上 下
27 / 55

第二十七話 レベル到達

しおりを挟む
『おい、起きろ』

 二ムバスの声が聞こえる。

 相変わらずの横柄な物言いだ。

 実に腹立たしい。

「何だよ、偉そうに」

 俺はそう言って、ゆっくりと瞼を開いた。

 そしてやおら起き上がり、周囲を見回した。

「あれ?二ムバスは?声が聞こえたんだけど……」

 俺の視界にはエニグマは居るが、にっくき二ムバスの姿は見当たらなかった。

 …………いや、その前にちょっと待ってくれ。身体の痛みが……ないぞ。

 俺はエニグマに向かって勢い込んで問い掛けた。

「痛みがない!もしかして終わったのか?」

 エニグマは軽くうなずいた。

「終わりました。二ムバス様はすべて貴方の中に」

「そうなのか?じゃあさっき聞こえた声は……」

 すると再び二ムバスの声が響いた。

『お前の中から話しかけているだけだ』

「そうか。じゃあ本当に終わったんだな」

『ああ。良くやった。褒めてやる』

「ふん、お前に褒められても嬉しくない」

『そうか。まあそんなことはどうでもいい。さあ、早速行こうじゃないか!』

 珍しく二ムバスの声がうわずっている。

 それもそうか。

 外へ出るのは千年ぶりだもんな。

 でも本当に俺のレベルは一万に上がったのか?

 俺は気になり、すかさずステータス画面を開いた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

  ジーク=テスター

  レベル:10872

   HP:329403

  ちから:489113

 すばやさ:511938

  まもり:342261

 かしこさ:261978

   MP:214975


  クラス:


 特殊能力:毒無効 暗闇無効 麻痺無効 沈黙無効

      物理威力MAX 魔法威力MAX

      物理耐性MAX 魔法耐性MAX

      炎魔法MAX 氷魔法MAX 雷魔法MAX 地魔法MAX 風魔法MAX

      闇魔法MAX 召喚魔法MAX

      HP自己回復MAX MP自己回復MAX


   称号:悪魔王の分身 武闘神 守護神 大賢者 絶音の暗殺者 真理の探究者 錬金術師

      ドラゴンキラー ビーストキラー ギガントキラー エビルキラー ゾンビキラー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
      
 本当にレベルが一万を越えていた。

 それにしてもその後に続く数字も、ちょっと呆れるくらいのものが並んでいる。

 なんだよ、軒並み10万越えって。

 それに称号も、物騒な感じのものが並んでいやがる。

 だけど一つ気になることが。

「ドラゴンスレイヤーの称号が無くなってるんだけど……」

 するとすかさずエニグマが俺のステータス画面をのぞき込みながら答えてくれた。

「ドラゴンを100体以上倒しましたので、ドラゴンキラーに昇格しただけです」

「てことは……上位の称号を得たってわけだ」

「そうなります。その他のキラーの記述も同様です」

「なるほどな。確かにどれも100体以上倒した気がする」

「はい。ですので貴方にとっては僥倖かと」

「ああ。上位の称号があれば、侯爵位を継ぎやすくなる。これだけあれば相変わらずのクラス無しでも認めてくれるはずだ」

「そうですね。まだ侯爵位が空位であればの話ですけど」

「そうだった」

 そこで俺は、内なる二ムバスに向かって話しかけた。

「出来れば急いでここを出たい。どうだ?名残惜しいか?」

『ふん!千年も居たのだ。名残惜しくなどない』

「そうか。ならすぐに出るぞ」

『ああ。楽しみだ』

「初めて意見が一致したな。俺もだよ」

 俺はそう言いながらすでに駆けだしていた。

 ついに俺はここを脱出する術を手に入れた。

 待っていろよアリアス!エドゥワルド!

 すぐに戻って、侯爵位を継いでやるからな。

 ……と言っても、まだ空位だったらの話だけど……。
しおりを挟む

処理中です...