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105 怒りの矛先
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「それで、独りで行って収穫はあったの?」
リリーサの目が冷たい。口もまだ尖っている。
リリーサを置いて、俺一人でメラルダ夫人のところに乗り込んだことを、まだ根に持っている。
俺はリリーサをこれ以上怒らせないよう、充分に注意して言葉を選んだ。
「それは、そのう、色々とね」
「へえ、で、どんなの?」
俺は昨晩起こった出来事を出来るだけ詳細に、しかも慎重かつ丁寧に説明した。
すると話の途中で、リリーサが突然ワナワナと震えだした。
え?
俺、もしかして説明に失敗した?
俺がそう不安がっていると、案の定リリーサの怒りが爆発した。
「どういうことよ!なにが潜入捜査よ!出たとこ勝負でバトルしまくってんじゃないの!」
「いや、それは誤解だよ!成り行きでそうなっただけだよ!」
「なにが成り行きよ!それだったらわたしが行ったって同じじゃない!」
「いやいやいや、中々に難しい判断の中で、仕方なくバトルを選択したってだけで、なにも考えなしにバトったわけじゃないよ」
「あ~、腹が立つ~!わたしだって暴れたかったわ!」
そこかい。
そこなのかい。
俺は少々呆れながらも、話の続きをしようと試みた。
それというのも、ここから先が最重要だったからだ。
「それはともかく、聞いてくれ。トリストの正体についてだ」
「なによ?トリストの正体なんかにもう興味ないわよ」
「そう言わずに聞いてくれよ。とんでもない話なんだからさ」
するとリリーサが、口をもの凄く尖らせながらもなんとか同意してくれた。
俺はトリストの正体から、ジトー侯爵が登場する最後の部分までを、一気に話したのだった。
するとさすがのリリーサが身を乗り出して聞いた。
そして開口一番言ったのだった。
「それ、本当の話なの?」
俺はようやく話し終えた安堵感と、リリーサが話に興味を持ってくれたうれしさから、一つため息を吐きつつ言った。
「ああ、本当だよ」
「ちょっと信じられないわよ」
「まあ確かに、突拍子もない話に思えるだろうね。でも本当さ。それはジトー侯爵に聞いてくれればわかることだよ」
するとリリーサは先程までの不機嫌な表情から一変、目を爛々と輝かせて興味津々といった表情となった。
「凄いわね。悪魔なんて……それに王家に伝わる秘中の秘だっけ?わたし王女だけど聞いたことないわよ」
「王家の中でもごく一部しか知らないらしいよ。ジトー侯爵が言ってた」
「何か腹立つわね。わたしにも教えないなんて」
「リリーサがまだ若いからじゃない?」
「若いっていったって、わたしは第二王女であり、アルト州を任せられたアルト公でもあるのよ?それなのに教えないなんて、有り得ないわ~」
リリーサは憤懣やるかたないといったようすであった。
だが有り難いことにその怒りは俺から、ジトー侯爵に移っていた。
「おじ様もひどいわ!このわたしに内緒にするなんて!」
「まあねえ、ジトー侯爵も立場上色々と大変なんだろうけど、可愛い姪のことだからねえ、どうなんだろうねえ」
俺はリリーサの怒りの矛先が自分に向かないよう、細心の注意を払って言った。
「立場なんて関係ないわ。わたしとの信頼関係の問題よ!」
思惑通り、リリーサは俺への怒りはとうに忘れて、完全に怒りの矛先をジトー侯爵へと向けていた。
しめしめとほくそ笑む俺。
だがその時、俺のよこしまな思惑を打ち砕く男が突如として姿を現わしたのだった。
「ひどいじゃないか。アリオン君。わたしを悪者にして、自分だけ逃れようなどとは」
ジトー侯爵本人であった。
クランド男爵邸の時といいこの人、神出鬼没にも程があるな。
だがそれよりも、やべぇ。
完全に俺の思惑がバレてる。
俺がどう言い訳をしようか迷っていると、先にリリーサが怒りの声を上げた。
「ひどいわおじ様!わたしにはどうして秘密にしているの?」
ジトー侯爵は慌てず騒がず、穏やかに説得を試みた。
「リリーサ、それはお互い様だろう?わたしも色々と君に言っていないことがあったが、君だって同じだ。ネルヴァとレイナのことをわたしに黙っていたね?」
「え、それはまあ、そうだけど」
「だがわたしはそのことで君を責めたりはしないよ。先程も言ったが、お互い様だからね。人は誰しも心の中をオープンにしているわけじゃない。誰にも言っていないことの一つや二つは、誰にだってあるものさ。だから君もわたしを責めないでくれるとありがたいんだがね」
リリーサは口を尖らせるも、渋々納得した。
「わかったわ、おじ様。でもいつか教えてね」
「ああ、君がヴァルカ王の頼みとなるような存在となった暁には、秘密の提示は必ずされるはずだとわたしは思っている」
「うん!わかった。じゃあそれまでがんばるわ」
リリーサはそう言って、朗らかな笑みを見せた。
ジトー侯爵もその笑顔を見て、自然と自らも笑みが浮かんだ。
だがそこで、俺は何故ここにジトー侯爵が現れたのかが気になった。
いや、ジトー侯爵がここに来る理由は一つしかない。
俺は緩んだ表情を引き締め、ジトー侯爵に問い掛けたのだった。
「ジトー侯爵、貴方がここへ来たってことは、ネルヴァたちの行方がわかったってことだよね?」
リリーサの目が冷たい。口もまだ尖っている。
リリーサを置いて、俺一人でメラルダ夫人のところに乗り込んだことを、まだ根に持っている。
俺はリリーサをこれ以上怒らせないよう、充分に注意して言葉を選んだ。
「それは、そのう、色々とね」
「へえ、で、どんなの?」
俺は昨晩起こった出来事を出来るだけ詳細に、しかも慎重かつ丁寧に説明した。
すると話の途中で、リリーサが突然ワナワナと震えだした。
え?
