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第二章
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「そうでしょうね。同じく登録すれば、Sランクに認定されるでしょう。しかし……」
スー・キンムーが眉根を寄せて、翁の後方を見つめた。
翁はその意味するところを理解し、口角を上げた。
「わしの後ろが気になるか?」
スー・キンムーは素直に認めた。
「ええ、まあ。我が弟たちが、手こずっているようなので」
「そのようじゃな」
「あの少年……何者なので?」
バーン翁は呵々と笑う。
「知らんようだな。あれはカズマ・ナカミチ。ベルガンによるアルデバラン侵攻の際に、アリアス王女を守ってオルダナに脱出させた英雄じゃよ」
スー・キンムーが片眉を跳ね上げた。
「なるほど。噂話程度でしか存じませんが、彼がそうでしたか……ずいぶん若く見えますが?」
「確か、十五と言っておったな」
「十五歳?子供ではないですか」
「年齢など目安に過ぎんよ。あれは、正真正銘の英雄じゃ」
「そうですか。ですが、我が弟たちを相手に勝てると御思いですか?」
スー・キンムーの問いかけに、翁が自信たっぷりに答えた。
「もちろんじゃ。圧勝するだろうよ」
スー・キンムーは鼻で笑った。
「わたしの見立てとは違いますね」
「弟たちが勝つと?」
「当然です。二対一ですよ?弟たちが勝つに決まってますとも」
翁はそれでも自信満々であった。
「あれは特別じゃ。お前さんの弟たちも強かろうが、相手が悪かったのう。もっともそれは、お前さん自身も同様じゃがの」
スー・キンムーは両手を広げて、大仰に天を仰いだ。
「翁よ。このわたしに勝てるおつもりのようですね?ですが、それは不可能です」
「そうか?まあ問答はこれくらいでよいわ。さっさと決着をつけようではないか」
「そうですか。では、参るとしますかね」
スー・キンムーはそう言って腰を落として構えた。
バーン翁もスッと腰を下ろす。そしてゆっくりと左手と左足を前に出して構えた。
両者はおよそ五メートルの距離でにらみ合う。
一秒、二秒と時が刻まれる。
だが両者ともに動かない。
五秒……十秒。
ピクリとも動かず、にらみ合っている。
と、バーン翁の後方で大きな音が響いた。
それを合図に、両者が前に跳び出した。
スー・キンムーが右拳を、今度はバーン翁の顔面目掛けて繰り出そうとする。
だが対する翁は、前には出たものの、拳を繰り出そうとはしなかった。
両手をだらんと下にさげ、殴ってくれと言わんばかりに顔を前に差し出した。
スー・キンムーはその動きを、何かの罠かと一瞬迷った。
だがすぐにその考えを捨て去ると、そのままの勢いで拳を前に突き出した。
スー・キンムーが眉根を寄せて、翁の後方を見つめた。
翁はその意味するところを理解し、口角を上げた。
「わしの後ろが気になるか?」
スー・キンムーは素直に認めた。
「ええ、まあ。我が弟たちが、手こずっているようなので」
「そのようじゃな」
「あの少年……何者なので?」
バーン翁は呵々と笑う。
「知らんようだな。あれはカズマ・ナカミチ。ベルガンによるアルデバラン侵攻の際に、アリアス王女を守ってオルダナに脱出させた英雄じゃよ」
スー・キンムーが片眉を跳ね上げた。
「なるほど。噂話程度でしか存じませんが、彼がそうでしたか……ずいぶん若く見えますが?」
「確か、十五と言っておったな」
「十五歳?子供ではないですか」
「年齢など目安に過ぎんよ。あれは、正真正銘の英雄じゃ」
「そうですか。ですが、我が弟たちを相手に勝てると御思いですか?」
スー・キンムーの問いかけに、翁が自信たっぷりに答えた。
「もちろんじゃ。圧勝するだろうよ」
スー・キンムーは鼻で笑った。
「わたしの見立てとは違いますね」
「弟たちが勝つと?」
「当然です。二対一ですよ?弟たちが勝つに決まってますとも」
翁はそれでも自信満々であった。
「あれは特別じゃ。お前さんの弟たちも強かろうが、相手が悪かったのう。もっともそれは、お前さん自身も同様じゃがの」
スー・キンムーは両手を広げて、大仰に天を仰いだ。
「翁よ。このわたしに勝てるおつもりのようですね?ですが、それは不可能です」
「そうか?まあ問答はこれくらいでよいわ。さっさと決着をつけようではないか」
「そうですか。では、参るとしますかね」
スー・キンムーはそう言って腰を落として構えた。
バーン翁もスッと腰を下ろす。そしてゆっくりと左手と左足を前に出して構えた。
両者はおよそ五メートルの距離でにらみ合う。
一秒、二秒と時が刻まれる。
だが両者ともに動かない。
五秒……十秒。
ピクリとも動かず、にらみ合っている。
と、バーン翁の後方で大きな音が響いた。
それを合図に、両者が前に跳び出した。
スー・キンムーが右拳を、今度はバーン翁の顔面目掛けて繰り出そうとする。
だが対する翁は、前には出たものの、拳を繰り出そうとはしなかった。
両手をだらんと下にさげ、殴ってくれと言わんばかりに顔を前に差し出した。
スー・キンムーはその動きを、何かの罠かと一瞬迷った。
だがすぐにその考えを捨て去ると、そのままの勢いで拳を前に突き出した。
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