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120 巨体

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「さあ、始めようじゃないか。第二ラウンドを」

 巨大な怪物の胸から顔を覗かせたトリストが、ニヤリと笑ってそう言った。

 参ったな。

 とにかくデカい。

 これは剣でどうこうってのは、無理だね。

「凄いね?ずいぶんと様変わりするじゃん」

 トリストは口角を上げて言った。

「わたし自身はこの姿は好きではないのだがね。お前がいけないのだよ」

「へえ、何で好きじゃないの?もしかして……」

 俺はわざと一旦言葉を区切ると、ニヤリと笑って言ってやった。

「姿が醜いからかな?」

 するとトリストの上がった口角が、さらに口の端を切り裂いて極限まで上がった。

「口の減らないガキだ。わたしはそういう生意気な小僧が嫌いなんだ」

 トリストはそう吐き捨てるように言うと、凄まじい勢いで突進を仕掛けてきた。

 速い!

 俺は瞬時に、右に瞬間移動して危うく難を逃れた。

 だが安心するのは早かった。

 トリストはその巨体からは想像も出来ない俊敏さで方向転換すると、避難したはずの俺目掛けて、再度突進を仕掛けてきた。

 俺はそれを目の端でなんとか捉えると、再び瞬間移動を駆使して逃れたのだった。

「危ねえ!焦った!マジか!」

 俺はダンスホールの端まで一気に逃れて、ようやくそこで言った。

 トリストはホールの中央付近で悠然と立っている。

 トリストはゆっくりと首を巡らすと、俺を見た。

「どうした?逃げ回っているだけでは、いつまでも終わらんぞ」

 トリストの残忍な声がダンスホールに響く。

 俺は腹立たしげにトリストを眺め、言ったのだった。

「うるさい。デカい図体の割に速いから、ちょっと驚いただけだ。本番はこれからだぜ!」

 俺はそう言うと両腕を前に突き出した。

 そして渾身の炎を繰り出したのだった。

「喰らえっ!」

 裂帛の気合いを込めて俺が叫ぶと、両腕の先から紅蓮の炎が噴き上がった。

 炎は猛り狂う猛威となって、トリストの巨体に襲いかかった。

 瞬間、トリストが消えた。

 俺は瞬時に紅蓮の炎を収め、トリストの突進を警戒した。

 すると次の瞬間、目の前にトリストの巨体が現れた。

 マズい!!

 俺は咄嗟に瞬間移動を仕掛けるも、間に合わないと感じた。

 やられる!!

 ドンッ!!!

 咄嗟に俺は両腕を顔の前でクロスさせたものの、途轍もない衝撃を受けて吹っ飛んだのであった。
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