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135 闖入者

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「ねえ、いい加減機嫌を直してよ」


 マールの館へ戻った俺たちは、用意された食事を平らげ、一服していた。


 だがリリーサはいまだ機嫌が直らず、ぷんぷんしていたため、俺はご機嫌を取ろうと声を掛けたのだった。


「ふん、話しかけるな」


「いや、そんなこと言わないでさあ」


「い・や・だ・話したくない」


 まったく……。


 困ったものだ。


 マールも凄く困った顔をして、俺たちの様子を窺っている。


 すまないね。気を遣わせてしまって。


「あ、わたしそろそろお勉強しなくっちゃ」


 マールは俺たちの空気に耐えかね、早々と部屋を出ていった。


 そうだろうね。この空間にいるくらいだったら、お勉強の方がましだよね。


 そう言う俺も、マールと一緒にお勉強したいくらいだよ。


 はあ~。


 ネルヴァたちは身体を治すために療養所にいるし、ジトー侯爵は三悪党の尋問のために自分たちのアジトに戻って行っちゃったし。


 二人だけなんだよねえ~。


 しかも気分的には、黒幕の正体判らずじまいで落ち込んでいるところだっていうのにさあ~。


 何でこんな重苦しい空気の中にいなくてはいけないんだよ。


 参った……。


 この沈黙に俺はこれ以上耐えられそうにない。



 すると突然、部屋の外から予想外の闖入者が現れた。


「やあ、お姉様。それにアリオンも。お元気そうでなによりです」


 リリーサの弟のファルカンであった。


 ファルカンはこの世のものとも思えぬ美貌の持ち主で、さながら天使が現れたのかと思わんばかりであった。


 いや、実際この重苦しい空気を打破してくれるのなら、それは紛れもない天使と言って差し支えあるまい。


「や、やあ、ファルカン。君も元気そうだね?」


 弟がわざわざ会いに来てくれたにも関わらず、返事もせずにそっぽを向いているリリーサに変わり、俺がたどたどしくも挨拶を返した。


 ファルカンは美しい笑みを湛えながらも、不思議そうな顔をしながら俺に近付いてくる。


 そして俺のすぐ側までやってくると、顔を近づけ耳打ちをしたのだった。


「お姉様はどうしたのです?ずいぶんとご機嫌斜めのようですが」


 俺はリリーサの地獄耳でも聞こえないくらいの小声でもって、現在の窮状について事細かにファルカンに説明を施した。


 ファルカンは目を大きく見張り、何度も俺の話にうなずいた。


 そして同じように小声で言ったのだった。


「それはお困りですね。なんとかお姉様のご機嫌が直るように僕もがんばってみますね」
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