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第二十八話 レベル一万の地獄の業火

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「……超絶デカいんだけど……」

 俺は扉を開けた途端、目の前に突如として現れた、今まで見たこともないほどの巨大な生物に圧倒されながらようやくつぶやいた。

 高さは50メートルくらいありそうだ。いや、もっとか。七十メートルくらいかもしれない。

 三っつの目を持つ人型で、凄い高さから俺たちを見下ろしていた。

 すると俺の後背からエニグマが答えた。

「ここは地下千階ですので」

「……ああ。そうだったね……」

 俺たちは神殿を出て扉を開き、いきなり巨大生物と出くわしていたのだ。

「えっと、倒せるのかな?」

「解析してみたら如何ですか?」

「それってどうやるの?」

「魔法検索をかけると、アナライズという魔法があるはずです」

「了解。魔法検索……魔法検索っと……あった。アナライズ」

 俺がアナライズとつぶやくと、目の前の半透明な板に、巨大生物のデータが克明に映し出された。

「ゴライアスね……えっとレベルは……2829か」

「ならば余裕かと」

 エニグマが淡々と言った。

 俺は目の前の巨大生物のあまりの偉容に圧倒されていたため、エニグマの言葉を素直に信じることが出来なかった。

「……余裕って感じじゃないけど……」

 だがエニグマは冷静にゴライアスを見つめ、分析した。

「では何故ゴライアスは攻撃を仕掛けてこないのでしょうか?」

 あ、確かにゴライアスは俺の目の前に突っ立っているだけで、何もしてこない。

「ビビっているのはゴライアスの方です。だから動けないのです。蛇に睨まれた蛙ですね」

「ビビってる?ゴライアスが?俺に?」

「はい。それ以外にこの状況を説明出来ないと思いますが」

 マジで?

 あ、よく見ると、そんな風にも見えるな。

 でも本当かな?もし違ったら……。

 俺が逡巡していると、エニグマがボソッと呟いた。

「時間がないのでは?」

「ああ、そうね。じゃあ……ちょっとやってみるか」

 俺はアナライズで映し出された画面の中に、ゴライアスの弱点項目があることを見つけた。

 そこには炎系が弱点だと書いてあった。

「よし、じゃあ……地獄の業火!」

 俺は右腕を前に差し出し、呪文名を唱えた。

 すると途端に右腕から凄まじい突風が吹き荒れた。

 それと同時に凄まじい量の炎が猛然と噴き出し、ゴライアス目掛けて突き進んでいった。

 ゴライアスはビビり倒しているのか、一歩も動けない。

 ドオッ!!

 凄まじい轟音を立てて地獄の業火がゴライアスにぶち当たった。

 ゴオォォォォーーーー!

 地獄の業火は渦を巻くようにしてゴライアスの身体を焼き焦がす。

 オォォォォォーーーン

 ゴライアスの悲鳴だろうか、甲高い鳴き声が広大なダンジョン内に響き渡る。

 あまりにも凄まじい勢いの炎がゴライアスに巻き付いているため、ハッキリとは見えないものの、身体が溶け出しているように俺には思えた。

「……すご……」

 俺は自らが繰り出した魔法の途轍もない威力に圧倒された。

 よく見ると、やはりゴライアスの身体が崩れ始めている。

 だが炎の勢いはいまだ衰えることを知らなかった。

 俺は超巨大なキャンプファイヤーをしばしの間眺め続けた。

 そして完全に身体が焼け落ち、もはや燃やせる箇所がなくなり行き場を失った炎がようやく鎮火するのを見て、つぶやいたのだった。

「……強すぎるだろ……」

 だがエニグマは無感動に俺の呟きに答えたのだった。

「レベル一万なので、こんなものです」
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