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第二章
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「そうなのか?個人的な情報なんかも出しているのか?」
「そういう国もあるな。それほど誇らしいのだろうよ。Sランクが我が国にいるということが。だからあれやこれやと大っぴらに出していたりするんじゃ。もっとも、その情報が正しい保証はないがな」
「それって、芸能人みたいなものなのかな?」
バーン翁が呵々と笑った。
「確かにな。その感覚で間違いないと思うぞ。わしの時代にも芸能人はおったが、記者に追われて大変そうだった」
「俺の時代は、たぶんあんたの時代よりひどいよ。プライバシーなんて無いも同然だ」
「ふむ。ならばやはり同じようなものだな。実際、お前さんも芸能人ではないが、有名人として色々と奇異な目で見られたんじゃないか?」
「そうだな。けっこう芸能人気分を味わったよ。もっともすぐに飽きて、煩わしくなったけど」
「わしもそうじゃった」
そういって翁は高らかに顔を上げて笑った。
「そういえば、あんたは自分がSランクであることを、公表しているんだな」
「そうじゃな。自分から公表しようとしたわけではないがな」
「バレたって感じか?」
「ふむ、わしは強かったからな。しかも転移者だ。こちらの世界の理を知らず、Sランクとしての自覚もなかった。故に周囲でどんどん噂になっていった。わしが知らぬうちにな。しばらくすると、Sランクじゃないのかと聞かれるようになった。そこで初めて知ったんじゃ。ランクがあることをな」
「なるほど。その時にはもう名が知られていたってわけだ。そうなれば隠しようがないな」
「そういうことじゃ。だがそれは、お前さんも同様じゃないか?」
俺は苦笑した。
「そうだな。似たようなもんだ」
「そうであろう。お前さんは、中でもかなり特異じゃな」
「特異?そうなのか?」
「自覚はないようだが、おまえさんほど華々しくデビューしたSランクなぞ、聞いたことがないぞ?」
「そう……なのか?」
「ベルガンの精鋭軍を相手に、敵中突破しておいて何を言うか。しかも敵軍を率いていたのは同じSランクのカイゼル・グリンワルドではないか」
「まあ、そうだったな」
「そのカイゼルを二度に渡り一騎打ちで破り、万を越える大軍の只中を、亡国の王女を伴なって突き抜けたなぞ、聞いたこともない空前絶後の英雄伝説じゃ。しかもまだ、齢十五ときた。派手にも程があるわい」
バーン翁はそう言って呆れた顔をした。
俺は居心地が悪くなって頭を掻いた。
「ただの成り行きで、そうなっただけなんだけどな」
「そういう国もあるな。それほど誇らしいのだろうよ。Sランクが我が国にいるということが。だからあれやこれやと大っぴらに出していたりするんじゃ。もっとも、その情報が正しい保証はないがな」
「それって、芸能人みたいなものなのかな?」
バーン翁が呵々と笑った。
「確かにな。その感覚で間違いないと思うぞ。わしの時代にも芸能人はおったが、記者に追われて大変そうだった」
「俺の時代は、たぶんあんたの時代よりひどいよ。プライバシーなんて無いも同然だ」
「ふむ。ならばやはり同じようなものだな。実際、お前さんも芸能人ではないが、有名人として色々と奇異な目で見られたんじゃないか?」
「そうだな。けっこう芸能人気分を味わったよ。もっともすぐに飽きて、煩わしくなったけど」
「わしもそうじゃった」
そういって翁は高らかに顔を上げて笑った。
「そういえば、あんたは自分がSランクであることを、公表しているんだな」
「そうじゃな。自分から公表しようとしたわけではないがな」
「バレたって感じか?」
「ふむ、わしは強かったからな。しかも転移者だ。こちらの世界の理を知らず、Sランクとしての自覚もなかった。故に周囲でどんどん噂になっていった。わしが知らぬうちにな。しばらくすると、Sランクじゃないのかと聞かれるようになった。そこで初めて知ったんじゃ。ランクがあることをな」
「なるほど。その時にはもう名が知られていたってわけだ。そうなれば隠しようがないな」
「そういうことじゃ。だがそれは、お前さんも同様じゃないか?」
俺は苦笑した。
「そうだな。似たようなもんだ」
「そうであろう。お前さんは、中でもかなり特異じゃな」
「特異?そうなのか?」
「自覚はないようだが、おまえさんほど華々しくデビューしたSランクなぞ、聞いたことがないぞ?」
「そう……なのか?」
「ベルガンの精鋭軍を相手に、敵中突破しておいて何を言うか。しかも敵軍を率いていたのは同じSランクのカイゼル・グリンワルドではないか」
「まあ、そうだったな」
「そのカイゼルを二度に渡り一騎打ちで破り、万を越える大軍の只中を、亡国の王女を伴なって突き抜けたなぞ、聞いたこともない空前絶後の英雄伝説じゃ。しかもまだ、齢十五ときた。派手にも程があるわい」
バーン翁はそう言って呆れた顔をした。
俺は居心地が悪くなって頭を掻いた。
「ただの成り行きで、そうなっただけなんだけどな」
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