俺、もしかして説明に失敗した?
俺がそう不安がっていると、案の定リリーサの怒りが爆発した。
「どういうことよ!なにが潜入捜査よ!出たとこ勝負でバトルしまくってんじゃないの!」
「いや、それは誤解だよ!成り行きでそうなっただけだよ!」
「なにが成り行きよ!それだったらわたしが行ったって同じじゃない!」
「いやいやいや、中々に難しい判断の中で、仕方なくバトルを選択したってだけで、なにも考えなしにバトったわけじゃないよ」
「あ~、腹が立つ~!わたしだって暴れたかったわ!」
そこかい。
そこなのかい。
俺は少々呆れながらも、話の続きをしようと試みた。
それというのも、ここから先が最重要だったからだ。
「それはともかく、聞いてくれ。トリストの正体についてだ」
「なによ?トリストの正体なんかにもう興味ないわよ」
「そう言わずに聞いてくれよ。とんでもない話なんだからさ」
するとリリーサが、口をもの凄く尖らせながらもなんとか同意してくれた。
俺はトリストの正体から、ジトー侯爵が登場する最後の部分までを、一気に話したのだった。
するとさすがのリリーサが身を乗り出して聞いた。
そして開口一番言ったのだった。
「それ、本当の話なの?」
俺はようやく話し終えた安堵感と、リリーサが話に興味を持ってくれたうれしさから、一つため息を吐きつつ言った。
「ああ、本当だよ」
「ちょっと信じられないわよ」
「まあ確かに、突拍子もない話に思えるだろうね。でも本当さ。それはジトー侯爵に聞いてくれればわかることだよ」
するとリリーサは先程までの不機嫌な表情から一変、目を爛々と輝かせて興味津々といった表情となった。
「凄いわね。悪魔なんて……それに王家に伝わる秘中の秘だっけ?わたし王女だけど聞いたことないわよ」
「王家の中でもごく一部しか知らないらしいよ。ジトー侯爵が言ってた」
「何か腹立つわね。わたしにも教えないなんて」
「リリーサがまだ若いからじゃない?」
「若いっていったって、わたしは第二王女であり、アルト州を任せられたアルト公でもあるのよ?それなのに教えないなんて、有り得ないわ~」
リリーサは憤懣やるかたないといったようすであった。
だが有り難いことにその怒りは俺から、ジトー侯爵に移っていた。
「おじ様もひどいわ!このわたしに内緒にするなんて!」
「まあねえ、ジトー侯爵も立場上色々と大変なんだろうけど、可愛い姪のことだからねえ、どうなんだろうねえ」
俺はリリーサの怒りの矛先が自分に向かないよう、細心の注意を払って言った。
「立場なんて関係ないわ。わたしとの信頼関係の問題よ!」
思惑通り、リリーサは俺への怒りはとうに忘れて、完全に怒りの矛先をジトー侯爵へと向けていた。
しめしめとほくそ笑む俺。
だがその時、俺のよこしまな思惑を打ち砕く男が突如として姿を現わしたのだった。
「ひどいじゃないか。アリオン君。わたしを悪者にして、自分だけ逃れようなどとは」
ジトー侯爵本人であった。
クランド男爵邸の時といいこの人、神出鬼没にも程があるな。
だがそれよりも、やべぇ。
完全に俺の思惑がバレてる。
俺がどう言い訳をしようか迷っていると、先にリリーサが怒りの声を上げた。
「ひどいわおじ様!わたしにはどうして秘密にしているの?」
ジトー侯爵は慌てず騒がず、穏やかに説得を試みた。
「リリーサ、それはお互い様だろう?わたしも色々と君に言っていないことがあったが、君だって同じだ。ネルヴァとレイナのことをわたしに黙っていたね?」
「え、それはまあ、そうだけど」
「だがわたしはそのことで君を責めたりはしないよ。先程も言ったが、お互い様だからね。人は誰しも心の中をオープンにしているわけじゃない。誰にも言っていないことの一つや二つは、誰にだってあるものさ。だから君もわたしを責めないでくれるとありがたいんだがね」
リリーサは口を尖らせるも、渋々納得した。
「わかったわ、おじ様。でもいつか教えてね」
「ああ、君がヴァルカ王の頼みとなるような存在となった暁には、秘密の提示は必ずされるはずだとわたしは思っている」
「うん!わかった。じゃあそれまでがんばるわ」
リリーサはそう言って、朗らかな笑みを見せた。
ジトー侯爵もその笑顔を見て、自然と自らも笑みが浮かんだ。
だがそこで、俺は何故ここにジトー侯爵が現れたのかが気になった。
いや、ジトー侯爵がここに来る理由は一つしかない。
俺は緩んだ表情を引き締め、ジトー侯爵に問い掛けたのだった。
「ジトー侯爵、貴方がここへ来たってことは、ネルヴァたちの行方がわかったってことだよね?」
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