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第二章

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 中は広大なロビーとなっていた。

 天井は高く、二階までの吹き抜け構造となっている。

 だがホテルなどと違い、非常にシンプルな内装であった。

「大きな役所って感じがする」

 俺の感想に、バーン翁が同意した。

「そうじゃな。恐らくは元々なんらかの役所だった可能性が高いな。それを帝国が接収し、利用しているってところじゃな」

「つまり、ここが本部か」

「そうじゃろう」

 俺たちは、ロビーを行き交うひとびととぶつからないよう縫うように歩き、正面に位置する案内所へとたどり着いた。

「尋ねたいのじゃが、ここは帝国の本部かな?」

 バーン翁が、若く上品なたたずまいの受付嬢に対し、ストレートに尋ねた。

 受付嬢は少し虚をつかれたように目を二度ほどパチクリさせるも、すぐに作り笑いを浮かべた。

「はい。こちらはベルガン帝国マイヤー駐留軍指令本部です」

「やはりそうじゃったか。もうひとつ尋ねてもよいかのう?」

「はい。なんなりとお尋ねください」

「駐留軍に逮捕された者と面会したいのだが、どうしたらいいかのう?」

 受付嬢は途端に表情が凍り付き、隣に座るもうひとりの受付嬢と顔を見合わせた。

「逮捕……ですか?逮捕された方とのご面会……それは……」

「わからんかのう?」

「そうですね……ちょっと……」

「では、逮捕された者は何処に拘留されておるものかのう?」

「それは……憲兵隊になるかと思いますが」

 確かさっきの奴も言っていたな。

「その憲兵隊は何処にある?」

 俺の問いに受付嬢が立ち上がり、右手で横の階段を指し示しながら答えた。

「憲兵本部は、そちらの階段を上がっていただきましたて、正面に見えます廊下を真っ直ぐに歩いた突き当りにございます」

「ありがとう」

 俺は素早く礼を言うと、すぐさま階段に向かった。

 バーン翁も受付嬢に礼を言い、俺の後を追った。

「憲兵本部か。たぶんいるな」

 俺は歩きながら、横のバーン翁に向けて言った。

 翁は重々しくうなずく。

「おそらくはな。だがまだそうと決まったわけではないぞ」

「そうだな。だがあっちこっち探し回るよりも、いてくれたらありがたいんだけどな」

「お前さん、若いうちからあんまり贅沢を言うものではないぞ」

「若いから言うんだろ」

 俺の言葉に、翁は鼻息荒く返した。

「何を言うか。贅沢とは、一生懸命に働き続けた者がリタイヤした後に言うものじゃ。だから若い者は、まずは働かんといかん。わかったか?」

「へいへい、色々と小うるさいな、あんたは」

「人生の教訓を教えてやっているだけじゃ。ありがたく思えよ。若造」
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