51 / 196
本編
29
しおりを挟む「じゃあ、次は俺たちのご飯だな!
なに作るんだ?」
ラインハルトが聞いてくる。
「うん。んーどうしよう?
カイルくんは何が好き?」
「え?僕も一緒に食べるんですか!?」
「もちろん!」
ラインハルトを見ると同じく「当たり前だ」って頷いてた。
「皆様と食事なんて、緊張しますよ……。
うぅ……強いて言うなら卵が好きです......。」
俺たちが逃がしてくれないということを悟ったのか、観念して好きな食べ物を教えてくれた。
「ラインハルトは?」
「俺は、ジャガイモを使ったものならなんでもいいよ?」
それはヴェインさんの好きな物じゃん。
「それも作るけど、ラインハルトの好きな物だよ。」
「んー、俺も卵は好きかな。
とろとろな食感が特に。」
あぁ、そういえば昨日の焼き立てキッシュのトロトロ感にハマってたもんなぁ。
「じゃあ、卵料理に決定だね。
あ、エッグベネディクトにしようかな。あとは、ジャガイモのガレットにしよう。」
「また、名前じゃ全くわからない料理だなぁ。
どんな料理なんだ?」
ラインハルトが聞いてくる。
カイルくんも頭にはてなマークを浮かべながらこちらをみている。
「エッグベネディクトは、パンの上に燻製肉と半熟卵を乗せて卵黄とバターで作ったソースをかけた料理かな。
今回はパンケーキで作るけど。
ガレットは、元々薄く焼いたって意味だから、ジャガイモを細長く切って薄く焼いた料理。カリカリ、中はもちもちで美味しいんだ。」
「ほぅ?あんまりイメージ湧かないけどトオルが作るなら上手いんだろうな?」
「パンケーキってなんですか?ケーキ?」
カイルくんがケーキと聞いて目を輝かせている。可愛いなぁ......。
「カイルくん、ケーキ好きなんだ?
今回作るのは、んーなんていうんだろ?
お菓子のケーキとは、また別で食事用にも出来るケーキかな?」
「そうなんですか......。」
あ、やばい、天使を落ち込ませてしまった!
尻尾と耳があったら絶対垂れ下がってるよ....
..。
「ケーキなら今度、作ってあげるから!」
「本当ですか?」
カイルくんが喜んでくれた。
なんだろう、このアレンとはまた別の、守りたいその笑顔!って感じの気持ち。
あ、これが父性ってやつかな。
「トオル、カイルに母性本能全開だな!」
ニヤニヤしながらラインハルトが言ってくる。
うるさいやい、俺は男だ!
気を取り直して料理を再開だ。
まずは、ジャガイモの皮を剥いて千切りにする。それをボウルに移し軽く塩を振って置いておく。ガレットの準備は完了だ。
「おぉ、器用なもんだな?
そんなに細く切れるのか?」
「まぁ、慣れだよ。
俺なんてまだまだ、下手だけどね。
ほら、大きさがまだ、まばらじゃん?」
「いや、よくわからんが......。」
指よりも舌の感覚は繊細だから手を抜いたら意外に分かっちゃうもんなんだよなぁ。
次はパンケーキだ。
ベーキングパウダーはないだろうから、シフォンケーキの作り方を応用して作るか。
卵を卵黄と卵白に分けて別々のボウルに入れる。
卵白にちょっとでも卵黄とかの不純物が入っちゃうと泡立ちが悪くなるから注意しないと。
卵黄を解きほぐして砂糖と塩をいれて白くなるまで泡立てる。
泡立ったら牛乳、油を入れてムラなく合わせ、2回ふるった薄力粉と強力粉合わせたものを2~3回に分けて入れていく。
混ぜすぎるとふわふわな生地にならないから注意だ。
これは、カイルくんとラインハルトがやってくれた。
俺は、その間にメレンゲを立てる。
下に氷水を入れたボウルを用意して冷やしながら角が立つまでしっかり泡立てる。
メレンゲを卵黄のボウルに2~3回に分けて泡を潰さないように優しく手早く合わせていく。
これで生地の完成だ。
フライパンに油を引いて焼いていく。
一度熱したフライパンを濡れタオルの上に乗せてフライパン全体の温度を均一にしてからもう一度温めて焼くとムラなく全体がきれいなきつね色のパンケーキに仕上がる。
毎回やるのは手間がかかるが、やっぱり見た目も大事な要素だからな……。
これでパンケーキは、完成だ。
2人が涎を垂らしてる。
「1枚味見する?」
「いいんですか?」
「いいのか?」
「もちろん!味見は作ってる人の特権だからね。」
1枚を3等分にして食べる。
ふわふわでほのかに甘い生地はどこか懐かしさを感じる。
「美味しい......。パンとは違ってやわらくてふわふわもちもちで...。」
「おぉ、これうまいな!ボソボソのパンじゃなくて毎日これが食いたい!」
2人が顔を見合わせながら喜んでいて、同じ顔をしているものだからついつい吹き出してしまった。
ラインハルトがボソッと「俺、もうここに住もうかな...。」って言ってた。
公爵家の次男それでいいのか?
