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第二章
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俺は肩をすくめながらも、言った。
「大丈夫。心配いらないよ。それじゃあ」
俺はそう言って踵を返した。
翁も続く。
俺たちの背に向かって、ロトスが言う。
「そうかい、じゃあ気をつけてな」
「ああ、ありがとう」
俺は軽く手を振りながら言った。
そして俺たちは体育館のような建物をあとにした。
「さっきの話だけど、知ってた?」
俺は次の建物に向かう途中で、横を歩くバーン翁に問いかけた。
翁は首を横に振った。
「初耳じゃ。ベルガンのアルデバラン侵攻は、かなりの大軍だったとは聞いておるが、一般の国民を臨時徴用までしてのものだったとは知らなんだな」
「普通に考えたら必要ないってことだよな?」
「ベルガンは軍事大国じゃからな。臨時徴用など、よほどのことがない限り普通はせんじゃろう」
「だがしたわけだ。何故だと思う?」
「さてなあ。ベルガンからしたら、アルデバランの軍事力はさほど脅威ではないはずじゃがなあ」
「実際、あっという間に首都を陥落させたって聞いた。となればアルデバランではなく、他国への備えのためだったとか?」
「ふむ、それは考えられることじゃな。だが……」
翁はそこで首を傾げた。
「それなら臨時徴用した兵を、そちらに回せばいいことじゃ」
「確かにな。ロトスは数か月前に急に徴用されたって言っていた。つまりは侵攻直前だ。だとしたら、まともに軍事訓練なんて受けてないことになる。ならば臨時徴用した兵たちは、実戦に連れて行くより防備に回した方がいいはずだ」
「それにもかかわらずアルデバラン侵攻をする軍に組み込んだとなると、なにか理由があるはずじゃな」
「理由か……」
俺は考えてみるも、なにもめぼしい回答は出てこなかった。
「わからないな。だが、何かの見落としがあるような気がする」
「見落としか。かもしれんな。もっとも現段階ではそれが何かはわからんな。この件が終わったら、手の者に調べさせてみよう」
「そうだな。まずは、アルフレッド救出が先決だ」
俺たちは丁度、別の建物の前にたどり着いていた。
「行くか。今度もかなり大きい建物だな。いや、さっきよりも大きいかな?」
「そうじゃな。建物の形もだいぶ違うようじゃ。といっても先ほどの建物が特殊だっただけじゃがな」
「さっきのは体育館みたいだったからな。こっちは見た感じ普通のたてものだ。もしかしたら、本命じゃないか?」
「ふむ。周りの建物と比べ、ひときわ大きいようじゃ。もしかすると当たりかもしれんな」
「よし、入ってみよう」
俺は、そう言って建物の入り口ドアに手をかけた。
そしてゆっくりと引いて、扉を開けた。
「大丈夫。心配いらないよ。それじゃあ」
俺はそう言って踵を返した。
翁も続く。
俺たちの背に向かって、ロトスが言う。
「そうかい、じゃあ気をつけてな」
「ああ、ありがとう」
俺は軽く手を振りながら言った。
そして俺たちは体育館のような建物をあとにした。
「さっきの話だけど、知ってた?」
俺は次の建物に向かう途中で、横を歩くバーン翁に問いかけた。
翁は首を横に振った。
「初耳じゃ。ベルガンのアルデバラン侵攻は、かなりの大軍だったとは聞いておるが、一般の国民を臨時徴用までしてのものだったとは知らなんだな」
「普通に考えたら必要ないってことだよな?」
「ベルガンは軍事大国じゃからな。臨時徴用など、よほどのことがない限り普通はせんじゃろう」
「だがしたわけだ。何故だと思う?」
「さてなあ。ベルガンからしたら、アルデバランの軍事力はさほど脅威ではないはずじゃがなあ」
「実際、あっという間に首都を陥落させたって聞いた。となればアルデバランではなく、他国への備えのためだったとか?」
「ふむ、それは考えられることじゃな。だが……」
翁はそこで首を傾げた。
「それなら臨時徴用した兵を、そちらに回せばいいことじゃ」
「確かにな。ロトスは数か月前に急に徴用されたって言っていた。つまりは侵攻直前だ。だとしたら、まともに軍事訓練なんて受けてないことになる。ならば臨時徴用した兵たちは、実戦に連れて行くより防備に回した方がいいはずだ」
「それにもかかわらずアルデバラン侵攻をする軍に組み込んだとなると、なにか理由があるはずじゃな」
「理由か……」
俺は考えてみるも、なにもめぼしい回答は出てこなかった。
「わからないな。だが、何かの見落としがあるような気がする」
「見落としか。かもしれんな。もっとも現段階ではそれが何かはわからんな。この件が終わったら、手の者に調べさせてみよう」
「そうだな。まずは、アルフレッド救出が先決だ」
俺たちは丁度、別の建物の前にたどり着いていた。
「行くか。今度もかなり大きい建物だな。いや、さっきよりも大きいかな?」
「そうじゃな。建物の形もだいぶ違うようじゃ。といっても先ほどの建物が特殊だっただけじゃがな」
「さっきのは体育館みたいだったからな。こっちは見た感じ普通のたてものだ。もしかしたら、本命じゃないか?」
「ふむ。周りの建物と比べ、ひときわ大きいようじゃ。もしかすると当たりかもしれんな」
「よし、入ってみよう」
俺は、そう言って建物の入り口ドアに手をかけた。
そしてゆっくりと引いて、扉を開けた。
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