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本編

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厨房に着くと、何故かラインハルトさんが居た。

「あれ?ラインハルトさん、おはよう。
帰ったんじゃなかったの?」

「おぅ、トオルおはよう!
俺のことは呼び捨てでいいぞ?
カイルもおはような。」

そう言ってラインハルトさんはカイルくんの頭を撫で撫でしてる。

え?羨ましい。
俺もカイルくんを撫で撫でしたい。

「トオル?なんだよ?その目は?」

なんか、ラインハルトさん昨日で仲良くなったとはいえ、容赦なくなった気がする...。

まぁ、友達って感じでこっちの方がいいけど。

「いや、カイルくんと仲良いんだなって。
あと、俺もカイルくん撫で撫でしたい。」


「あぁ、孤児院に最近までよく行ってたからな。あと、撫で撫でしたいは、俺じゃなくてカイルに聞けよ。」

カイルくんに目を向けるとさっとラインハルトさんの後ろに隠れてしまった。

ガーン......。

天使に嫌われてしまった。

「ラインハルトだけずるいよぉ。」

本当にラインハルトだけずるい。
あ、呼び捨てにしちゃった。
まぁ、ラインハルトだからいいか笑

「いや、ち、違うんです。......トオルさんに撫でられるのは恥ずかしいから。」


「だってよ?
カイルは、元々人見知りなんだよ?
俺だって仲良くなるのに時間かかったんだぜ?」
落ち込んでる俺を慰めながらラインハルトが教えてくれる。

「そうなんだ?」

「あ、トオル今からご飯作るんだろ?
カイルの分も作れよ!もちろん俺も食べる!
ただ、カイル今日朝食の当番らしいから昨日みたいにスープ代わりに作ってやったら?」

ラインハルトのそんな言葉にカイルくんがびっくりして顔を出す。

「え?そんな悪いですよ。」


「トオルいいだろ?
カイルは、俺と一緒にトオルを手伝おうぜ?」

俺が魔力を扱えないことを知ってるラインハルトは、そう提案してくれた。

それなら助かる。

「カイルくんが手伝ってくれるなら嬉しいなぁ。お願い!」

「え?わかりました....。」


あ、ちなみにラインハルトは、昨日アレンと一緒に呑んでて飲みすぎて潰れて泊まったらしい。

いいなぁ。俺も呑みたかった。


「で?今日は何作るんだ?
ヴェインが好きそうな料理教えてくれるんだろ?アレンとヴェインは、鍛錬してから王宮に行くみたいだぞ?2~3時間で戻ると思う。」

2~3時間かぁ。じゃあ、それなりに時間かけたものをアレンに食べてもらえるなぁ。
何にしよう......。

「あぁ、それが目的か。
ちょっと待ってね。
とりあえずスープから作るから。
ミネストローネにしようかな。」

そこでふと思い出してカイルくんに聞いてみる。

「あ、そういえば、昨日のスープどうだった?量足りた?」

「あ、あのスープ、トオルさんが作ってくれたんですね!?
凄く美味しかったです!
あんな美味しいの生まれて初めて食べました!
取り合いになっちゃってすごかったんですよ?」
カイルくんは、昨日の様子を思い出してからクスクス笑って教えてくれた。

取り合いになっちゃったかぁ。
料理人としては嬉しいが、1食100ccくらい想定して作ったんだけど、読みが甘いって師匠に怒られそう.....。


「そっかぁ、今日はもっといっぱいつくるね!」

そういうと、俺は、ニンニク、トマト、玉ねぎ、にんじんもどき、セロリに似た香りの野菜、燻製肉をカイルくんと大量に運んでくる。

ちなみに、にんじんもどきは、紫色をしている。コルって言うんだって。
まぁ、ようは紫人参だ。
セロリもどきは、ルバーブみたいな奴でセールって名前らしい。


とりあえず、玉ねぎは先端と芯を取り外し大きめのボールにはった水につけとく。

「トオルさん?なにしてるんですか?」
カイルが首を傾げながら聞いてくる。

え?なにその仕草可愛んだけど...。
こんな弟欲しかった...。

「あぁ、玉ねぎの皮って剥くの大変じゃん?
大量に剥くときはとりあえず先端と芯を外して水につけとくんだ。
そうしたら皮がふやけて簡単に剥けるから時間短縮できるんだよ。」