まぁ、ヴェインさんもいるからありなのかな?
「でもなぁ、卵を泡立てるのが大変だよなぁ......。」
ラインハルトが俺に言ってくる。
「たしかに、いっぱい作るのは厳しそうだね。泡立て機とか欲しいなぁ。」
「泡立て機ってなんですか?」
カイルくんが聞いてくる。
俺は、ホイッパーを手に取りカイルくんに説明する。
「俺の故郷にあった物でね、このホイッパーが勝手に動いてくれるから簡単にメレンゲが作れるんだよ。」
「すごい!そんなのあったらパンケーキ食べ放題じゃないですか!」
はしゃぐカイルくんは可愛かった。
ラインハルトも感心したように話を聞いている。
ちなみに、ラインハルトは、俺が渡り人だって知ってるから深くは聞いてこなかった。
機械って偉大だよなぁ。
次はポーチドエッグとオランデーズソースを作っていく。
沸かしといたお湯にビネガーをいれてスプーンでかき混ぜ渦を作っていく。
割って置いた卵を1つ入れて卵白がある程度固まるまで待つ。
ちなみに、鍋のお湯はそれなりに量が無いと鍋底に卵がくっついて割れてしまう。
もう1つ別の鍋にお湯を沸かして、完成した卵をそのお湯に通してビネガーの味を洗い流す。
それを繰り返していくつか作った。
アレンは3つくらい食べるかな?
その間にラインハルトとカイルくんにはサラダ用のレタスをちぎって水に晒して置いてもらい、飾り用にパプリカをスライスしといて貰った。
次はオランデーズソースを作る。
卵黄をボールに入れて50~60度ぐらいのお湯に浮かべて温めながら溶かしバターの上澄みを少しずつ加えて混ぜていく。
温度が高すぎると卵黄が固まってしまうから注意が必要だ。
全体がもったりするまでひたすら混ぜていく。
うん!いい感じ。
レモン汁を加え塩で調味する。
そう!ついに見つけたんだ!
ブラックペッパーもどき!
ライユと言う桃くらいの大きさの実だ。
この大きさで胡椒の味とは予想外だった。
そのライユもほんの少しだけ加える。
うん、味が引き締まって美味しい。
あとは、油を引いたフライパンでガレットと燻製肉を焼いたら完成だ………。
あ、サラダのドレッシング忘れてた。
オレンジの実と皮を切り細く刻む。
ボウルへ入れたら、ビネガーとオイル、塩、ライユで味をつけて簡単オレンジヴィネグレットの完成だ。
アレン、生野菜は、まだ厳しいかもしれないけど、オレンジは好きらしいから食べてくれるといいなぁ…。
と、アレンの笑顔を思い浮かべながら作る。
準備が整うと、ラインハルトが「俺が呼ぶよ」って言ってくれた。
ラインハルトの手から翠色の光が出て2羽の鳥になって飛んでいく。
「え?すごい!魔法?」
「あぁ、風魔法の応用でな。声を届ける魔法なんだ。」
「いいなぁ。俺も魔法使ってみたい。」
ついつい呟く。
すると、ラインハルトが衝撃なことをいい出した。
「すぐ使えるようになると思うぞ?
料理してる時ずっと魔力が漏れ出てたから魔力自体はあるんだろうし。」
「!?え?それほんと?」
自分の掌を見ながら聞いてみる。
「あぁ、自分で気づかなかったのか?
そうだな、1番強かったときは、ドレッシングを作ってた時かな。
属性まではわからなかったけどな。
何考えてたんだ?」
ドレッシング?
アレンが食べてくれたらいいなぁって…。
「!?……い、いや、2人遅いなぁと思って……。」
「ほぅ?まぁ、アレンにはだまっといてやるよ。」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
な?バレてる?
言い返そうとした所で2羽の鳥が戻ってきた。
「すぐ来るってさ。」って言われてしまい料理の仕上げをする羽目になった。
ラインハルト覚えてろよ?
♦♦♦♦♦
いつも応援ありがとうこざいます。
おかげ様で、ついにお気に入り4000を突破致しました!
本当にありがとうこざいます。
4000突破記念の企画のアンケートをTwitterにて実施中です。
①番外編
②1日の更新話数増加
③キャラへの質問コーナー
④その他
の選択肢を用意しております。
作者プロフィールよりTwitterに飛べますので是非ご参加ください。
アンケートは、12日の16時頃〆切です。
もちろん、こちらからの感想でも大丈夫です。
是非よろしくお願いいたしますm(_ _)m
26
お気に入りに追加
5,565
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる