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74 メイデン王子邸
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俺たちはメイデン王子のところに向かうことになった。
道を知っているリリーサの後について、歩いて行く。
だが内心俺の不安は増大していった。
本当に大丈夫だろうか?
リリーサのことだ。やっぱりいきなり突撃しそうな気がする。
だがそれはまずい。
メイデン王子が今回の事件の主犯ならば、狙うはリリーサの命なのだ。
だからそれでは相手の思う壺だ。
だがリリーサならばやりかねない。
俺はついにその不安を口にすることとなった。
「リリーサ、ここまで来てこんなこと言うのもなんだけど、やっぱり引き返そう」
「はあ~?」
リリーサは振り向き、貴方何言っているの?馬鹿なの?と言わんばかりの顔となって言った。
俺はぐっとこらえて言った。
「やっぱりいきなりメイデン王子のところにいきなり行くのは得策じゃないと思うんだ」
「何言っているのよ、メイデンのところに行こうって言い出したのは貴方よ」
「いやそうなんだけどさ、やっぱりいきなりはまずいかなと思ってさ」
「冗談じゃないわよ、ここまで来て」
「いや、まだ間に合うと思うんだよ。だってまだ到着してないわけだし」
「何言っているのよ」
リリーサはそう言うとピタリと立ち止まった。
そして少し先の真正面に見える、かなり広大な屋敷を指さして言ったのだった。
「着いたわよ」
「えっ!?ここ?」
「そうよ。あれがメイデンの屋敷よ」
「デカいね」
俺はそれだけ言うのがやっとだった。
まずい。どうやら到着してしまったらしい。
さて、どうするか?
リリーサは本当に突撃しないだろうか?
俺がそうして不安にさいなまれていると、リリーサが一つ大きなため息を吐いた。
「ねえ、貴方。わたしがいきなり突撃するとでも思ってるんじゃないの?」
はい。思ってます。
「しないわよ。わたしもそんなに馬鹿じゃないわよ」
「本当に?」
「しないわ。だって実際、もう到着しているのにしてないじゃない」
確かに。
どうやらリリーサも直情径行型だとはいえ、そこまで頭に血が昇るタイプってわけじゃないらしい。
ちょっとだけ安心した。
「わかったよ。じゃあ冷静に探るとしよう」
俺がそう言うと、リリーサが大きくうなずいた。
「ええ、いいわ。それで、どうやって調べるの?」
俺はメイデン王子の屋敷の外観を眺めた。
さすがは王子の屋敷だけあって、周辺には他に建物はない。
マール邸もそうだ。
周囲からは隔絶されたところにポツンと建っている。
やはり王子や王女の屋敷というものは、他者と隔絶しているのだろう。
広大な庭を要し、その遙か奥に大きな館が見える。
だがその広大な庭を取り囲むように塀が築かれていて、しかもそれはとても高かった。
「裏口から侵入するのがよさそうだね。とてもじゃないけどあの正門は厳重過ぎるようだし」
俺の真正面には正門がある。
だがその正門は巨大で、その両脇には沢山の衛兵が待機していた。
するとリリーサが至極真っ当なことを言った。
「正門があれなら、裏口もあんな感じじゃないの?」
確かに。正門があれだけ厳重なら、裏口だって同じだろう。
参ったな。侵入出来そうな気がしないぞ。
すると突然、正門を固める衛兵たちに動きがあった。
「うん?何だ?」
俺は首を伸ばして正門付近を眺めた。
見るとやはり衛兵たちがバタバタと動きまわっている。
リリーサもその様子を見て、眉根を寄せた。
「何かしら?何かあった?」
「そうだと思う。あっ!」
俺は視線の先の館を見た。
いや、正確に言うと館から出る一群を見たのだった。
「あれを見て!騎馬隊だ。それに馬車もいる。たぶんあれにはメイデン王子が乗っているんじゃないかな」
俺は館から出発する一群を指さし、言った。
するとリリーサが大きくうなずいた。
「そうね。たぶん間違いないわ」
俺は慌てた。
そして周囲を見回した。
「ない!何処かにないか!?」
「なに?なにを探しているの?」
「馬車だよ。俺たちの足じゃ、あれに追いつけない」
「そうか!確かに。あっ!馬車ならそこの四つ角を曲がったところにさっきあったわよ?」
「本当に?何処?」
リリーサは来た道を振り返り、二つ目の角を指さした。
「あそこよ。あの角を曲がったところにあったわ」
俺は大いにうなずいた。
「よし!急ごう。馬車を拾うんだ」
俺は言うなり駆けだした。
リリーサも同様に駆けだし、俺を追う。
よし!こうなったら尾行だ。
メイデン王子の行き先を突き止めてやる。
俺はさっきまでの不安は何処へやら、尾行という探偵の真似事に、心を躍らせるのであった。
道を知っているリリーサの後について、歩いて行く。
だが内心俺の不安は増大していった。
本当に大丈夫だろうか?
