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本編
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紅茶とチョコレートで談笑をしていると不意にヴェインさんがたたずまいを直して座り直す。
「トオル、改めてさっきは突然怖がらせてしまってすまなかった。
俺は、騎士団の副団長をしている、ヴェイン・ブランって言う。
聞いていたと思うがアレンの幼なじみだ。
よろしく頼む。」
………え!?
副団長?
そんな偉い人に頭を下げられてどうしていいかわからなくなってしまう。
「ヴ、ヴェインさん、あ、違う、ヴェイン様、頭をあげてください。
そんな偉い人だとは知らなくて俺、いや、僕のほうこそ沢山無礼を………。
すみませんでした。
アレンも、ヴェイン様が副団長だって教えてくれてもよかったじゃなかぁ……。
昨日だってただの同僚だって言ったじゃん……。」
隣のアレンさんにジト目で文句を言ってみる。
俺の様子をみてヴェインさんは首をかしげながら
「え?アレン、もしかして言ってないのか?」
とアレンさんに問う。
アレンさんは、バツが悪そうに顔を背けた。
え?なに?
状況が理解出来なく困惑している俺にヴェインさんが爆弾を落とした。
「トオル、そいつは、本当に残念ながら、一応、書類上は俺の上司だ。」
………。
……副団長の上司?
上司、じょうし?
じょうしってなんだっけ?
思考が止まってでてこないや……。
「おーい、トオル?
大丈夫か?
アレンは、うちの騎士団の団長だ。」
だんちょう……団長!?
理解してからの行動は今までで1番早かった。
仕事のドピーク時に師匠に怒鳴られた時よりも早かった気がする。
俺は立ち上がってアレンさんから距離をとり土下座する。
「アレン様そんな偉い方だとはいざ知らず数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした。」
頭の中に俺がしたいろいろな無礼な事が走馬灯のように駆け巡る。
あ、俺、死んだわ……。
部屋を静寂が支配する。
その静寂を破ったのはアレンさんのため息だった。
やばい、呆れられた。
土下座をしている俺の目に涙が溜まっていく。
「おい、ヴェイン、なんでばらすんだよ……。
こうなるから嫌だったんだ……。」
アレンさんは立ち上がり俺に近づいて来ると、手を掴んで俺を立ち上げ、そのままひょいとお姫様だっこをしてソファーに戻る。
もちろん、俺はアレンさんの膝の上だ。
俺は現実に思考が追いつかず、されるがままになっていた。
いつの間にか流れ出していた涙をアレンさんの大きな手が優しく拭う。
「トオル、俺はお前と騎士団長とかそういうのじゃなくて、1人の人間として仲良くなりたかったんだ。意味はわかるな?」
え?意味?わかんない……。
あ、騎士団長って偉すぎて友達が居ないから友達になりたかったってこと?
ヴェインさんは、幼なじみだけど今は部下だもんな…。
「うん。」アレンさんを見上げ頷く。
そうすると、アレンさんはすごく嬉しそうな顔で笑ってくれた。
「じゃあ、俺がいいたいことわかるよな?」
優しい笑みを向けて俺の涙を拭う。
「うん、つまり友達が欲しかったんだね。
俺ももうアレンのこと大切な友達だと思ってるよ。
騎士団長だからじゃなくてアレンと仲良くなりたい。」
俺がそういうとアレンさんは何故かショックを受けたように固まる。
「大丈夫だよ。
ちゃんとこれまでと同じ態度にするから。」
「いや、トオル、俺は……「はっはっは……ひぃ……アレン、お前…はっはっはっは……いや、悪い……クスクス……」
アレンさんは意を決して何かを言おうと口を開くが、向かいのソファーに座るヴェインさんが突然吹き出して中断されてしまった。
アレンさんは凄く凄く今で見た中で1番機嫌が悪くヴェインさんを睨みつける。
うわぁ、人を殺せそうな睨みだよ。
騎士団長より暗殺ギルドのボスのほうがしっくりくるような気がする。
「ヴェイン、貴様……。」
「いや、お前…クスクス…本当にアレンか?……クスクス……あっはっはっ!
