上 下
31 / 55

第三十一話 レベルダウン

しおりを挟む
「……あれ?」

 俺が何の気なしにステータス画面を開き、情報を確認しようとしたところ、色々と数値が変わっていることに気がついた。

 レベル:1052

  HP:34917
 ちから:45361
すばやさ:50985
 まもり:35132
かしこさ:28130
  MP:22978

 レベルが落ちている!

 しかも一万台から、一気に千台に大暴落だ。

 他の数値もレベルの低下に見合った数値に軒並み置き換わってしまっている。

「これは一体どういうことだ?二ムバスが俺の中から居なくなったからなのか?……」

 俺はレベル千までは、エニグマの召喚魔法によって現れた魔物を次々に退治することで着実に上げていった。

 だがその先は、二ムバスを俺の中に取り込むことで一気にレベルを上げるという方法を取った。

 レベル千到達までの特訓期間が一ヶ月だったのに対し、その後のレベル一万到達は半日ほどだった。

 つまり二ムバスを取り入れたことで無理矢理レベルを上げたのだ。

 だからかもしれない、その後すぐに二ムバスが俺の身体から目玉だけを取り出し出て行ったことで、上がったレベルが一気に下がってしまったのだろう。

 それにしても一気に千台か……。

 あの半日に及ぶ地獄はなんだったんだ。

 あんなに痛い目にあったというのに、レベルが千台に下がってしまうなんて……。

 暴落だぞ、暴落。大暴落だ。

 たったの十分の一だぜ。

 まじかー。

 あのダンジョン最下層で俺が放った地獄の業火。

 あの途轍もなく巨大な火柱。

 もうあれを見ることはないのか。

 だがそこで俺はあることを思い出した。

 この世界においてはレベル千越えでも、途轍もなく凄いことなのだということに。

 この世界では、レベル百を超えたらSランクに認定される。

 Sとはスーパーの略だ。
 
 Aの上に位置する最高位の特別な存在なのだ。

 しかも世界最強クラスと目される冒険者でも、そのレベルは数百だと言われているのだ。

 つまり、レベル千越えの俺は、今や世界最強なのだ。

 あ、いや、たぶん二ムバスはレベル一万越えだろうから、厳密には世界最強じゃないが。

 だがそれに次ぐくらいの力があるということだ。

 少なくともテスター侯爵家を継ぐ資格は充分過ぎるくらいにあるだろう。

 しかも特殊能力や称号はそのままだ。

 当然ドラゴンスレイヤーならぬ、その上位称号のドラゴンキラーは記されたままだ。

 なら問題は無い。

 二ムバスと戦いさえしなければ、最強なんだし。

 よし、ここは一つ、気持ちを切り替えていくとしよう。

 まずはテスター侯爵家を継ぐことだ。

 そのためには急がなければならない。

 一刻も早く、家に戻らなければ。

 俺は逸る気持ちを必死に押さえ込みながら、全速力で家路につくのであった。
しおりを挟む

処理中です...