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122 哲学

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 何だ?


 何か新しい技を繰り出しているわけじゃない。


 もしそうなら、俺の能力コピーが反応するはずだ。


 だけどそうじゃない。


 ということは、ただひたすらに速いということか?


 あの獣のような巨体になって、速度が圧倒的に上がったということか。


 つまりは超瞬間移動ってわけだ。


「やるじゃん。でもさあ、ヒビが入っただけじゃしょうがないでしょ」


 するとトリストが勝ち誇った顔をして言った。


「そんなことはない。どのようなものであっても、ほころびが見えれば、そこから穿たれるものさ」


「へえ、じゃあこれならどうだ?」


 俺は意識を集中させて、ディヴァインシールドを二重に張った。


 するとトリストの笑みが消えた。


「ほう、君もやるね。幾重にも張れるのかい?」


「ああ。いくらでも出来るぜ」


 するとトリストがニヤリと笑った。


「嘘だな」


 俺もニヤリと笑い返す。


「嘘じゃないさ」


「いや、嘘だ。いくらでも、というのは有り得ない。何事も限界というものがあるのだからな」


 当然の反応だな。


 だがそこで、俺は或る疑問が浮かび上がった。


 そのため俺は、好奇心にまかせてトリストに尋ねた。


「その口ぶりだと、どうやら悪魔にも限界があるようだな?」


 するとトリストの目がスーッと細くなった。


 だがまだ余裕の表情を浮かべ、答えたのだった。


「ああ。悪魔にだって限界はあるさ」


「へえ、そうなんだ。俺はてっきり無限の魔力を誇るのかと思っていたよ」


 するとトリストがふっと息を漏らした。


「この世に無限などない。全ては有限だ。例え無限のように見えるものがあったとしても、それはまやかしに過ぎない。どのようなものでも、いずれ限界は見えて来るものだ」


「ふうん、何か哲学的じゃん」


「そんなつまらないものではない。ただの真理だ」


 トリストがそう吐き捨てるように言った。


 俺は少しからかい気味に言った。


「哲学ってのは、真理を探究するためのものだろ?だったらそれ、哲学じゃん」


「違うな。あんなのは机上の言葉遊びに過ぎんさ。わたしの真理は、実戦に即したものさ」


「実戦の中で会得した考えってところか?」


 するとトリストがまたもフッと笑って言ったのだった。


「そうだ。数限りない実戦を得て、わたしは今ここにいる。それ故わたしは強い。お前がいかに能力をコピー出来たところで、元々の戦闘力が格段に違えば、意味をなさない。つまりは、そういうことだ」
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