料理人は騎士団長に食べさせたい

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番外編 前日談 (本編11話後推奨)

アレンの話5

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知らずの森に向かう準備を始める。

ちょうど知らずの森と王都間にあるティフィンの街を拠点にする予定だ。

必要そうな物を手当り次第マジックバックに詰め込み早々に部屋から出ようとした時ドアがノックされた。

「アレン様、先ほど預かっていた木剣を持って参りました。」

あぁ、忘れてた。

「入っていいぞ。」

「失礼します。」
さっき木剣を預けた騎士見習いが入ってきた。

「おう、わざわざ持って来て貰って悪かったな。」

「いえ、気になさらないでください。
むしろ、アレン様の木剣を預かれるなんて光栄です!」

騎士見習いは、本当に嬉しいようで主人に褒めてもらえた犬の様に尻尾をブンブン降っている気がした。

あれ?こいつ確か……
「お前、もしかしてブランイェーガー孤児院の出身か?」

俺とヴェインの出身の孤児院だ。
ラインハルトとたまに遊びに行っていた時に見た覚えがある。

「はい!覚えてくださってたのですね!
私はカイルです!今年で14になります。
アレン様に憧れて騎士を目指しました!」


「そうだったか。
よく騎士団の門を叩いてくれた。
今度一緒に孤児院に遊びに行こうな。」

「はい!是非御一緒させてください。」

「硬い。」

「はい?」

「ブランイェーガー孤児院の出身なら俺の弟みたいなもんだろ?
もっと気軽に接してくれ。」

そんなことを言うと、カイルは焦り始めた。

「いえ、そんなことは出来ません。
アレン様は、イェーガー王国を救った英雄です。
私などが気軽に接したら守護竜様のバチが当たります。」

「はぁ、コアはそんなこと気にしないと思うぞ。
それに、お前だっての名を背負ってるんだからそんな簡単に自分を卑下するな。自分を卑下するって事は孤児院の家族を卑下するってことだ。わかったか?」

「………は、はい。」
カイルは、涙を溜めながら頷く。

「分かればいい。
俺今から王都から出ないといけないから帰ったら一緒に鍛錬しような。」
カイルの頭を撫でてやりながらそう伝える。

「はい!ありがとうございます!
気をつけください!」
カイルは、頭を撫でられて嬉しかったのか顔を真っ赤にして見送ってくれた。

あいつ、本当に犬みたいだな。
お土産でも買ってきてやるか。
新しい騎士見習いの弟分を思いながらティフィンに向かって出発するのだった。




______________



ティフィンに馬を走らせながらコアの頼み事について考える。

捜し物。
何かわからないが大事にしなきゃいけない?
考えれば考えるほど意味がわからん。

知らずの森に加護が届かないことと何か関係があるのだろうか?


考えを巡らせて居ると程なくしてティフィンに着いた。

門番に声をかけ街に入る。


相変わらず賑わってるな。
この街は2年前のドラゴン襲撃時に酷い損害を被った街だ。

あの戦いは酷かった。
20年前に俺達の村を襲ったドラゴンと同じ個体で間違い無かったようだ。

騎士団、宮廷魔導師の部隊はほぼ全壊し王都まであと一歩と言うところまで迫っていたのだ。

コアの加護すら退ける邪悪な魔物。
あの時はヴェインが結界を張り周りを護り、俺が単騎で討伐することになってしまった。

死闘の末、コアの助けもあり何とか討伐に成功したが、戦場は酷い有り様だった。
ヴェインが結界を張っていなかったら王都は火の海だっただろう。

俺は1ヶ月生死をさまよった。
まぁ、今となっては親の仇も討てたからいい思い出だな。
2度と出会いたくないが……。


すっかり元通りになり賑わっているティフィンの街を見てついついあの時を思い出してしまった。



口うるさい奴も居ないから、好きな肉をたらふく食って昼食を終える。
さぁ、行くか。

来た時とは、反対側の門から街を出て知らずの森を目指す。
全力で飛ばして1時間くらいだろうか?

「はぁ、さっさと終わらしてゆっくり休暇を過ごしてぇ……。」
誰につぶやく訳でもなくて独りごつ。

_______________

馬を走らせ森が見えてきた頃、何故だか分からないが胸騒ぎを覚えた。

行かなくてはならない。

そう感じた。
馬の速度を無意識に上げる。

なんだ?この胸騒ぎは?
ドラゴンと戦った時とは違う恐怖。
急がなければ失う。
そんな気がした。


ん?失う?何をだ?

森に着くが、木が多すぎるし魔物の気配がする為か、馬が先に進もうとしなかった。

「仕方ない……。」

馬からおり、馬に結界魔法をかける。
ヴェインには遠く及ばないが俺も一応使える。
むしろ、魔力量では俺の方が上だった。
維持するだけなら3日はいける。


そのまま身体に魔力を巡らせ、身体強化魔法を使い森の中をかける。
木が邪魔で木々を飛び移りながら移動した。

胸が酷い焦燥感に駆られた。
急げ急げ。

広い森なのにどこに行けばいいか本能が教えてくれているようだった。

森の中ほどまで進んだ辺りで人影が倒れている。
しかも、2匹の狼の魔物が今まさに食らいつこうとしていた。
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