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123 我慢比べ

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 ちぇっ!

 なんか腹立つな。

 まあいいや。とにかく、もっかの懸案はあのスピードをどう仕留めるかだ。

 一応一つ、手があるにはあるけど……出来るだけこの手は使いたくないな。

 俺が対応策を迷っていると、トリストが心を見透かすように言った。

「ほう、どうやらどう戦うか迷っているようだな?」

「うるさいな。ちょっと速くなったからっていい気になるなよ」

 俺の負け惜しみに、トリストが笑った。

「わたしとしては、ここは充分に誇っていいところだと思うのだがね」

「まだ俺はやられちゃいないぜ」

「だが、勝てる方策もまた、見当たらない。そうだろ?」

 俺は鼻でせせら笑った。

「ふん!そう思うんなら攻めてきな。そっちだって俺のディヴァインシールドに手を焼いているじゃないか」

 するとトリストが何度かうなずいた。

「確かにな。今のところ傷を付けるのがやっとだ。だが、先程も言ったように、無限に張り続けられるわけではない。ならば、君の限界が来るまで壊し続けるまでだ」

「それまでお前の体力が持つかな?」

 俺の挑発に対し、トリストが勝ち誇った顔をした。

「やってみればわかることだ」

 トリストはそう言うと、不敵に口角を上げた。

 来るな。

 俺がそう思った瞬間、トリストの身体が消えた。

 そして次の瞬間、俺の目の前に現れたトリストは、巨大な腕を振り下ろしてディヴァインシールドを打ち付けたのだった。

 ガィーーーン

 今回もまた、トリストの移動は見切れなかった。

 あまりにも速いトリストの動きに、俺の眼が追いついていない。

 ひとまずここは防御一辺倒になりそうだ。

 それというのも、とりあえずディヴァインシールドは今回も有効だったからだ。

 確かにまたも傷が付けられたが、破壊はされていない。

 俺はすかさず新しいディヴァインシールドを展開した。

 するとトリストが少し俺と距離を取った位置でニヤリと笑った。

「これで三枚目か。さて、いつまで張り続けられるかな?」

 俺もアゴを突き出し、胸をそびやかしてニヤリと笑いながら言った。

「お前の体力が尽きるまで、張り続けるさ」

 するとトリストが、片方の眉尻を跳ね上げた。

「ほう、それはそれは。では我慢比べと行こうじゃないか」

 トリストの提案に、俺はすかさず乗って答えた。

「ああ、いいぜ。いつまでだってやってやるよ!」
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