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第二章
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この野郎、完全に開き直ってやがる。
「アルデバラン脱出の折、俺と戦ったろうが!」
「あのときはあのときだ。今は今よ!」
くそっ!
俺は腹立たし気に槍を振るった。
兵たちが無残に吹き飛んでいく。
そのとき、ひとりの兵の兜が、俺に向かって飛ばされて来た。
俺は咄嗟にそれを右手で掴んだ。
よしっ!これだ!
俺は兜を力強くむんずと掴むと、振りかぶって勢いよく投げた。
兜は凄まじいまでの速度で飛んでいき、逃げ行くソウザの後頭部にヒットした。
「ぐぶっ!」
ソウザが奇妙な音を口からだしながら、前向きに馬の背に倒れ込んだ。
よしっ!奴め、気絶したな。
だが馬は止まらず、ゆっくりと歩き続けている。
しかしその速度は歩様であり、俺はこれならすぐに追いつけると思い、槍を振るい続けた。
立ちはだかる兵たちを、蒼龍槍で次々になぎ倒していく。
あと少し。
あと三メートル。
ソウザの前に立ちはだかる最後の兵たちを、俺は無慈悲に蒼龍槍で吹き飛ばした。
よしっ!
俺は右手を伸ばし、馬の上に倒れ込むソウザの左足を掴もうとする。
捕まえ……
そのとき、俺の身体が突然硬直した。
右手を伸ばしたまま、動けない。
なんだこれは?
と、馬の背に倒れ込んでいたソウザが、ばねのように勢いよく身体をもたげた。
そして空を見上げ、なにやらぶつぶつとつぶやいている。
どういうことだ?ソウザが俺を硬直させたのか?
そんな馬鹿な。奴は魔導師じゃない。俺の身体を硬直なんてさせられるわけがない。
もしも出来るなら、アルデバラン脱出の際にすでにやっているはずだ。
ならば、これは一体?
そのとき、空を見上げていたソウザがくっと顔を下ろし、俺を見つめた。
その途端、身体の自由が戻った。
俺は驚きながら、ソウザを見つめる。
その目はとても仄暗く、落ちくぼんでいた。
と突然、ソウザの左目がぐるんとひっくり返った。
よく見ると、その瞳には紋章が刻まれていた。
これは……あのときの。
「久しぶりだな。覚えているかな?このわたしを」
俺は大きく息を吐き出した。
「ああ、覚えている。カンネの関所でカイゼル・グリンワルドと相対した時に、そのカイゼルに乗り移っていた魔導師だな。たしか名前は、ローガン」
「そのとおり、覚えていてくれてうれしいぞ」
ローガンはそう言うと、馬上で呵々と哄笑した。
俺はローガンを睨みつけた。
「何故お前がここにいる?」
ローガンは口の端をクイッと異様に上げた。
「さあ。理由を挙げるとすれば、そうだな。お前がここにいるから、だな」
「アルデバラン脱出の折、俺と戦ったろうが!」
「あのときはあのときだ。今は今よ!」
くそっ!
俺は腹立たし気に槍を振るった。
兵たちが無残に吹き飛んでいく。
そのとき、ひとりの兵の兜が、俺に向かって飛ばされて来た。
俺は咄嗟にそれを右手で掴んだ。
よしっ!これだ!
俺は兜を力強くむんずと掴むと、振りかぶって勢いよく投げた。
兜は凄まじいまでの速度で飛んでいき、逃げ行くソウザの後頭部にヒットした。
「ぐぶっ!」
ソウザが奇妙な音を口からだしながら、前向きに馬の背に倒れ込んだ。
よしっ!奴め、気絶したな。
だが馬は止まらず、ゆっくりと歩き続けている。
しかしその速度は歩様であり、俺はこれならすぐに追いつけると思い、槍を振るい続けた。
立ちはだかる兵たちを、蒼龍槍で次々になぎ倒していく。
あと少し。
あと三メートル。
ソウザの前に立ちはだかる最後の兵たちを、俺は無慈悲に蒼龍槍で吹き飛ばした。
よしっ!
俺は右手を伸ばし、馬の上に倒れ込むソウザの左足を掴もうとする。
捕まえ……
そのとき、俺の身体が突然硬直した。
右手を伸ばしたまま、動けない。
なんだこれは?
と、馬の背に倒れ込んでいたソウザが、ばねのように勢いよく身体をもたげた。
そして空を見上げ、なにやらぶつぶつとつぶやいている。
どういうことだ?ソウザが俺を硬直させたのか?
そんな馬鹿な。奴は魔導師じゃない。俺の身体を硬直なんてさせられるわけがない。
もしも出来るなら、アルデバラン脱出の際にすでにやっているはずだ。
ならば、これは一体?
そのとき、空を見上げていたソウザがくっと顔を下ろし、俺を見つめた。
その途端、身体の自由が戻った。
俺は驚きながら、ソウザを見つめる。
その目はとても仄暗く、落ちくぼんでいた。
と突然、ソウザの左目がぐるんとひっくり返った。
よく見ると、その瞳には紋章が刻まれていた。
これは……あのときの。
「久しぶりだな。覚えているかな?このわたしを」
俺は大きく息を吐き出した。
「ああ、覚えている。カンネの関所でカイゼル・グリンワルドと相対した時に、そのカイゼルに乗り移っていた魔導師だな。たしか名前は、ローガン」
「そのとおり、覚えていてくれてうれしいぞ」
ローガンはそう言うと、馬上で呵々と哄笑した。
俺はローガンを睨みつけた。
「何故お前がここにいる?」
ローガンは口の端をクイッと異様に上げた。
「さあ。理由を挙げるとすれば、そうだな。お前がここにいるから、だな」
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ぽちぽち更新します。
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