料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

閑話2 騎士団長は料理人と話したい

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夕食の時、トオルに「あとでお前の部屋行くからちゃんと俺の話覚えておけよ?」
と言ったにも関わらず、トオルが部屋に行く時にラインハルトに執務室へと連行された。

まぁ、ヴェインがトオルと話したそうだったから少しだけ時間をやろうと思った。

同じ孤児院に行ってからずっと俺に世話を焼くようになった。
まるで弟扱い……。
あれ?あいつ、確か弟、居なかったか?
何故だか、その事を考えると頭痛がした。
頭にモヤがかかったように出てこない。

まぁ、いいか……。

とりあえず、ヴェインにはいろいろ感謝はしているがな。

そんなヴェインがトオルと話したいことなんて100%俺のことだろう。

あとでトオルに聞けばいいかと思っていた。

思っていたのに……。
なんでこんな時間まで俺は執務室に居るんだ…。
1時間くらいって言ったのにもう深夜だぞ?

いや、実際、書類自体は1時間で終わったんだ。
なのに……。

俺の行く手を阻んでいる目の前の緑髪の奴を見る。

「ラインハルトそろそろ、俺はトオルに会いたいんだが?」

「なんでだよ。久しぶりにあったんだから俺の話聞けよ……。」

書類仕事が終わってすぐに
「話を聞けよ」と自分で持って来たらしい俺の大好物の酒をグラスに注いできた。

ラインハルトに会ったのは俺の騎士団長の就任式ぶりだったこともあり軽く付き合ってやった。

「お前?酒弱かったっけ?さっきからずっと聞いてるじゃねぇかよ。」

「酔ってないよ!
そんなことよりヴェインは、何時になったら俺に振り向いてくれるんだよ……。
もう、15年だぞ?……。」

「知るかよ。その話何回目だよ……。」

「いいよなぁ、アレンは……。
あんなに俺の目の前で見せつけるようにイチャイチャしやがって……。」

「イチャイチャはしてねぇよ。
むしろ、俺だってしてえよ……。」

「あぁ、お前片想いだもんな。」

「うるせぇ。だいたい、お前ヴェインに告白したのかよ。」

「したよ!」
え?ラインハルト、いつの間に告白したんだよ?

「は?聞いてねぇぞ?」

「言ってねぇもん。なんて返されたと思う?」

「は?その様子じゃ振られたって訳じゃないんだろ?」

「最初は、ドラゴンを倒すまで何も考えられない。って。
今は、ドラゴンを倒したのに告白すらさせてくれないんだよ…。」

はぁ、めんどくせぇ。
早くトオルに触りてぇ……。
あ、いや、エロい意味じゃない。
いや、そりゃしてぇけど……。

「それ、もう、無理なんじゃねぇか?
お前、見合い全部断ってんだろ?
そろそろ1個くらい受けろよ。」

「お前が言うな!
アレンだって全部断ってる癖に。
お前は、こっち側の人間だっただろ。
なのにいつの間にかあんなに可愛い子連れてきやがって……。」

確かに俺も全部見合いを断ってきた。
まぁ、俺の場合は、家族を持つつもりが無かっただけなんだが…。
失うなら無い方がいいと拒絶してきた。

だが、トオルに出会ってしまった。
あいつを護ってやりたいと思ってしまった。


「はぁ、わかったよ。
じゃあ、やっぱり見合い受けろよ。
ヴェインがお前に気があるならなんか反応するんじゃねぇの?」

俺が見る限り、ヴェインは、ラインハルトのことが好きだと思う。
だが、何故かあいつの中でそれを抑えてるものがある。

そんな気がした。

「おい、ラインハルト?聞いてんのか?」

「…………。」

「嘘だろ……。寝やがった………。
ヴェインに丸投げするか…。元はと言えばあいつのせいだしな。」


コンコンッ

タイミング良くドアが開きヴェインが執務室に入ってくる。あれ?なんか目の周り赤くないか?

「わりぃ、遅くなって………?
どういう状況だ?」

「いや、それよりもお前がどうしたんだよ?トオルとなんかあったのか?」

「いや、何でもないんだ。
なんだ?ラインハルト寝ちゃったのか?」

こいつは、こういう時に話したくないことは何をしても話さない。
いや、話せないのほうが正しいのか?
まるで、自分を戒めてるみたいに……。

まぁ、いいか。
とりあえずトオルに会いに行こう。

「ラインハルトは任せる。
俺はトオルと話してくる。」

「あ、あぁ、わかった。
なぁ、アレン。」

部屋から出ようとした時にヴェインに呼び止められる。

「ん?なんだ?」

「トオルの料理は美味かったか?」

「あぁ、当たり前だろ。」



「なぁ、お前の幸せってなんだ?」

唐突だったがあまりにも真剣に聞くもんだから答えてやる。


「トオルに出逢えたことだよ。
そして、俺がこれからトオルを幸せにしてやるんだ。それが俺の幸せだ。」

ヴェインは、ふふっと笑った。


「なんだよ、せっかく真面目に答えてやったのに……。
俺の幸せなんて気にしてねぇでさっさとそこのやつを幸せにしてやれよ。じゃあな。」

「おい、アレン。」

「んだよ。」

「トオルの部屋行くんだろ?お前の部屋の真下だ。」

あ、トオルの部屋知らなかった……。

「悪い。ありがとな。」

「俺こそ、ありがとう。」
ん?何に対してのありがとうだ?
まぁ、いいか。



急いでトオルの部屋に向かう。

部屋の明かりまだついていた。
ノックをするが返事がない。
何かあったのか?

急いで部屋に入ると

「……嘘だろ。」

寝ているトオルの姿があった。
疲れて着替えずに寝てしまったのだろう。
見習いの普段着は寝るには窮屈そうに見えた。

「はぁ、ラインハルトのやつ明日絶対殴る。」
そう決意しながらトオルの頭を撫でた。

「……着替えさせてやるか。」
決してやましい気持ちはない。
本当にない。


ヴェインが用意していたであろう、寝衣を取り出しトオルのシャツのボタンを外していく。

トオルの素肌が晒される。
うわっ……エロっ……。

ダメだ俺。無心になれ。

上を脱がして寝衣に袖を通させ、またボタンをしめる。
素肌がかくれてしまい少しだけ残念な気持ちになった。

問題は……。下か。

止めてあるベルトに手をかける。

凄く悪いことをしてる気がしてきた。
平常心平常心。

部屋にベルトを外す音が響き、何だか生々しい。
そして、トオルのズボンに手をかけずり下ろす。

目の前には、パンツ姿のトオルが………。

ついつい、生唾を飲み込み凝視してしまう。

1度深呼吸をして襲いたい気持ちを無理矢理抑え込んだ。

そうして、やっと着替えさせ終わったときにトオルが寝言を放った。

「う………ううん……ア……レン。」

は?寝言で俺の名前呼ぶとか可愛すぎだろ。
このまま襲うぞ?むしろ誘ってんのか?



本当に寝てんのかよ………。

キスくらいならしてもいいよな?
トオルのおでこにキスを落とす。

「唇は起きてる時に貰うからな。もちろん、それ以上も………。」

そう呟くとトオルに毛布をかけ明かりを決して部屋を出た。



俺、本当によく耐えたな………。
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