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第二章
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俺はそう思い返しつつ、問いかけた。
「何重にかけられているんだ?」
「八じゃな。八重にかけられているようじゃ」
俺は思わず目を見張った。
「八重?本当に八重なのか?」
「ああ、間違いないぞ」
俺は思い返す。あのときも確か、八重ではなかったか?
そうだ。
ゼークル伯爵お抱えの魔導師が錠にかけた封印も、確か八重だったはずだ。
もしかして、この手錠に魔法封印を施した魔導師と、ゼークル伯爵お抱えの魔導師とは、同一人物なんじゃないだろうか?
だがそうなると、オルダナのゼークル伯爵のところにいた魔導師が、なぜアルデバランに駐留するベルガン軍にいるのか?
そこで俺は思い出す。
そういえば、この前レノアが言っていたな。その魔導師は、誰かの紹介状を持ってつい最近になってゼークルに使えるようになったとか。
もしや、その紹介状を書いたのは、ベルガンの者か?
いや、そんなことがあるだろうか。さすがに偶然ではないか。考え過ぎだろう。
「とにかくその錠を外そう。俺がやるよ」
そう言って俺は、アルフレッドの腕を持つ。
よく見るも、やはり俺には魔法は見えない。だからあの時と同じ魔法なのかどうかも、当然わからない。
「ちょっと力を入れるけど、痛くしないように出来ると思うから、心配しないでくれ」
するとバーン翁が驚いた声を上げた。
「ちょっと待て。お前さん、まさか力づくでこの錠にかけられた魔法を解こうっていうんじゃないだろうな?」
「そのつもりだ」
すると今度はアルフレッドが声を上げた。
「いや、無理だ。じいちゃんが言うように、こいつは、かなりの高度な魔法が何重にもかけられている。それを力づくでなんていうのは、愚の骨頂だ」
「問題ないよ。以前、同じように八重に魔法がかけられた錠を、力づくで外したことがあるから」
「マジか?もしもお前がカズマだったとしても、さすがにそれは……」
「大丈夫だって。まあ、とりあえず見ててよ」
俺は、アルフレッドの手首が痛まぬように細心の注意を払いながら手錠に指をかけ、ゆっくりと力を込めた。
「むん!」
徐々に手に汗がにじんでくる。だがまだフルパワーじゃない。少しずつ段々と力を込めていく。
するとバーン翁の目が、カッと大きく見開いた。
「なんと!ひとつ封印が弾けたぞ!」
よし、やっぱりいけるぞ。
俺は、さらにゆっくりと力を込めていく。
「おお!ふたつ目も外れよった!」
「……マジかよ。本当にこんな力づくで……どうやら本当にこいつは、カズマらしいな」
「何重にかけられているんだ?」
「八じゃな。八重にかけられているようじゃ」
俺は思わず目を見張った。
「八重?本当に八重なのか?」
「ああ、間違いないぞ」
俺は思い返す。あのときも確か、八重ではなかったか?
そうだ。
ゼークル伯爵お抱えの魔導師が錠にかけた封印も、確か八重だったはずだ。
もしかして、この手錠に魔法封印を施した魔導師と、ゼークル伯爵お抱えの魔導師とは、同一人物なんじゃないだろうか?
だがそうなると、オルダナのゼークル伯爵のところにいた魔導師が、なぜアルデバランに駐留するベルガン軍にいるのか?
そこで俺は思い出す。
そういえば、この前レノアが言っていたな。その魔導師は、誰かの紹介状を持ってつい最近になってゼークルに使えるようになったとか。
もしや、その紹介状を書いたのは、ベルガンの者か?
いや、そんなことがあるだろうか。さすがに偶然ではないか。考え過ぎだろう。
「とにかくその錠を外そう。俺がやるよ」
そう言って俺は、アルフレッドの腕を持つ。
よく見るも、やはり俺には魔法は見えない。だからあの時と同じ魔法なのかどうかも、当然わからない。
「ちょっと力を入れるけど、痛くしないように出来ると思うから、心配しないでくれ」
するとバーン翁が驚いた声を上げた。
「ちょっと待て。お前さん、まさか力づくでこの錠にかけられた魔法を解こうっていうんじゃないだろうな?」
「そのつもりだ」
すると今度はアルフレッドが声を上げた。
「いや、無理だ。じいちゃんが言うように、こいつは、かなりの高度な魔法が何重にもかけられている。それを力づくでなんていうのは、愚の骨頂だ」
「問題ないよ。以前、同じように八重に魔法がかけられた錠を、力づくで外したことがあるから」
「マジか?もしもお前がカズマだったとしても、さすがにそれは……」
「大丈夫だって。まあ、とりあえず見ててよ」
俺は、アルフレッドの手首が痛まぬように細心の注意を払いながら手錠に指をかけ、ゆっくりと力を込めた。
「むん!」
徐々に手に汗がにじんでくる。だがまだフルパワーじゃない。少しずつ段々と力を込めていく。
するとバーン翁の目が、カッと大きく見開いた。
「なんと!ひとつ封印が弾けたぞ!」
よし、やっぱりいけるぞ。
俺は、さらにゆっくりと力を込めていく。
「おお!ふたつ目も外れよった!」
「……マジかよ。本当にこんな力づくで……どうやら本当にこいつは、カズマらしいな」
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