巷じゃ英雄、剣帝とか言われてるあのアレン様がなんてざまだよ……クスクス…腹痛てぇ……。」
途中まで耐えていたのに堪えきれなくなったのか目に涙が溜まるほどお腹を抑えて笑っている。
英雄?剣帝?なにそれ?
あ、そう言えばさっき街の人達が言ってた気がする。
「ねぇ、アレン。」
あ、ヴェインさんに何か文句を言おうとしてたのに遮ってしまった。
「トオル、なんだ?」
あ、不機嫌だった。
なんか、ごめん。
「英雄って何の話?剣帝って?」
あ、アレンさんの顔が引きつってる。
「なんでもない。気にするな。」
「え、でも…アレン最初雑用係って言ってたし、俺、アレンのこと何も知らないなって…。
もっと仲良くなりたいからアレンのこと知りたいなって……ダメかな?」
向かいでまたヴェインさんが吹き出していた。
アレンさんはなんとも言えない顔で
「………また今度な。」と呟いた。
「クスクス……トオル、お前、よく人たらしって言われないか?
アレン、頑張れよ。
俺は応援してるぞ。クスクス……。」
「ヴェイン、うるせぇ。」
アレンさんはまた不機嫌そうにヴェインさんを怒鳴っていた。
「失礼な、俺は人たらしなんて言われたことないですよ!」
「そうか?なら無自覚か。
気をつけろよ?
アレン、守ってやれよ。」
意味がわからず黙っておく。
「お前に言われなくてもわかってるよ。」
アレンさんは何故か力なく頷くのだった。
♦♦♦♦♦
拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます。
気ままに書いておりますので
誤字、脱字、おかしな日本語等あると思います。
ご指摘ありましたらよろしくお願いいたします。
また、感想、要望等もお待ちしております。
応援してくださる皆様へのささかやなお礼として本日は、4話更新予定です。
お楽しみください。
「トオル、改めてさっきは突然怖がらせてしまってすまなかった。
俺は、騎士団の副団長をしている、ヴェイン・ブランって言う。
聞いていたと思うがアレンの幼なじみだ。
よろしく頼む。」
………え!?
副団長?
そんな偉い人に頭を下げられてどうしていいかわからなくなってしまう。
「ヴ、ヴェインさん、あ、違う、ヴェイン様、頭をあげてください。
そんな偉い人だとは知らなくて俺、いや、僕のほうこそ沢山無礼を………。
すみませんでした。
アレンも、ヴェイン様が副団長だって教えてくれてもよかったじゃなかぁ……。
昨日だってただの同僚だって言ったじゃん……。」
隣のアレンさんにジト目で文句を言ってみる。
俺の様子をみてヴェインさんは首をかしげながら
「え?アレン、もしかして言ってないのか?」
とアレンさんに問う。
アレンさんは、バツが悪そうに顔を背けた。
え?なに?
状況が理解出来なく困惑している俺にヴェインさんが爆弾を落とした。
「トオル、そいつは、本当に残念ながら、一応、書類上は俺の上司だ。」
………。
……副団長の上司?
上司、じょうし?
じょうしってなんだっけ?
思考が止まってでてこないや……。
「おーい、トオル?
大丈夫か?
アレンは、うちの騎士団の団長だ。」
だんちょう……団長!?