カイルくんとラインハルトが「へぇー!」って納得している。

「いいこと聞きました!
いつも、玉ねぎの皮剥くのに時間かかってみんなで押し付けあってたんです。」

その時の様子を思い出してか、クスクス笑いながらカイルくんが言う。

コル(紫人参)は、ピーラーなんてものがないからスプーンでこすって2人に皮を剥いてもらう。

スプーンで軽く撫でると皮が薄く剥けるんだ。
本来は、生姜とかを剥く時に使うんだけどね。

セール(セロリもどき)は包丁で繊維に沿って引っ張ると皮が剥ける。
柔らかい物なら皮付きで大丈夫だけど大きく育った物は口に繊維が残ってしまうからはずした方がいい。
中の太い繊維も包丁で丁寧に外していく。

葉は、煮込み料理に使うと全体の色が悪くなってしまうから使わない。
その代わり、炒め物などにおすすめだ。
他にも、塩茹でして水気をきってからオイルと合わせて潰して濾したセロリオイルは、魚料理と相性がいい。

魚も食べたいなぁ…。

玉ねぎも皮を剥く。
1箇所に切れ目を入れて包丁を使って引っ張ると、くるんと綺麗に剥けて気持ちいい。
この作業が地味に好きなんだよなぁ。

全ての野菜と燻製肉を同じ大きさの賽の目切っていく。
形と大きさを揃えることで食べた時に全ての食材の味が口の中に広がるようにするためだ。
それに、揃ってると見た目も綺麗だ!

ニンニクの皮を剥いて細かく刻む。
ニンニクは、水につけて皮を剥いてしまうと香りが飛んでしまうからおすすめはしない。

ひと欠片ずつに分けて、根元を落としてから包丁の腹で潰すと皮が簡単に外れる。
芽はえぐみがあり、さらに焦げやすいので外した方が無難だ。

大きい2つの鍋にオイルとニンニクを入れて香りが出るまで炒めていく。

そうえば、昔、師匠にニンニクを入れてからオイルを入れたら怒られたなぁ。

基本的に、「火にかけるときは、油を入れてから食材を入れないと火の入りにムラができるだろ!」って。

師匠、元気かな?
仕事休んで怒ってないかな......。

……いまは、料理に集中しないと!

ニンニクがきつね色になったら燻製肉を入れて燻製の香りを引き出してあげる。

次に玉ねぎを加えて、透き通るまで炒めたら、コル(紫人参)、セール(セロリ)の順番に加え、さらに炒めていく。

本当は豆とかあったらよかったんだけど見つからなかったから諦めた。

水を加えて、ひと煮立ちさせる。
沸いたら、鍋肌が揺らぐくらいの火加減で煮込む。
グツグツ沸かしてしまうと具材同士がぶつかって崩れてしまうし、濁ったスープになってしまうからな。

その間に別に沸かしていた鍋に十字に切り込みを入れたトマトを入れ、すぐに氷水で冷やして皮を剥いていく。

「それは?」
ラインハルトが聞いてくる。

「これは、トマトの皮を湯剥きしてるんだ。切り込みを入れてお湯に通してすぐに氷水で冷やすとこんなふうに簡単に剥けるんだ。
皮があると、口に残るから出来れば外した方が美味しいから。」

「ほぉ。本当に丁寧に作るんだなぁ。」

「まぁ、そういうお仕事だったからね。」

向いたトマトはヘタをとってコンカッセ(荒みじん)にしていく。
全て切ったら、鍋で炒めて水分を飛ばしていく。簡易トマトペーストだ。

それをスープの鍋に加え、また煮込んでいく。トマトと相性のいい、タイム、オレガノさらにローリエを加えるのも忘れない。

もちろん丁寧にアクを取っていく。

昨日は、見落としていたが結構知ってるハーブがあった。
ちなみに、ローリエは、加える前に軽く火で炙っておくとより香りがたつ。

あとは、野菜の味が出るまでしっかりと煮込んで塩で味を整えれば完成だ。

コンソメとかのスープストックが欲しいけどないからなぁ......。

働き始めたら各スープストックを作るところから始めよう。
楽しみだなぁ。

「さてと、スープはこんな感じかな。」

さて、次は俺たちのご飯だな。

何を作ろう?


♦♦♦♦♦

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