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世界は俺を求めないが、俺は世界に救いを求める
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──努力をすれば報われる。
誰がこんな無責任な言葉を発したのだろう。こんな言葉のせいで不幸な目にあうやつがいるというのに。
主にそれの代表的なやつは俺だ。昔からそうだ。スポーツにしろ勉強にしろ恋にしろ、全て頑張った。努力だけはした。だが結果はついてこなかった。
そうやっているうちに、どんどん努力をするのが無駄に感じた。毎回結果に期待して裏切られてきた。だから…俺は努力することも期待することもやめた。
そうやって目標を見失うと生きる意味さえなくなってしまったように思える。
─今日も俺は死んだように生きている。
目を覚ますと、視界は一面青。その青いキャンバスの上を鳥が数匹横切っていく。
努力をやめ、期待を捨て、世界に見放された男は高校の屋上にてその雄大な景色を眺め、思考を停止させていた。
男の名前は、青木 葵。自分の名前に『あお』が二つ入っていたから、空の『あお』にもどこか親近感を抱いていた。
「空はいい。眺めていれば心が洗われいい人間になれている気がする」
そう呟くと、どこからともなく声がした。
「やっぱり…屋上にいたんだね…。ダメじゃないか……授業サボっちゃ…。」
普通ならこんなセリフは学園ラブコメで可愛い幼なじみか、綺麗なお姉さん彼女から言われるものだが、現実はそうじゃない。
青木が声の発せられた方を横目で見ると、おカッパ頭の男が立っていた。目は開いてるかどうか分からないくらい細く切れ長で常に口はへの字に曲がっていて、ある程度近くから見ないと妖怪に見えるような奴だった。
その男がボソボソとした口調でさらに続ける。
「いい人間ね…。君がそんな人間になれる訳ないさ…。青木くん。」
「黙れ赤池。お前をここから突き落としてやろうか。」
「きゃっ!(笑)青木くんはこわいなぁ……。」
ニンマリと気色の悪い笑顔を向けてくる。余計に殺意が増幅した。
この殺意を向けられている男の名前は赤池。大のオカルトマニアで高校の七不思議など、怪奇現象を追いかけるため、新聞部に所属している。
「青木くんは…まあまあ顔がいいんだから…そのネガティブな性格直せばモテるんじゃない……?君……彼女出来たことあるの…?」
「うるせえよ。」
俺は恋なんてしない。
三年前の、中学二年の時。好きな人が出来た。彼女は俺に優しく接してくれて、俺は簡単に恋に落ちた。毎日彼女を想い、アプローチをした。彼女は俺の前ではよく笑っている気がした。
俺は勇気を振り絞って告白した。その結果。
「あー…ごめんね。全然そんなふうに見たことないや。青木くんには他のいい人がいると思うよ?」
彼女はそう言った。
彼女が優しく接していたのは俺だけではなかった。彼女は「普通の優しい人」だったのだ。それを俺は勘違いして、勝手に期待して……それ以降、彼女は俺に話しかけることはなかった。
「もうこりごりなんだよ……」
ボソッと空に呟いた。赤池には聞こえなかったようで、「なんか言ったかい?」と問てきたが無視した。
「まぁ…君にモテ期が来て、彼女が出来たら…それこそ怪現象だ……ふふっ…」
「俺には、お前のその存在が怪現象に思えるが?」
「青木くんは…冗談が上手だね…。」
別に冗談のつもりではなかったが面倒なので返答をしなかった。黙っている俺をつまらなく感じたのか、赤池は気がついたら屋上からいなくなっていた。
そうして独りになったら考えるのだ。
生きてる意味ってなんなのか。生きてて良かったと思ったことなんてない。
それならばいっそのこと……
俺は屋上に立った。
世界は俺を求めないが、俺は世界に救いを求める。
誰がこんな無責任な言葉を発したのだろう。こんな言葉のせいで不幸な目にあうやつがいるというのに。
主にそれの代表的なやつは俺だ。昔からそうだ。スポーツにしろ勉強にしろ恋にしろ、全て頑張った。努力だけはした。だが結果はついてこなかった。
そうやっているうちに、どんどん努力をするのが無駄に感じた。毎回結果に期待して裏切られてきた。だから…俺は努力することも期待することもやめた。
そうやって目標を見失うと生きる意味さえなくなってしまったように思える。
─今日も俺は死んだように生きている。
目を覚ますと、視界は一面青。その青いキャンバスの上を鳥が数匹横切っていく。
努力をやめ、期待を捨て、世界に見放された男は高校の屋上にてその雄大な景色を眺め、思考を停止させていた。
男の名前は、青木 葵。自分の名前に『あお』が二つ入っていたから、空の『あお』にもどこか親近感を抱いていた。
「空はいい。眺めていれば心が洗われいい人間になれている気がする」
そう呟くと、どこからともなく声がした。
「やっぱり…屋上にいたんだね…。ダメじゃないか……授業サボっちゃ…。」
普通ならこんなセリフは学園ラブコメで可愛い幼なじみか、綺麗なお姉さん彼女から言われるものだが、現実はそうじゃない。
青木が声の発せられた方を横目で見ると、おカッパ頭の男が立っていた。目は開いてるかどうか分からないくらい細く切れ長で常に口はへの字に曲がっていて、ある程度近くから見ないと妖怪に見えるような奴だった。
その男がボソボソとした口調でさらに続ける。
「いい人間ね…。君がそんな人間になれる訳ないさ…。青木くん。」
「黙れ赤池。お前をここから突き落としてやろうか。」
「きゃっ!(笑)青木くんはこわいなぁ……。」
ニンマリと気色の悪い笑顔を向けてくる。余計に殺意が増幅した。
この殺意を向けられている男の名前は赤池。大のオカルトマニアで高校の七不思議など、怪奇現象を追いかけるため、新聞部に所属している。
「青木くんは…まあまあ顔がいいんだから…そのネガティブな性格直せばモテるんじゃない……?君……彼女出来たことあるの…?」
「うるせえよ。」
俺は恋なんてしない。
三年前の、中学二年の時。好きな人が出来た。彼女は俺に優しく接してくれて、俺は簡単に恋に落ちた。毎日彼女を想い、アプローチをした。彼女は俺の前ではよく笑っている気がした。
俺は勇気を振り絞って告白した。その結果。
「あー…ごめんね。全然そんなふうに見たことないや。青木くんには他のいい人がいると思うよ?」
彼女はそう言った。
彼女が優しく接していたのは俺だけではなかった。彼女は「普通の優しい人」だったのだ。それを俺は勘違いして、勝手に期待して……それ以降、彼女は俺に話しかけることはなかった。
「もうこりごりなんだよ……」
ボソッと空に呟いた。赤池には聞こえなかったようで、「なんか言ったかい?」と問てきたが無視した。
「まぁ…君にモテ期が来て、彼女が出来たら…それこそ怪現象だ……ふふっ…」
「俺には、お前のその存在が怪現象に思えるが?」
「青木くんは…冗談が上手だね…。」
別に冗談のつもりではなかったが面倒なので返答をしなかった。黙っている俺をつまらなく感じたのか、赤池は気がついたら屋上からいなくなっていた。
そうして独りになったら考えるのだ。
生きてる意味ってなんなのか。生きてて良かったと思ったことなんてない。
それならばいっそのこと……
俺は屋上に立った。
世界は俺を求めないが、俺は世界に救いを求める。
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