リリーサのことだ。やっぱりいきなり突撃しそうな気がする。
だがそれはまずい。
メイデン王子が今回の事件の主犯ならば、狙うはリリーサの命なのだ。
だからそれでは相手の思う壺だ。
だがリリーサならばやりかねない。
俺はついにその不安を口にすることとなった。
「リリーサ、ここまで来てこんなこと言うのもなんだけど、やっぱり引き返そう」
「はあ~?」
リリーサは振り向き、貴方何言っているの?馬鹿なの?と言わんばかりの顔となって言った。
俺はぐっとこらえて言った。
「やっぱりいきなりメイデン王子のところにいきなり行くのは得策じゃないと思うんだ」
「何言っているのよ、メイデンのところに行こうって言い出したのは貴方よ」
「いやそうなんだけどさ、やっぱりいきなりはまずいかなと思ってさ」
「冗談じゃないわよ、ここまで来て」
「いや、まだ間に合うと思うんだよ。だってまだ到着してないわけだし」
「何言っているのよ」
リリーサはそう言うとピタリと立ち止まった。
そして少し先の真正面に見える、かなり広大な屋敷を指さして言ったのだった。
「着いたわよ」
「えっ!?ここ?」
「そうよ。あれがメイデンの屋敷よ」
「デカいね」
俺はそれだけ言うのがやっとだった。
まずい。どうやら到着してしまったらしい。
さて、どうするか?
リリーサは本当に突撃しないだろうか?
俺がそうして不安にさいなまれていると、リリーサが一つ大きなため息を吐いた。
「ねえ、貴方。わたしがいきなり突撃するとでも思ってるんじゃないの?」
はい。思ってます。
「しないわよ。わたしもそんなに馬鹿じゃないわよ」
「本当に?」
「しないわ。だって実際、もう到着しているのにしてないじゃない」
確かに。
どうやらリリーサも直情径行型だとはいえ、そこまで頭に血が昇るタイプってわけじゃないらしい。
ちょっとだけ安心した。
「わかったよ。じゃあ冷静に探るとしよう」
俺がそう言うと、リリーサが大きくうなずいた。
「ええ、いいわ。それで、どうやって調べるの?」
俺はメイデン王子の屋敷の外観を眺めた。
さすがは王子の屋敷だけあって、周辺には他に建物はない。
マール邸もそうだ。
周囲からは隔絶されたところにポツンと建っている。
やはり王子や王女の屋敷というものは、他者と隔絶しているのだろう。
広大な庭を要し、その遙か奥に大きな館が見える。
だがその広大な庭を取り囲むように塀が築かれていて、しかもそれはとても高かった。
「裏口から侵入するのがよさそうだね。とてもじゃないけどあの正門は厳重過ぎるようだし」
俺の真正面には正門がある。
だがその正門は巨大で、その両脇には沢山の衛兵が待機していた。
するとリリーサが至極真っ当なことを言った。
「正門があれなら、裏口もあんな感じじゃないの?」
確かに。正門があれだけ厳重なら、裏口だって同じだろう。
参ったな。侵入出来そうな気がしないぞ。
すると突然、正門を固める衛兵たちに動きがあった。
「うん?何だ?」
俺は首を伸ばして正門付近を眺めた。
見るとやはり衛兵たちがバタバタと動きまわっている。
リリーサもその様子を見て、眉根を寄せた。
「何かしら?何かあった?」
「そうだと思う。あっ!」
俺は視線の先の館を見た。
いや、正確に言うと館から出る一群を見たのだった。
「あれを見て!騎馬隊だ。それに馬車もいる。たぶんあれにはメイデン王子が乗っているんじゃないかな」
俺は館から出発する一群を指さし、言った。
するとリリーサが大きくうなずいた。
「そうね。たぶん間違いないわ」
俺は慌てた。
そして周囲を見回した。
「ない!何処かにないか!?」
「なに?なにを探しているの?」
「馬車だよ。俺たちの足じゃ、あれに追いつけない」
「そうか!確かに。あっ!馬車ならそこの四つ角を曲がったところにさっきあったわよ?」
「本当に?何処?」
リリーサは来た道を振り返り、二つ目の角を指さした。
「あそこよ。あの角を曲がったところにあったわ」
俺は大いにうなずいた。
「よし!急ごう。馬車を拾うんだ」
俺は言うなり駆けだした。
リリーサも同様に駆けだし、俺を追う。
よし!こうなったら尾行だ。
メイデン王子の行き先を突き止めてやる。
俺はさっきまでの不安は何処へやら、尾行という探偵の真似事に、心を躍らせるのであった。
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