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18 決闘

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「間違いない!レイナ=ベルンとネルヴァ=ロキだ!」「生きている内に剣聖と大賢者を拝めるとは!」

「凄い!本物だ!伝説の二人だぜ!」「驚いたな。まさかこんな大物が、こんな所にいるなんて!」

 二人の登場に、ギルド内の誰もが驚愕の声を上げた。

 俺はその様子を見て、あらためてこの二人の偉大さを感じ取った。

 さすがだね。みんなまるで、この世の大英傑を見るような目で見ているよ。

 まあでもそれくらいこの二人は凄いんだけどね。

「お前がゲイスか?ふん、嫌な面相をしているな。性格の悪さが顔ににじみ出ているぞ」

 レイナがつかつかとゲイスに歩み寄り、傲然とした態度で言い放った。

 普段は偉そうにしまくっているゲイスも、相手が剣聖ではまるで形無しで、わなわなと震えるのみであった。

 俺はその姿を見て、実に小気味良いものを感じていた。

 すると今度はネルヴァが、コツコツとかかとで床を叩きながらレイナの横に。

「言い過ぎですよ、レイナ。人相が悪くてもいい人もいます。ですが、彼の性格が悪いというのは間違ってはいないでしょうね」

 ゲイスはもちろん、一味の連中も大汗をかいてうつむいている。

 ざまあないね。

 ああ、実に良い気分だ。

 するとレイナが首を傾け、それまでと異なった恐ろしげな表情となって凄んだ。

「お前がアリオンを殺そうと、崖から突き落としたんだな?」

 ゲイスは蛇に睨まれた蛙のように縮こまり、大汗をかきながらうつむいている。

 そこへレイナが追い討ちをかける。

「黙っていないでなんとか言ったらどうなんだ!!!」

 剣聖の凄まじい怒声がギルド内に響き渡った。

 壁や床や天井に、椅子に机とあらゆる物がビリビリと震えるほどの大音声で。

 ギルド内にいる者は、全員縮み上がったと思う。

 だって俺まで縮んじゃったもん。

 いや、何処がかって?全身だよ?ある一部分なんて俺は言ってないよ。

 まあそんな話は置いといて、二人を知る俺でさえ数秒間びびって動けなかった。

 他のみんなは当然びびりまくりで、漏らしている者がいても不思議じゃないくらいさ。

 するとその様子を見て、ネルヴァがクックッと愉快そうに含み笑いをしながらレイナに言ったのだった。

「みなさん驚きすぎて大変なことになってますよ?もうこの辺にしておきましょう」

 するとレイナがネルヴァをギッと睨みつけた。

「何故止める必要がある!」

 するとネルヴァが恐ろしいことを平気な顔で言ったのだった。

「貴方が殺すのは簡単です。ですがそれはアリオンの望んだものではないでしょう」

 この冒頭の言葉に、ゲイスとその一味がさらに震え上がった。

 ゴクンと大きく生唾を飲み込み、さらに大きく身体を震わせ、尋常ではない量の汗を垂れ流して。

 俺は、ネルヴァの後半の言葉にうなずいた。

「そうだね。レイナ、俺はそんなの望んじゃいない。戦うなら正々堂々、俺自身が戦うよ」

 するとこの俺の言葉を聞いて、ここがチャンスだとばかりにゲイスが振り向いて叫んだ。

「いい度胸だ!俺が相手してやる!」

 うん。こいつは相変わらず、流れを読むのだけは上手い。

 ゲイスめ、レイナの圧力から逃げ出す最大のチャンスを生かしたな。

 いいさ。乗ってやるよ。積年の恨みをここで晴らしてやる。あ、いや積年といっても数ヶ月だけどね。

 俺はあごをツンと上げ、ゲイスに向かって傲然と言い放った。

「いいだろう!表に出ろ!」

 それを合図に皆が一斉にわーっと大声を張り上げながら立ち上がった。

 ゲイスはもうそそくさとギルドの出口に向かっている。

 よっぽどレイナが恐いんだな。

 だがお前は何もわかっちゃいない。

 今の俺も、お前にとって恐ろしく恐い存在だということがな。

 俺はレイナとネルヴァにコクンとうなずきながらその横を通り抜け、ギルドの外へと足を踏み出した。

 見ると、すでにゲイスがやる気と見えて首をコキンコキンと左右に何度も倒して臨戦態勢となっている。

 当然その背後には一味の連中がセコンドのように付いている。

 ふん、なんなら全員まとめてでもいいけどな。

 俺はそんなことをつらつらと思いながら、見物人でごった返す通りの真ん中に躍り出た。

 すると、ゲイスが俺を舐めきった表情で憎たらしくほざいた。

「おい、アリオン。逃げ出すなら今のうちだぞ?ただし、きっちりと地面に座り、両手を突いて頭を下げてもらうがな?」

 そう言ってゲイスが下卑た笑い声を上げた。

 すると一味の連中も嘲るように笑った。

 だが俺は、もはやそんなことで怒りはしなかった。

 いくらでも言え。どうとでも嘲るといい。好きにしろ。

 どうせもうすぐ決着が付くんだからな。

 だが一息で終わらせるのももったいない。

 これだけのギャラリーもいるしね。

 一撃で終えたらブーイングものだろう。

 ならばここは、一つためしてみようか。

 俺は意識を集中させた。

 そして小さな声で俺は呪文名を呟いたのだった。

「ヘイスト」

 この魔法は移動速度を速める事が出来る。

 リリーサとの戦いではこの魔法は使わなかった。

 理由は簡単。

 アクア以外は使わないとネルヴァと約束をしたことと、もう一つは俺の細い筋肉では耐えられないと思ったからだった。

 実際、もしあの戦いで使っていたら、すぐに身体中の筋肉がブチブチと音を立てて切れてしまっていただろう。

 だがそれも相手が恐ろしく強いリリーサだったからだ。

 今俺の目の前にいるゲイス程度が相手なら、問題ないと思う。

 すると、ゲイスの顔がこわばった。

 見物人の中からレイナたちを見つけ出し、大声で言った。

「あんたらは手出し無用にしてくれよ!」

 レイナが鼻でせせら笑いながら答えた。

「ああ!我らが出るまでもないからな!」

 ゲイスはギャラリーの前で言質を取ったとばかりにニヤリと笑った。

 どうやら舞台は整ったようだ。

 そう思った途端、ゲイスが腰から剣を抜き、無言で真っ直ぐに突っ込んできた。

 俺はそれを、華麗に身体をひねってあっさりとかわした。

 まさかかわされるとは夢にも思わなかったのだろう。

 ゲイスがつんのめって前のめりに転んだ。

 ギャラリーが一斉にどっと湧いた。

 やんややんやの大喝采だ。

 だがお楽しみはこれからだ。

 これ以上にもっと、存分に楽しませてやろうじゃないか!
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