理解してからの行動は今までで1番早かった。
仕事のドピーク時に師匠に怒鳴られた時よりも早かった気がする。
俺は立ち上がってアレンさんから距離をとり土下座する。
「アレン様そんな偉い方だとはいざ知らず数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした。」
頭の中に俺がしたいろいろな無礼な事が走馬灯のように駆け巡る。
あ、俺、死んだわ……。
部屋を静寂が支配する。
その静寂を破ったのはアレンさんのため息だった。
やばい、呆れられた。
土下座をしている俺の目に涙が溜まっていく。
「おい、ヴェイン、なんでばらすんだよ……。
こうなるから嫌だったんだ……。」
アレンさんは立ち上がり俺に近づいて来ると、手を掴んで俺を立ち上げ、そのままひょいとお姫様だっこをしてソファーに戻る。
もちろん、俺はアレンさんの膝の上だ。
俺は現実に思考が追いつかず、されるがままになっていた。
いつの間にか流れ出していた涙をアレンさんの大きな手が優しく拭う。
「トオル、俺はお前と騎士団長とかそういうのじゃなくて、1人の人間として仲良くなりたかったんだ。意味はわかるな?」
え?意味?わかんない……。
あ、騎士団長って偉すぎて友達が居ないから友達になりたかったってこと?
ヴェインさんは、幼なじみだけど今は部下だもんな…。
「うん。」アレンさんを見上げ頷く。
そうすると、アレンさんはすごく嬉しそうな顔で笑ってくれた。
「じゃあ、俺がいいたいことわかるよな?」
優しい笑みを向けて俺の涙を拭う。
「うん、つまり友達が欲しかったんだね。
俺ももうアレンのこと大切な友達だと思ってるよ。
騎士団長だからじゃなくてアレンと仲良くなりたい。」
俺がそういうとアレンさんは何故かショックを受けたように固まる。
「大丈夫だよ。
ちゃんとこれまでと同じ態度にするから。」
「いや、トオル、俺は……「はっはっは……ひぃ……アレン、お前…はっはっはっは……いや、悪い……クスクス……」
アレンさんは意を決して何かを言おうと口を開くが、向かいのソファーに座るヴェインさんが突然吹き出して中断されてしまった。
アレンさんは凄く凄く今で見た中で1番機嫌が悪くヴェインさんを睨みつける。
うわぁ、人を殺せそうな睨みだよ。
騎士団長より暗殺ギルドのボスのほうがしっくりくるような気がする。
「ヴェイン、貴様……。」
「いや、お前…クスクス…本当にアレンか?……クスクス……あっはっはっ!
巷じゃ英雄、剣帝とか言われてるあのアレン様がなんてざまだよ……クスクス…腹痛てぇ……。」
途中まで耐えていたのに堪えきれなくなったのか目に涙が溜まるほどお腹を抑えて笑っている。
英雄?剣帝?なにそれ?
あ、そう言えばさっき街の人達が言ってた気がする。
「ねぇ、アレン。」
あ、ヴェインさんに何か文句を言おうとしてたのに遮ってしまった。
「トオル、なんだ?」
あ、不機嫌だった。
なんか、ごめん。
「英雄って何の話?剣帝って?」
あ、アレンさんの顔が引きつってる。
「なんでもない。気にするな。」
「え、でも…アレン最初雑用係って言ってたし、俺、アレンのこと何も知らないなって…。
もっと仲良くなりたいからアレンのこと知りたいなって……ダメかな?」
向かいでまたヴェインさんが吹き出していた。
アレンさんはなんとも言えない顔で
「………また今度な。」と呟いた。
「クスクス……トオル、お前、よく人たらしって言われないか?
アレン、頑張れよ。
俺は応援してるぞ。クスクス……。」
「ヴェイン、うるせぇ。」
アレンさんはまた不機嫌そうにヴェインさんを怒鳴っていた。
「失礼な、俺は人たらしなんて言われたことないですよ!」
「そうか?なら無自覚か。
気をつけろよ?
アレン、守ってやれよ。」
意味がわからず黙っておく。
「お前に言われなくてもわかってるよ。」
アレンさんは何故か力なく頷くのだった。
♦♦♦♦♦
拙い文章ですが、読んでいただきありがとうございます。
気ままに書いておりますので
誤字、脱字、おかしな日本語等あると思います。
ご指摘ありましたらよろしくお願いいたします。
また、感想、要望等もお待ちしております。
応援してくださる皆様へのささかやなお礼として本日は、4話更新予定です。
お楽しみください。
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