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17 対峙

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「そうだな。あんな馬鹿のことはもうどうだっていいんだ。おい、誰かアリオンの代わりに荷物持ちをやる奴はいねえか!」

 ゲイスの怒鳴り声が響く中、俺は颯爽とギルドに登場した。

 すると早速ゲイス一味とは別の冒険者たちが、俺の存在に気付いてくれた。

「うん?おい、あれはアリオンじゃないか?」「本当だ。生きているじゃないか!」

「何だ、こいつらの言っているのは嘘か?」「ああ、どうせそうだろう。こいつらのやりそうなことだ」

「ふん!大方こいつらがアリオンを殺そうとでもしたんじゃないのか?」「なるほどな。だが殺しきれなかったと。おい、俺もその予想に乗っかるぜ!」「俺もだ!」「俺も!」

 当たり。よく判ったものだ。まあそれも、こいつらの日頃の行いのせいかな?

 そのこいつらは、唖然呆然といったマヌケ顔を晒して俺のことを凝視している。

「やあ、みんな!元気でやってる?」

 俺は必要以上に明るく振る舞ってみた。

「ああ!元気だぜ!アリオン、お前も元気そうだな?」「おう!元気でやってるよ。お前はどうだい?」

「アリオン!無事でなにより!」「元気じゃねえか!心配したぞ」「お前の顔が見えたからな。元気さ」

 ギルドにいる二十人ばかりの冒険者たちが、みんな優しく俺を出迎えてくれている。

 俺は確かにゲイス一味には嫌われているが、他の冒険者たちにはこう見えて、人気者なんだ。

 もっとも他のパーティーには荷物持ちがちゃんといるため、俺を雇ってはくれなかったが。

 まあいいさ。それは仕方がないことだ。タイミングが悪かったってことだからな。

 俺は冒険者のみんな一人一人と目を合わせ、にこやかに手を振りながら、受付へ向かった。

「やあ、元気そうでなにより。先程君の死亡届が提出されたんだが、今すぐ破棄することとしよう」

 ギルドの受付係の兄ちゃんがそう言って、おそらく俺の死亡届であろう紙を、目の前で破いて見せてくれた。

「ありがとう。見ての通り元気に生きているよ」

 すると俺の後ろで冒険者たちの歓声が上がった。

 またそれと同時にゲイスたちに対する罵りの声も。

「おい!これはどういうことだ!?」「言っておくがこれは冗談じゃ済まされねえぜ!?」

「どうなんだ!?何とか言ったらどうだ!?」「おいゲイス!黙っていちゃ何もわからねえぜ!」

 ゲイスたちは皆一様にうつむき、ぷるぷると震えている。

 ざまあないな。俺が魔物に食われて死んだと、ギルドに対して虚偽の報告をしたことがバレたんだからな。

 しかも俺を崖から突き落として殺そうとしたわけだからな。

 さて、どう調理してやろうか。

 俺がそんなこんなを考えていると、ゲイスが真っ赤な顔をして椅子を蹴倒して立ち上がった。

「何だてめえ!あの崖から落ちて、どうして生きていやがるんだ!」

 あらら、自分から言っちゃったよ。

 まあいいか。せっかくだからそれに乗っかろう。

「おかげさまでね。あんたに崖から突き落とされたけど、運良く生きていたよ」

 すると冒険者たちの声が。

「やっぱりか!おい、お前の予想が当たったぜ!」「本当にアリオンを殺そうとしたのか!こいつら!」

「なんて奴らだ!許せねえぜ!」「おい、どうする?みんなで囲んでやっちまうか!」

 みんな怒りの表情で一斉に立ち上がった。

 ゲイス一味もそれに対抗するために皆立ち上がった。

 睨み合う両陣営。

 俺はその間で、笑顔で両手を振って冒険者たちをなだめた。

「ちょっと待って。みんなそんなに興奮しないで。ちょっと座っててよ」

 俺の制止を受け、みんなが大人しく従い座ってくれた。

 ゲイス一味も周りの様子を窺いながら、ゲイス以外は元の椅子に座った。

 ふう。良かった。袋叩きっていうのは俺の性に合わない。やるなら、自分一人でやるさ。

「さて、どう落とし前つけてくれる?」

 俺は少し格好を付け、決め台詞のように言ってみた。

 だが案の定ゲイスが怒りだした。

「何を格好つけてやがるんだてめえは!何故だ?どうやって戻った?あのダンジョンから!」

 俺は肩をすぼめ、教えてやった。

「ある人たちに助けてもらったんだ」

 すると案の定、ゲイスが鼻息を鳴らした。

「ふん!そういうことか。あのダンジョンに他に大人数パーティーがいたとはな」

「大人数ではないし、パーティーってわけでもないけどね。二人組でギルド登録はしてないし」

「二人組だと?あのダンジョンでか!?誰だ、そいつらは?」

 俺は正直に二人の名前を明かした。

「レイナ=ベルンとネルヴァ=ロキの二人さ」

 するとギルド内が、誰彼構わず大きくどよめいた。

「剣聖レイナ=ベルンと大賢者ネルヴァ=ロキか!」「あの二人がこの近くのダンジョンに?」

「しかしあそこは上級ダンジョンではあるが、最上級ってわけじゃないのに、何故あの二人が?」

 冒険者たちは様々に疑問の声を上げた。
 
 するとゲイスが大きな声で「はんっ!」と吐き捨てるように言った。

「どうせお前のほら話だろうよ!」

「そんなわけないだろう?実際俺はこうして生きて戻っているし」

「ふん!大方あの二人を笠に着て、俺のバックには凄い奴らが付いているんだぞと、俺たちに対して圧力をかけてやろうとでも思ったんだろうよ!」

「そんなことするわけないだろう?そんな必要もうないし」

「何だと?」

「もう俺は、元の俺じゃない」

「何を言っていやがる!まあいい、お前を助けたのが剣聖と大賢者だと言うならここに連れてこい。そしてお前の言っていることがほら話じゃないって証明してみろ!」

「う~ん、それは……」

 まあ出来ないことはないけど、今は食事の最中だろうし、呼びに行くのは申し訳ないな。

 するとゲイスが勝ち誇ったように言った。

「ほうら見ろ。やっぱりこいつのほら話だぜ!」

 するとその時、凜とした声がギルド内に響き渡った。

「ほら話ではない!わたしならここにいるぞ!」

 見ると、ギルドの入り口に、レイナ=ベルンがニヤリと笑って立っていた。

 そしてその横には当然のようにネルヴァ=ロキの姿が。

「わたしもいますよ。これでよろしいですかね?」

 ギルド内の者は皆一様に、二人の華麗なる登場に腰を抜かさんばかりに驚いたのであった。
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