料理人は騎士団長に食べさせたい

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本編

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茹で上がるのを待つ間に、バターと薄力粉、強力粉、生乳、卵を使って練らないように手早くあわせてパート・シュクレを作る。

ようは、タルト生地だが今回は砂糖は入れずに少し塩を入れてキッシュの土台にする。

練りながら作ってしまうと小麦粉からグルテンが出てあのホロホロ食感にならないから注意しなくては行けない。
それと、使う食材はよく冷えたものを使うのもポイントだ。

本当は1時間くらい寝かせたいが流石に時間もないから今日は諦める。
ちょうどいい大きさの器に伸ばした生地をあわせてタルト生地の出来上がりだ。

1度冷凍室に入れて生地を締める。

「今から焼くんだろ?なんで冷やすんだ?」
ヴェインさんが聞いてくる。

「バターの多い生地はオーブンに入れて焼き上がる前に、油が出すぎて食感悪くなっちゃったり、形が崩れちゃったりすんだ。
だから、焼く前に冷やした方が綺麗に仕上がるんだ。
本当は1回生地を空焼きしてからアパレイユを入れたいけど今日は時間ないから省略……。」

「ほう……。」
ヴェインさん絶対分かってない気がする…。

あ、アレンさんに「分かってないだろ。」って突っ込まれてる。
はいはい、そこ、喧嘩しない。
見習い騎士の子たちが怯えてるから。


生地が締まるまでの間に、アパレイユと言われる中に入れる具材を用意する。


燻製肉と、卵、ほうれん草もどき、生乳を使ってキッシュロレーヌもどきにしよう。
チーズが無いのが歯がゆいが、バターでしっかり炒めてコクを足してあげればいいか。

ほうれん草とベーコンを交互に重ねて作るお店もあるけど、俺は全部混ざってる方が好きだ。

バターで炒めた燻製肉とほうれん草もどきを合わせておいた卵と生乳のボウルに投入。

全体をあわせて塩で味を整える。
さっきの生地に流し込みオーブンへ。

「次は…。マッシュポテトとニョッキかな。」


そろそろ、野菜に火が通った頃だろう。

じゃがいもは、ザルでこして半分は鍋に戻し、もう一度火にかけて水気を飛ばしながら潰していく。

「また火にかけるのか?」

アレンさんが聞いてくる。

「うん。水気を飛ばした方がじゃがいもの味が濃くなって美味しくなるんだ。」

いつの間にか騎士見習いの子達も興味津々で集まっていた。
周りを囲まれながら料理を作るのかぁ……。


ある程度潰れたら、バター、塩、生乳をあわせて手早く混ぜる。
混ぜすぎるとデンプンが出すぎて餅になっちゃうって師匠に怒られたなぁ…。



冷めないように上に布をかぶせてオーブンの上に置いておく。



残った半分は、ボウルに移して潰し強力粉と混ぜてニョッキにする。
こっちは、しっかりと練ってグルテンとデンプンを出してモチモチに仕上げる。
「やりたい!」といって練るのはアレンさんがやってくれた。

あれ?これ、俺の試験じゃなかったっけ?

「こっちは、火にかけないんだな。」

「うん。こっちは、強力粉と混ぜるからある程度水分ないと纏まらないし、ソースで食べるから。」

「キョウリキコ?なんだそれ?」

「小麦粉の種類だよ。薄力、中力、強力って3種類あって料理によって使い分けるんだよ。」


「ほぉ…料理って奥が深いんだな……。」
アレンさんがしみじみ言ってくる。


あのボソボソのパンは嫌だからこれが今日の主食だ。
食べやすい大きさに丸めて塩を入れたお湯で茹でていく。

「また茹でるのか?」

「うん、強力粉に火を通さないと行けないから。」

「手間がかかるんだな…。」
アレンさんのお腹がなっている。

急がなくては。

ソースは燻製肉と、トマトを賽の目に切って油で炒めて煮詰めていく。

煮詰まったらアレンさんが嫌いなジョーヌの皮をむいて賽の目に切り、あわせる。

ジョーヌを入れた瞬間、アレンさんがこの世の終わりみたいな顔をしたが無視だ。

塩で味を整える。
ジョーヌとトマトの色が混ざって綺麗なオレンジ色のソースが出来た。バターを加えて溶かしたら茹で上がったニョッキをあわせて完成。

ヴェインさんが「味見させろ」って言うからスプーンでニョッキをすくってあーんてしたら、アレンさんが横から入って来て食べてしまった。

ガッツリ、ジョーヌ入ってたけど大丈夫かな?

「!?美味い!これ、本当にジョーヌ入ってるのか?」

「入れるとこ見てたじゃん?」

「これがジョーヌなんて信じられん……。」

見習い騎士の子達もヴェインさんもアレンさんがジョーヌ入りのニョッキを食べたのが驚きだったようだ。


煮込んだスープには、塩と生乳をあわせてクリームスープにした。

騎士見習いの子達がヨダレを垂らしている。




次はメインのポークソテーだ。
まぁ、豚のような生き物らしいけど。
ロースを切って、香草と塩でマリネする。

「トオル」

「アレン、わかってるよ。お肉いっぱいでしょ?」

「流石だ!」
アレンさんは、俺の頭を撫でてきた。


熱したフライパンに油をひき焼いていく。
美味しそうな匂いが厨房に広がる。

アレンさんがジョーヌを克服出来たみたいだし、ボウルにジョーヌのあまりとビネガー、香草、賽の目に切ったパプリカ、焼いた時に出てきた油を合わせ、塩で整える。
うん。さっぱりして美味しい。
ブラックペッパーがあれば完璧だったのに……。


ちょうどオーブンのキッシュが焼きあがった。

オーブンからキッシュを出したときに、厨房にいた全員が唾を飲んだのがわかった。

キッシュを切り分けて完成だ。


事前に温めていたお皿に4人分、ワンプレートにして盛り付けていく。
ちょうど1時間くらいで出来たかな?
やっぱり厨房が広いと料理しやすい。

「なんで皿なんて温めてたんだ?」
アレンさんが聞いてきた。

「え?だって冷たいお皿じゃ、せっかくの温かい料理が冷めちゃうじゃん?
もちろん、冷たい料理の時は冷やしたお皿使うよ?」

「そこまで考えたこと無かったな…。」

「それは、アレンがガサツワイルドなだけじゃ?」

「今、なんか悪口言わなかったか?」

「き、気のせいじゃないかな」

「いや、トオル凄いな。こんなに手際がいいなんて……。洗い物まで完璧に終わってるじゃないか。」

ヴェインさんが笑いを堪えながら褒めてくれる。

「トオル、美味しそうな匂いでもう限界だ。早く食べさせてくれ…。」
アレンさんから催促された。

「ごめん、料理楽しくて……。早く食べよ?」

ヴェインさんの指示で談話室へ運んだ。
他の騎士達にみられながらの食事は辛いだろうって。

見習い騎士の子達にお礼を言って厨房から出た。

切り分けたキッシュが余ったから騎士見習いの子たちに皆には内緒で味見していいよって言ったら凄く喜んでくれた。

「また、来てください。」って皆に言われてしまった…。


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