア、珍しく小さいじゃないか。どうしたんだ?」
アレンが守護竜様に向かって問いかけている。
ん?いつもはもっと大きいってこと?
「あぁ、いつもの大きさだと、そっちの小さい子が怖がるかと思ってな。」
そう言って守護竜様は、俺を見た。
何故か、凄く懐かしむような表情だ。
「良く来た。客人よ。
私は、この国を守護する竜種。
ケツァルコアトルと言う。
お主をずっと待っていた。そんな気がする。名を聞かせてはくれぬか?」
俺をずっと待っていた?
どういうことだろうか?
「初めまして?ですよね?
トオルって言います。
俺をずっと待っていた。ってどういう事ですか?」
「おい、コア。
トオルをずっと待っていたってどういうことだ?
お前の探し物はトオルで合ってたのか?」
アレンは、守護竜様こと、ケツァルコアトル様に怪訝そうな顔で問いかけた。
「アレン、まぁ、待て。順を追って話そう。
トオルも、私にはアレンのように話してくれていい。是非、コアと呼んでくれ。」
ケツァルコアトル様こと、コア様は気さくにそう言ってくれた。
正直、名前が長いから助かる。
ケツァルコアトルと言えば向こうの世界の神様の名前だったような……。
詳しくは知らないが前に読んだファンタジー小説に出てきた、太陽神とか、平和の神とか、知恵の神とかじゃなかったかな?
諸説あるとか書いてあった気がする。
あとは、風の神とか、農耕や水の神とか……。
いや、今考えたら幅が広すぎる神様だな……。
「ありがとうございます。
では、コア様と呼ばせて貰います。
それで、俺をこの世界に連れてきたのはコア様なんですか?」
コア様に1番気になっていることを聞いてみた。
「私では無い。いや、ある意味は私であるとも言えるか。」
「コア、意味がわからんぞ?
トオル、コアは、たまに意味がわからないことを言うんだ……。」
アレンは、コア様の言葉に文句を言いながら俺を見た。
「アレン、だから順を追ってと言っただろう。まぁ、立ち話もなんだから茶でも飲みながら話そう。」
コア様がそう言うと、彼の全身が光り、次の瞬間には若い男性の姿に変わる。
20代前半くらいだろうか?
黒髪で背は俺とアレンのちょうど中間あたり。
顔立ちは、日本人みたいな顔だった。
あれ?なんだか、見たことがあるような……。
いや、わからない…。
コア様は、柏手を1回鳴らすとその場にお茶とお茶菓子が乗った机と椅子が現れる。
魔法かな?凄い……。
「さぁ、お前達もかけろ。」
先に席に着きながら俺たちに催促した。
アレンに促されて座る。
え?このお茶緑茶?
お菓子は煎餅と饅頭だった。
「あの…。」
コア様を見るとニッコリ笑いながらお茶を注いでくれた。
「さぁ、飲め。私が好きなお菓子とお茶だ。アレンにも初めて見せるな?」
「あぁ、なんだこれ?珍しい菓子だな。」
アレンは、お茶と饅頭に興味津々だった。
「あの……コア様。なんで和菓子に日本茶なんですか?」
思い切って聞いてみる。
「あぁ、やはりこれはトオルの故郷の食べ物なんだな。」
コア様は、何故か懐かしむような表情でそんなことを呟いた。
「これは、トオルの故郷の物なのか?
なんでそんなものが?
それにしてもこれ美味いな……。」
アレンは、饅頭を食べながらそう言った。
相変わらずアレンは甘党なんだな……。
状況が飲み込めず、とりあえずそんなことを思った。
「いやいや、混乱させてしまってすまない。
そうだな……。何から話すべきか。
トオル、私には2つ魂がある。いや、あった。
この世に生まれて早1000年は経った。
生まれた時からずっと魂が2つあったのだ。」
魂が2つ?
どういうことだろうか?
意味がわからない。
アレンをチラと見るがアレンも理解してないらしくお茶を飲んでいる。
「まぁ、意味がわからんよな?
もう1つの魂は、異界の人間の魂だった。
その者はな、死んだ時に次の転生を拒否したのだ。
代わりに神に望んだ。大切な人を助けたいと。
その代わりに今後の生は要らないと宣ったのだ。」
異界?もしかして……。
「異界の人間?、俺の世界の人ですか?
あれ?でも、いた。ってことは今は居ないんですか?」
「あぁ、そうだ。トオルと同じ日本人だ。
今の私の姿はその者の若い頃の姿だな。
そして今は居ない。いや、その言い方は正確では無いな。
トオル、竜種と言うのは元々長命だ。
だから、魂も強く、長い時間にも耐えられる。
だが、人間は違う。短命な生き物だ。
お主らの魂は、1000年と言う長い時間に耐えられず壊れていく。
だからこそ、人は輪廻転生を繰り返すのだ。
しかし、私のもう1つの魂は、それを断った。
つまり…。」
「つまり、もう、壊れてしまって居ないんですね……。」
コア様は、頷く。
そうか…。
話して見たかった。
どんな人だったんだろう…。
コア様は、口を潤す為にお茶をすする。
その所作はまるで日本人そのものだった。
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